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» 2017年06月09日 05時00分 UPDATE

Tech Basics/Keyword:Amazon Web Services(AWS)

パブリッククラウドサービスでNo.1のシェアの「Amazon Web Services(AWS)」とはどういったサービスなのだろうか。AWSを理解するための第一歩として、概要をコンパクトにまとめてみる。

[小林章彦,デジタルアドバンテージ]
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連載目次

AWSとは

 「Amazon Web Services(以下、AWS)」は、Amazon.comの子会社であるAmazon Web Services(日本法人はアマゾン ウェブ サービス ジャパン)が提供するが提供するパブリッククラウドサービスである。クラウドサービスは、物理的なサーバを持つ代わりに、事業者が用意したクラウド上のリソース(例えば仮想的なサーバ)を利用することで、管理の手間を省き、必要に応じてシステムのスケーリングを容易にするものだ。このうち「パブリック」クラウドは、企業や各種団体、個人など幅広いユーザーに提供されていること、また契約ユーザー全体で事業者提供のリソースを共有する*1という特徴がある。

*1 AWSやその他のパブリッククラウド事業者は、ユーザーがハードウェアを占有できる専用サーバも提供している。ただしサービス全体から見ると、それは一部の例外である。


 パブリッククラウドサービスには、AWSの他、Microsoftの「Microsoft Azure」やGoogleの「Google Cloud Platform」、IBMの「Bluemix」などもある。

 米国の調査会社「Synergy Research Group」の調査によれば、AWSのIaaS/PaaS*2の市場シェアは40%超と2位以下を大きく引き離している。ちなみに、Microsoft、Google、IBMの第2グループは3社合計で23%である(Synergy Research Groupのの2017年2月のニュースリリース「Microsoft, Google and IBM Public Cloud Surge is at Expense of Smaller Providers」[英語])。日本国内でも、MM総研の調査(2015年度の実績)によれば、AWSは34.1%、Microsoft Azureが20.2%とやはりAWSがトップシェアとなっている(MM総研のニュースリリース「国内クラウド市場は1兆円を突破」)。

*2 IaaS(Infrastructure as a Service)は、仮想化技術を利用してサーバ(CPU/メモリ/ストレージ)などのITインフラをオンデマンドで提供するもの。PaaS(Platform as a Service)は、さらにソフトウェアを稼働させるためのプラットフォーム(OSやミドルウェア、ランタイムなど)を提供するものである。


クラウドサービスを使用するメリット

 AWSに限らないが、パブリッククラウドサービスにはさまざまなメリットがある。まず、クラウドサービスを利用することで、データセンターやサーバの社内への設置が不要になり、大きな初期投資をすることなく、ITリソースの利用が可能になる。

 次に、自社でサーバなどを設置する場合、ピーク性能に応じてITリソースを準備する必要があるが、パブリッククラウドサービスでは必要に応じてITリソースを効率よく迅速に割り当てられるため、投資効率が高く、一般的には必要なコストが大幅に削減できるとされている。

 新しいサービスを開発するような場合でも、クラウドサービスを使えば、管理画面で数回クリックするだけで、ITリソースの利用が可能になるため、検証と開発にかかるコストと時間を削減できる。

 また後述の通り、世界中にデータセンターが設置されており、障害や災害発生時に別拠点のサーバを立ち上げてサービスを継続することや、世界中に散らばっているユーザーに最適なサービスを提供するといったことも、少ない手間とコストで実現できる。

AWSで提供されるサービス

 AWSのサービスとして、30種類以上のインスタンスタイプを提供する仮想サーバサービス「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」とクラウドストレージサービス「Amazon Simple Storage Service(S3)」の2つが有名だ。他にも人工知能の「Amazon Lex」やIoT向けの「AWS IoT プラットフォーム」、ゲーム開発向けの「Amazon GameLift」など、下表のように100種類以上のサービスが提供されている。  AWSの各種サービスは、HTTPを通じ、RESTおよびSOAPプロトコルを使用してアクセスできる。

サービスカテゴリー サービス名
コンピューティング Amazon EC2/Amazon EC2 Container Registry/Amazon EC2 Container Service/Amazon Lightsail/Amazon VPC/AWS Batch/AWS Elastic Beanstalk/AWS Lambda/Auto Scaling/Elastic Load Balancing
ストレージ Amazon Simple Storage Service (S3)/Amazon Elastic Block Storage (EBS)/Amazon Elastic File System (EFS)/Amazon Glacier/AWS Storage Gateway/AWS Snowball/AWS Snowball Edge/AWS Snowmobile
データベース Amazon Aurora/Amazon RDS/Amazon DynamoDB/Amazon DynamoDB Accelerator (DAX)/Amazon ElastiCache/Amazon Redshift/AWS Database Migration Service
移行 AWS Application Discovery Service/AWS Database Migration Service/AWS Server Migration Service/AWS Snowball/AWS Snowball Edge/AWS Snowmobile
ネットワークとコンテンツ配信 Amazon VPC/Amazon CloudFront/Amazon Route 53/AWS Direct Connect/Elastic Load Balancing
開発者用ツール AWS CodeStar/AWS CodeCommit/AWS CodeBuild/AWS CodeDeploy/AWS CodePipeline/AWS X-Ray/AWSコマンドラインインタフェース
管理ツール Amazon CloudWatch/Amazon EC2 Systems Manager/AWS CloudFormation/AWS CloudTrail/AWS Config/AWS OpsWorks/AWS Service Catalog/AWS Trusted Advisor/AWS Personal Health Dashboard/AWSコマンドラインインタフェース/AWSマネジメントコンソール/AWSマネージドサービス
人工知能 Amazon Lex/Amazon Polly/Amazon Rekognition/Amazon Machine Learning
分析 Amazon Athena/Amazon EMR/Amazon CloudSearch/Amazon Elasticsearch Service/Amazon Kinesis/Amazon Redshift/Amazon QuickSight/AWS Data Pipeline/AWS Glue
セキュリティ/アイデンティティー/コンプライアンス AWS Identity and Access Management (IAM)/Amazon Inspector/AWS Certificate Manager/AWS CloudHSM/AWS Directory Service/Amazon Cloud Directory/AWS Key Management Service/AWS Organizations/AWS Shield/AWS WAF/AWS Artifact
モバイルサービス AWS Mobile Hub/Amazon API Gateway/Amazon Cognito/Amazon Pinpoint/AWS Device Farm/AWS Mobile SDK
アプリケーションサービス AWS Step Functions/Amazon API Gateway/Amazon Elastic Transcoder/Amazon AppStream
メッセージング Amazon Simple Queue Service (SQS)/Amazon Simple Notification Service (SNS)/Amazon Pinpoint/Amazon Simple Email Service (SES)
ビジネスの生産性 Amazon Chime/Amazon WorkDocs/Amazon WorkMail
デスクトップとアプリケーションのストリーミング Amazon WorkSpaces/Amazon AppStream 2.0
ソフトウェア AWS Marketplace
IoT AWS IoTプラットフォーム/AWS Greengrass/AWS IoTボタン
コンタクトセンター Amazon Connect
ゲーム開発 Amazon GameLift/Amazon Lumberyard
AWSが提供するサービス一覧
ただし、全てのリージョン(後述)がこれらのサービスを全てサポートしているわけではない。各リージョンで提供されているサービスは、「製品およびサービス一覧(リージョン別)」で確認してほしい。

世界16カ所で展開されるデータセンター

 AWSのデータセンターは、現在、世界中の16カ所の地理的リージョン内に、42のアベイラビリティーゾーンで運用されている。リージョンとは地理的に離れた領域のことで、1つのリージョンに複数の独立したロケーションがある。このロケーションを「アベイラビリティーゾーン」と呼ぶ。

 日本には、「アジアパシフィック(東京)」リージョンがあり、3つのEC2アベイラビリティーゾーンが提供されている(新規ユーザーは、2つのEC2アベイラビリティーゾーンが利用可能)。また、2018年中に新たなリージョンが大阪に開設されるとのことだ(Amazon Web Servicesブログ「2018年に大阪ローカルリージョンを開設予定」)。

リージョン 名前
米国東部(バージニア北部) us-east-1
米国東部(オハイオ)リージョン us-east-2
米国西部(北カリフォルニア) us-west-1
米国西部(オレゴン) us-west-2
アジアパシフィック(ムンバイ) ap-south-1
アジアパシフィック(ソウル) ap-northeast-2
アジアパシフィック(シンガポール) ap-southeast-1
アジアパシフィック(シドニー) ap-southeast-2
アジアパシフィック(東京) ap-northeast-1
カナダ(中部) ca-central-1
中国(北京) cn-north-1
欧州(フランクフルト) eu-central-1
欧州(アイルランド) eu-west-1
欧州(ロンドン) eu-west-2
南米(サンパウロ) sa-east-1
AWSGovCloud(米国) us-gov-west-1
AWSのリージョン

世界各地に設置されているAWSのリージョン 世界各地に設置されているAWSのリージョン
AWSのデータセンターは、世界中の16カ所のリージョンに42のアベイラビリティーゾーンで運用されている。図は、「AWSのWebページ」より。オレンジ色の丸はリージョンのある位置、丸の中の数字はアベイラビリティーゾーンの数。緑色の丸は、近日追加予定のリージョン。

Amazon EC2で利用できるOS

 仮想マシンサービス「Amazon EC2」のインスタンスでは、Amazon Linux(Red Hat Enterprise Linux互換のAmazon Web Servicesが開発したLinux)/Windows Server 2012/CentOS 6.5/Debian 7.4などが利用可能である。これらは「Amazonマシンイメージ(AMI)」と呼ばれる形式のOSイメージでAmazonから提供されている。これら以外にもコミュニティーが提供するAMIもあり、非常に多くのOSイメージから選択可能となっている。

AWSの課金は原則として時間単位

 AWSは、多くのパブリッククラウドと同様、使った分だけのユーティリティー課金方式を採用する。

 例えばAmazon EC2の場合、「オンデマンドインスタンス」というプランの料金は基本的に1時間単位となっており、使ったコンピューティング性能に対して従量で支払うようになっている。また「スポットインスタンス」という余剰のリソースを活用した最大90%の割引プランも、その単価は変動するものの、課金は1時間単位の従量制だ。

 一方、「リザーブドインスタンス」というプランでは、年単位の長期予約で最大75%の割引が得られる。Amazon EC2の料金の詳細については、「料金」ページを参照してほしい。

AWSの強みは規模?

 前述の通り、AWSは2017年2月現在、2位以下を大きく引き離した圧倒的な市場シェアを誇っている。日本国内でも、シャープや帝人、ゲオホールディングスなど多くの企業がAWSを利用している(「国内のエンタープライズ企業におけるAWS導入事例」参照のこと)。その用途も、基幹・業務システムからオープンなWebサービス、各種分析、災害対策、IoTなどなど幅広い。

 AWSでは、高いシェアから得た利益を設備投資などに使い、イノベーションを重ね続けることで、さらにユーザー企業を獲得し、その利益を料金の値下げでユーザーに還元していく、というサイクルを繰り返している。実際、すでに2006年にAWSを開始して以来、50回以上の値下げを実施しているという。

 また、AWSのクラウドサービスとパートナー企業が連携可能なAPIが提供されており、さまざまなサードパーティーがAWSのエコシステムに参加している(「日本のAPNパートナー一覧と制度について」参照のこと)。こうしたエコシステムがさらにユーザーを呼び込み、新たなサードパーティーによるサービスが提供される、といった具合に広がりを見せている。


 AWSを理解するには、実際に使ってみることだ。AWSには、サインアップした日から12カ月間利用できる無料利用枠が付いたサービスが提供されている。無料で利用できるサービス内容は、「AWSクラウド無料利用枠」を参照してほしい。Linuxの仮想サーバを構築したり、IoTサービスを試したりすることも可能だ。

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