「インテリジェンス」はシステム開発とユーザー体験をどのように変えていくのかde:code 2017基調講演(前編)(1/2 ページ)

日本マイクロソフトは2017年5月23、24日に「de:code 2017」を開催。基調講演では、AI(人工知能)が今後のシステム開発やユーザー体験にどのような変化を起こしていくのか、多数のデモを交えて紹介された。

» 2017年06月01日 05時00分 公開
[柴田克己@IT]

 日本マイクロソフトは2017年5月23、24日、東京都港区のザ・プリンスパークタワー東京において、デベロッパーイベント「de:code 2017」を開催した。Microsoftが5月中旬に米国で開催したばかりの「Build 2017」で発表したトピックを含む、最新テクノロジーと今後の方向性が日本のデベロッパーに紹介された。

 「The New Age of Intelligence」と題された基調講演では、Microsoftから来日した3人のスピーカーが中心となり、「インテリジェンス」をキーワードとしたこれからのシステム開発のトレンドや、それを実現していくためのMicrosoftの技術、サービスを披露した。

デベロッパーにとってチャンスの多い時代が到来

日本マイクロソフト デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズムリード ゼネラルマネージャー 伊藤かつら氏

 冒頭に登壇したのは、日本マイクロソフト、デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズムリード、ゼネラルマネージャーの伊藤かつら氏だ。

 爆発的なデータ量の増加や、クラウド上のコンピューティングパワーの増大が進む中、「遍在するデジタルテクノロジーをどう活用するか」が、あらゆる業種や業界のビジネスにとって差別化要因となることが世界中で理解され始めている。

 「このような時代には、エンジニアにとって多くのチャンスがある。多くのチャンスを生かすことができると同時に、エンジニアにはレスポンシビリティ(責任)も生まれる。その責任を果たすに当たり、どのような技術を選ぶかが重要になっている」(伊藤氏)

 Microsoftでは、テクノロジーの開発に当たって「人々に力を与える(Empower People)」「全ての人々のためにデザインされている(Inclusive Design)」「信頼できるテクノロジーである(Build trust in technology)」ことの3つを「原則」としているという。

 「この3つの原則は、『地球上の全ての人と組織に、より多くのことを達成する力を与える』というMicrosoftのミッションそのものでもある。私たちのテクノロジーの上で、デベロッパーがより多くのことを成し遂げ、社会にインパクトを与えていくことが、このミッションの達成には不可欠だと考えている」(伊藤氏)

クラウドとデバイスに「インテリジェンス」が加わることで何が起こるのか

Microsoft コーポレートバイスプレジデント兼チーフエバンジェリスト Steven Guggenheimer氏

 今回のde:codeにおけるキーワードの1つは「インテリジェンス」だ。続いて登壇した、Microsoft コーポレートバイスプレジデント兼チーフエバンジェリストのSteven Guggenheimer氏は、ソフトウェア開発における「モバイルファースト」「クラウドファースト」を継ぐパラダイムとして「インテリジェントクラウド」「インテリジェントエッジ」を挙げる。その技術要素と、それによってユーザーエクスペリエンスがどのように変革されるのかについて、多数のデモを交えながら紹介した。

 冒頭、Guggenheimer氏は、2016年のde:codeからの1年間に起こった大きな変化として、一般的なクライアント開発から、「モバイルファースト」「クラウドファースト」な開発への移行が急速に進んだことをあらためて指摘した。現在、クライアント、タブレット、スマートフォンなどを含むWindows 10デバイスの月間稼働数は5億台を数え、クラウドベースのOfficeアプリケーションサービスである「Office 365」の月間アクティブユーザー数は1億に上る。Azure Active Directoryの利用組織は1200万となり、Fortune 500企業のうち、Microsoftのクラウドサービスを何らかの形で利用している企業は9割以上に上るという。

 Microsoftが「次の段階で起こる変化のカギとなる」と考えているのが「インテリジェンス」つまり「AI(人工知能)」である。IoTデバイスを含むあらゆるタイプのエッジデバイス、そして「エッジからデータを受け取り、処理し、解析結果をエッジへと返す」クラウド上のサービスの双方に「インテリジェンス」が加わることによって、ユーザーエクスペリエンスに変革が生まれるという。

女子高校生AIチャットbot「りんな」に加え、男子高校生風の「りんお」も

 クラウドサービスとエッジの双方に「インテリジェンス」を付加するのは、Microsoftが提供しているコグニティブサービス群である。その分かりやすい例として、Guggenheimer氏は、日本マイクロソフトが運営しているAIチャットbot「りんな」を2016年に引き続き紹介した。

 2015年から、LINEおよびTwitter上でアカウントを開設している「りんな」は、これまでに約570万人のユーザーとチャットを行ってきた。「りんな」には女子高校生としてのキャラクター付けがなされているが、2017年4月には期間限定で男子高校生風の受け答えを行う「りんお」を公開するなど、さまざまな試みが続けられている。

 「りんな、りんおは、会話を通じてユーザーがチャットbotと感情的につながることを目的とした試み。会話型人工知能をビジネスに活用するに当たっては、企業のブランドや目的に合わせたキャラクター付け、そのための適切なデータ選択が必要になる」(デモを行った、マイクロソフトデベロップメント プログラムマネージャー 坪井一菜氏)

コグニティブサービスの拡充に加え、ユーザーごとのカスタマイズ機能も

 現在Microsoftでは「画像認識」「言語認識」「音声認識」「検索」「知識」といったカテゴリーに対応したコグニティブサービスを提供しており、そのポートフォリオの拡充を続けているという。それぞれのカテゴリーにおいて、ユーザーごとのカスタマイズ機能を提供することで、実際のビジネスへの導入をサポートする。

VRオンラインゲームにコグニティブサービス

 導入事例としてビデオで紹介されたのは、Human Interactが開発するVRオンラインゲーム「Starship Commander」だ。このゲームの中では、ゲーム内キャラクターとの会話や操作のためのインタフェースとして、音声認識、音声合成、自然言語処理といったコグニティブサービスが利用されている。人と会話するようにキャラクターとの会話を行ったり、ボイスコマンドによって宇宙船を操縦したりといったことが、コグニティブサービスとbotフレームワークの組み合わせによって実現されているという。

コグニティブサービスとAzureを組み合わせることで、できること

 次に紹介されたのは、コグニティブサービス群に新たに追加されたカスタマイズ機能の一例、「Custom Vision」だ。Custom Visionでは、ユーザーが学習用にタグ付けした画像をポータルからアップロードすることで、自動的にDeep Learningを行える。学習に基づいて生成されたモデルに対し、新たな学習材料を加えることによる強化学習にも対応している。

 「学習用の画像は、それほど大量である必要はないが、もし膨大な量のデータを持っているのであれば、それをAzure Data Lakeに置き、U-SQLを使ってDeep Learningを行うことも可能だ」(デモを行った、Microsoft テクニカルエバンジェリストのDrew Robbins氏)

 こうしてカスタマイズしたAIは、botフレームワークを通じて、独自のアプリケーションに組み込むことができる。一般的なチャットツールや「Adaptive Cards」と呼ばれる各プラットフォームに対応したインタフェースがフロントエンドに利用できるという。

 「Azureとコグニティブサービス群により、MicrosoftはデベロッパーがAIを活用するために必要な全ての要素を提供できる」(Guggenheimer氏)

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