5年後のDell Technologiesについて、Dell氏に直接聞いた巨大なITベンダーというだけなのか

デルとEMCグループの統合により、Dell Technologiesという巨大なITインフラベンダーが誕生した。だが、巨大だというだけなのか。今後どんな企業グループになることを目指しているのか。トップであるMichael Dell氏に、直接たずねた。

» 2017年05月26日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

5Gが分散コンピューティングクラウドを生み出す

 EMCとその傘下企業を、デルが買収することによって誕生したDell Technologies。その会長兼CEOであるMichael Dell(マイケル・デル)氏は、2017年5月第2週に米ラスベガスで開催された「Dell EMC World 2017」で、同グループが企業のITインフラを包括的に提供できる稀有な存在になったことをアピールした。また、(一部を除いて)非上場であるからこそ、短期的な売り上げ獲得のために顧客にとってのメリットを犠牲にせず、顧客本位の姿勢を貫けると強調した。

 Dell Technologiesはグループとして、今後何を目指していくのか。筆者はDell EMC World 2017で、これをDell氏に直接たずねた。筆者の質問とDell氏の答えは次の通り。

――現在と5年後を比較した場合、Dell Technologiesファミリー企業がやっていること、およびそのやり方はどのように変わると思うか。また、具体的に、現在勝ち得ていないどのような市場セグメントを、5年後には獲得したいと考えているか。

Dell氏 私はいくつかの点で、非常に目立った変化が起こると考えている。まず、Software Defined Data Center(SDDC)が事実上の標準になっていくだろう。SDDCは、まだ初期の段階にある。VMware NSXなどによるSoftware Defined Networking(SDN)が広がりを見せつつある。サーバの仮想化は十分理解されているが、ストレージの仮想化についてはまだやるべきことが残されている。

Dell Technologies会長兼CEOのMichael Dell氏

 SDDCにより、焦点はアプリケーションレベルに移っていく。そのことで、あらゆる種類の新たな可能性が生まれる。新しいワークロードおよびアプリケーションに対し、(インフラは)新たな形で対応できる。

 今後5年間以内に起こるもう1つの大きな変化は、5G(第5世代移動通信システム)の台頭だ。日本はこの動きの先頭に立っているが、世界的な現象になるとみている。5Gは、携帯電話端末の形状が変わるとか、写真がより多く撮影できるといったレベルの話ではない。データの在り方を一変してしまう。5Gがもたらす低遅延が、新しい形の分散コンピューティングを実現する。分散コンピューティングに基づくクラウドは、現在のクラウドとは大きく異なる。それはさまざまな、全く新しいアプリケーションを可能にする。おそらく私たちは、どんなアプリケーションが登場し得るのかを正確には想像しきれていない。

 人々が現在、IoT(Internet of Things)や将来のユースケースを語っていることからすれば、20年前にインターネットがあらゆるものをターボチャージしたように、5Gは多様な可能性を切り開いていくに違いない。驚異的なことが起こると私は思っている。

 100億にも達するようなデバイスが相互に結び付き合い、それぞれがリアルタイムで、あるいは時系列的なデータを吐き出すようになってくると、こうしたデータにマシンインテリジェンスを適用できる。機械学習、ディープラーニング、AIを活用することで、新たな機会が爆発的に広がる。

 私たちは、既にこうした未来を核として、この会社(Dell Technologies)を構築し始めている。SDDC、統合インフラ、ハイパーコンバージドインフラといったコンピュートエンジンや、接続されていくデバイスのための新たなセキュリティ、大量の非構造化データを蓄えるためのデータレイクなどにより、顧客に力を与えることができる。

 このように、新しいデータへのアクセス手段が生まれることで、どんな産業でも事業の再構築に取り組まざるを得なくなってきている。このような動きの背景には、新たなデータによる可能性が感じられつつあること、また、過去の世界の重荷を引きずらない新規参入者に、多かれ少なかれ恐怖心を抱いていることがある。攻撃により、新規参入者から自らを守ろうとしている。

 (ITは)非常に変化の激しい、とてつもなく面白いビジネスだ。私たちが5年前にやっていたこと、10年前にやっていたことと比べると、大きく変化した。新しいアプリケーションや変化の兆しは、既に私たちにインパクトを与えつつある。

――市場セグメントでいうと、どれを勝ち取りたいのか。

Dell氏 私たちはご存じのように、インフラに特化している。私たちはこの新たな産業革命において不可欠なインフラ企業になりたい。私たちのやること全てはインフラに関連する。クライアント端末、データセンター、セキュリティ、ソフトウェア、Network Function Virtualization(NFV)、コードとしてのネットワークにおけるデリバリ、これらは全て、私たちにとって非常に重要な領域だ。ただしPivotalでは、多少(通常の意味での)インフラよりも上で、この新しいクラウドネイティブな世界におけるアプリケーションを開発するためのインフラを提供している。

 これらが私たちの注力していく分野だ。何でもかんでもやるわけではない。パートナーシップにも力を入れていく。また、(新たに設置した投資ファンドの)Dell Technologies Capital Groupが新規分野に投資し、グループ内の活動を超える部分を開拓していく。(一方、)グループ内には数万人単位の研究者や開発者がいて、新たなソリューションを生み出している。

[取材協力:Dell EMC]

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