「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

自動運転車の経済効果は2050年までに約780兆円 Intelが試算「MaaS」は“Passenger Economy”全体の43%を生み出す

Intelが「自動運転の普及が将来の経済にどんな影響を与えるか」を調査した報告書を発表。自動運転車の経済効果は2050年までに780兆円規模に上るとされ、中でもモバイルサービスは全体の43%を占めると試算された。

» 2017年06月05日 11時00分 公開
[@IT]
photo 調査報告書「Accelerating the Future: The Economic Impact of the Emerging Passenger Economy」(加速する未来:台頭する“Passenger Economy”の経済的影響)

 Intelは2017年6月1日(米国時間)、「自動運転の普及が、将来の経済にどう影響を与えるか」を調査した報告書を発表した。自動運転車の利用拡大とともに、運転者の手空き時間を埋める「Passenger Economy」と呼ばれる新たな市場が台頭し、その経済効果は、2035年に8000億ドル(約88兆円)、2050年には7兆ドル(約780兆円)に拡大するとの見通しを示した。

 「Passenger Economy」はIntelの造語。この調査はIntelが依頼し、調査会社のStrategy Analyticsが取りまとめた。Intelのブライアン・クルザニッチCEOは、「企業は、自動運転化に関わる戦略を、今から検討し始めるべきだ」と述べ、調査に乗り出した狙いを次のように説明した。

 「今(2017年)からほんの10年前、シェアリングエコノミーの可能性は誰も話題にしていなかった。これらの登場を予期していなかったからだ。そこで私たちは、“Passenger Economy”についていち早く議論を始めた。車が“最も強力なモバイルデータ生成デバイス”になり、人々が運転するのではなく、乗るだけになったときに生まれる一連のチャンスに、人々に目覚めてもらうためだ」(クルザニッチ氏)

 Intelは、自動運転技術とスマートシティー技術に支えられ、新しい“Passenger Economy”が徐々に産業全体に構造的な変化をもたらすとともに、新しい産業を生み出すとの見通しを示している。

 報告書では、消費者と企業の両方の観点から旅客経済がもたらす経済効果を捉え、意思決定者が実践的な革新戦略を策定するヒントになるように、旅客経済における自動運転技術やスマートシティー技術の新たなユースケースも提示している。報告書の共著者を務めたStrategy Analyticsのハービー・コーエン氏は、次のように述べた。

 「自動化技術は、幅広い産業で変化を促進して新たな潮流を作り、企業間取引の分野から、その成果が実を結び始めるだろう。自動運転車は、まず先進国市場で台頭し、荷物の配送や長距離輸送といった分野を再発明すると予測している。これによって世界中のドライバー不足の問題が緩和される。それでもたらされる売上高効果は、“Passenger Economy”市場における当初の予想売上高の3分の2を占める見通しだ」(Strategy Analyticsのコーエン氏)

 また報告書では、自動運転車は2040年までには本格商用化され、予想される経済効果の多くを生み出すようになるとともに、手軽なパーソナライズサービスにも道を開くと予測している。報告書のポイントは以下の通り。

  • ビジネス向けのMaaS(Mobility as a Service:サービスとしてのモビリティ)市場は3兆ドル(約331兆円)規模となる。それは“Passenger Economy”全体の43%を占める
  • コンシューマー向けのMaaS市場は3.7兆ドル(約407兆円)規模になる。同じく“Passenger Economy”全体の55%を占める
  • 自動運転車に関連するサービスが拡大することで、コンシューマーによる新しい革新的なアプリケーションやサービスの市場も増加する。これらの売上高は2000億ドル(約22兆円)に達する。
  • 2035〜2045年の“Passenger Economy”本格化時代においては、少なくとも自動運転車によって58万5000人の命が救われる
  • 自動運転車は世界的に交通混雑が激しい諸都市において、コンシューマーの通勤時間を年間合計で2億5000万時間以上減少させる
  • 2035〜2045年の“Passenger Economy”本格化時代において、交通事故対策などの公共安全対策コストは、2340億ドル(約25.8兆円)以上削減できる

 この他、報告書で示された“Passenger Economy”の予測シナリオは以下の通り。

項目 内容
新しい車内エクスペリエンス 車内美容院、リモートコラボレーション用のタッチスクリーンテーブル、カジュアルなファストダイニング、リモート自動販売、モバイルヘルスケアクリニック、施療などのサービスが移動中の車内で提供される
移動時向け動画ビジネス メディアやコンテンツの製作者が、短時間や長時間の移動に合わせたカスタムコンテンツを生成できるようになる
位置ベースの新たな広告手段 位置を軸に、特定の人を明確に対象にした広告の提供手段や手法が大幅に増加する
特典としてのモビリティ オフィスビル、マンション、大学キャンパス、団地などの単位で、競合との差別化を図る付加価値としてMaaSを提供するようになる。例えば、企業が従業員向けの報酬の一部や福利厚生などとして提供するシーンが考えられる

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