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» 2017年04月20日 05時00分 UPDATE

Microsoft Innovation Award 2017最終選考会:人工筋肉やVR/AR、仮想ロボット、FoodTech……、先端技術から生まれるプロダクトとは (1/5)

2017年3月22日に人工筋肉やVR/ARなどの先端技術を活用するスタートアップ企業の取り組みを表彰するイベント「Microsoft Innovation Award 2017」の最終選考会が開催された。どのような最新技術でどのようなプロダクトが生まれているのか紹介する。

[益田昇,@IT]

 人工筋肉や仮想現実(VR)/拡張現実(AR)、仮想ロボット、FoodTech、スワイプ動画などの先端技術を活用して新たな製品を生み出す取り組みが、日本国内でスタートアップ企業を中心に着実に進みつつある。こうした優れた取り組みを表彰するイベント「Microsoft Innovation Award 2017」の最終選考会が2017年3月22日に開催された。本稿では、同イベントの最終選考会に進出したファイナリストのプロダクトを紹介する。

人工筋肉スーツでモーション・ラーニングを実現する「WIM」:「最優秀賞」「TECH LAB PAAK賞」

 Innovation Awardの最高賞である「最優秀賞」とスポンサー賞の1つである「TECH LAB PAAK賞」を受賞したのは、WIM studioが開発した「WIM」だ。WIMは、人工筋肉ベースのスーツを使って、人間の体の動きに関わる情報を共有するもので、リハビリテーションやモーションラーニング、高齢者介助などへの利用が期待できる。

モーションラーニングを可能とする人工筋肉を使用

 WIMは、特殊合金をベースとしたチューブ状の人工筋肉を使って作られたスーツ「WIM suits」を中心とした技術。スーツ全体に張り巡らされた細い管状の人工筋肉を伸縮することで、着用者に体の動きを伝達する。胸部には前後に4つずつの振動子が配置されており、人工筋肉の収縮と組み合わせることで、さまざまな動きを作り出す。スーツは伝達可能な14の基本動作を有し、これらを組み合わせることによって、上半身のほとんどの動きを再現することが可能だ。収縮する部位はハードウェアでコントロールすることができる。

胸部の前後に4つずつの振動子を配置

 腕や肩などの動作は、「Kinect」を使って、3Dモーションデータとして取得し、クラウドに保存できるようにしている。将来的には、人工筋肉のチューブ中に柔らかい屈曲センサーを挿入することによって、Kinectを介すことなく、一度行った“動き”のデータをクラウドに自動保存できるようにする。

 WIMのメリットは、細くて柔軟性が高いチューブ状の人工筋肉の採用により、衣類のように日常に溶け込むデザインが可能なこと。また動作データをダウンロード、共有できるシステムによって、活用の柔軟性が高いことが挙げられる。これにより、医療機関でのリハビリテーションをはじめ、スポーツやダンスを含むパフォーマンスのトレーニング、高齢者や障害者などのサポートといった幅広い用途で活用を期待できる。

ダンストレーニングにも高い効果を期待できる

VR/ARにより患者の人体構造を3Dで把握可能にする「HoloEyes VR」:「優秀賞」と「Orange Fab賞」「Supernova賞」

 「優秀賞」とともに、「Orange Fab賞」「Supernova賞」という2つのスポンサー賞を受賞したのは、HoloEyesが開発したVR/ARベースの医療向けコミュニケーション・サービス「HoloEyes VR」だ。

 HoloEyes VRは、CDスキャンといった医療データを活用して患者の人体構造をVR/ARで3D化して直感的に体感できるようにするコミュニケーションサービス。HoloEyesは、3D化技術の開発とともに、症例の3Dライブラリの構築を目指している。

HoloEyes VRにより作成された3D VR MAP

 医療の現場では、CTスキャン画像の活用が主流で、医師は2Dモニターに写し出された画像を自分の頭の中で3Dに構成し直して、検証しなければならない。HoloEyes VRを使えば、患者の2DベースのCTスキャンデータから、患者ごとにカスタマイズされた3DのVRデータを作成できる。またその上にVR/ARヘッドセットによる目線の動きやコントローラーによる手の動きなどのさまざまな情報をHoloEyes VRに記録することができる。

墨東病院の実証実験で使用した肝臓のVRデータ

 例えば、手術の経験をデジタル化することができれば、クラウドでこれらの経験を共有、保存、検索、再現することが可能だ。APIを公開してマッシュアップすることもできるだろう。

 AR技術の活用も現実味を帯びている。2017年2月には、台湾の内視鏡研修センター「IRCAD」の招きで、マイクロソフトの「HoloLens」を使ったARのデモを行った。そこでは、豚のお腹の上に人間の肝臓のデータを投影して手術を試すことにより、トレーニング効果を高められることが実証できた。

豚のお腹の上に人間の肝臓のデータを投影して手術トレーニング

 HoloEyes VRでは、VR/ARを使ってデジタル化した経験を全てMicrosoft Azureに蓄積し、ライブラリ化していく。これらのデータは、モバイルからも参照でき、グループウェアを使って共有することもできる。なお患者の同意を得て外部に公開する3Dデータについては、HoloEyes VRのサービスを無料で利用できるようにする。これにより、HoloEyes VRのサービスを医療分野のGitHubにすることを目指す。

 今後は、CTスキャンの2次元画像から患者それぞれの臓器パーツを3D化してライブラリ化することが課題になる。HoloEyes VRは現在、GPUベースのAzure N-Seriesで「3D CNN」(Convolutional Neural Network)のディープラーニングを使って、これを実現する研究を進めている。

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