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» 2017年04月28日 05時00分 UPDATE

Gartner Insights Pickup(18):「The Edge Will Eat The Cloud」、エッジがクラウドを侵食する

エッジがクラウドを侵食しようとしている――これは、これまでのクラウドコンピューティングのトレンドと同じくらい重要かもしれない。

[Tom Bittman, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップ。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 今日、クラウドコンピューティングが企業データセンターを侵食している。ますます多くのワークロードがクラウドで生まれ、一部のデータセンターワークロードは姿を変えてクラウドに移動している。だが、ワークロード、データ、処理、ビジネス価値をクラウドから大きく引き離そうとするトレンドもある。「エッジがクラウドを侵食しようとしている」ということだ。これは、これまでのクラウドコンピューティングのトレンドと同じくらい重要かもしれない。

 重なる部分もある幾つかの動きが同時に進行している。(1)クラウドコンピューティング:規模経済性、迅速なプロビジョニング、伸縮や拡張への対応を目的にクラウドによるITの集中化が進められている、(2)IoT(モノのインターネット):モノが接続されるようになり膨大なデータを送信している、(3)機械学習:モノからのデータを取り込んで利用し処理や予測を改善している、(4)拡張現実(AR)と混合現実(MR)(および仮想現実(VR)):人々が他の人々やモノと物理世界および仮想世界でやりとりできる、(5)デジタルビジネスとデジタル世界:モノと人のつながりがリアルタイムなやりとりや意思決定をますます促進している――。

 クラウドコンピューティングは優れたアジリティを実現するが、それはまだ十分ではない。大規模な集中化、規模の経済性、セルフサービス、全自動化によって、大体のニーズには応えられるが、データの「重さ」、光の速度といった、物理的な制約を乗り越えることはできない。人々がデジタルにアシストされた現実とリアルタイムにやりとりする必要性が高まってくると、「何マイルも(あるいはもっと遠く)離れたデータセンターにおける処理を待つ」というやり方では成り立たなくなる。レイテンシが問題になるからだ。

 例えば「私は今、このWebサイトにいるが、数秒しか滞在しないので広告はその間に適切で魅力的なものを表示してほしい」「車の運転中に、私が見つけたい店をすぐに教えてほしい」「反対側から近づいてくる同僚がいたら知らせてほしい」「私の自動運転車が交通量の多い交差点を通過するとき、他の車を回避できるようにサポートしてほしい」。これらは一瞬で対応されなければならない例だ。

 固定配置された少数のデバイスの近くで、パイプラインの圧力監視などの処理をローカルで行うことと、そうしたモノが飛行していたり常時移動していたり、ある時点である場所に(デジタル上)突然現れるような状況で処理を行うこととは全く異なる。

 ソフトウェアもモノであり、後者の場合においても、ソフトウェアエージェントをエッジのどこかに送信し、イベントの処理や情報の提供、あるいは人やモノとのやりとりをローカルに行わせることが可能だ。ただし、そのためには大量の処理能力とストレージが必要になる。さらに、データ分析ツールやソフトウェアとデータをエッジにプッシュするツールも必要だ。のみならず、エッジ間および中央のクラウドとの統合や連携を行うツールや、エッジそのものにおける機械学習も要求される。

 つまり、エッジには本格的な装備が必要になる。

 クラウドコンピューティング事業者は、標準化、集中化された大規模なデータセンターや制御ソフトウェアの管理についてはお手のものだ。だが、エッジ用の技術はそれらとは全く異なり、はるかに動的で進化が速く競争も激しい。クラウド事業者は今、エッジに食指を伸ばし、この分野が立ち上がる前に自らの管理下に置こうとしている。クラウド事業者としては、エッジを「クラウド」の単なる一部としたい考えだろう。

 そうなるかもしれない。だがそれよりも、企業の都合ではなく消費者とその体験がけん引役となり、エッジが大きな存在となる可能性の方が高い。クラウドとは全く異なるタイプのワークロードを処理するということだ。そしてエッジにおいて、ベンダーや一般企業の明暗ははっきりと分かれるだろう。エッジを軽視するのは禁物だ。そこで成功すれば、競争上の大きな強みになる可能性がある。少なくとも物理世界では、エッジをめぐって陣取り争いが起こるだろう(将来のコンピューティングにおける陣取り争いは、また全く別の話題だ)。

 エッジ戦略を策定する時間はあまり残されていない。VRゴーグルの人気の広がりを注視するべきだ。車載ヘッドアップディスプレーや、スマートフォンの(「ポケモンGO」よりも実用的な)混合現実アプリについても同様だ。「Google Glass II」にも目を向けるべきかもしれない。近いうち、こうした技術がエッジの本格的な活用を後押ししそうだ。

 ここ数年、企業はクラウドコンピューティングに力を入れており、“クラウドへの移行戦略”あるいは少なくとも“クラウドへの拡張戦略”を策定してきた。それは一方通行の真っすぐな幹線道路のように考えられてきた。だが実際には、前方に急な左カーブがあり、そこでは集中化やクラウドだけでなく、低レイテンシやリアルタイム処理に向け、場所や分散処理も考慮しなければならない。顧客体験は、Webサイトにおける体験だけでは定義できなくなる。クラウドも引き続き役割を果たすが、エッジが台頭し大きな存在になるだろう。

出典:The Edge Will Eat The Cloud(Gartner Blog Network)

筆者 Tom Bittman

トム・ビットマン

バイス プレジデント兼 最上級アナリスト


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