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» 2017年07月26日 05時00分 UPDATE

「働き方改革」には矛盾がある:GoogleはG Suiteへの機械学習の適用で、どう働き方を変えようとしているのか、総責任者に聞いた (1/2)

GoogleはG Suiteについて、従来から「人々の働き方を変えるもの」だとしてきた。だが、この製品群自体が今、機械学習の適用によって大きく変わろうとしている。Google Cloud G Suite部門バイスプレジデントのプラバッカー・ラガバン氏に、ユーザーは今後、G Suiteにどんなメリットを期待できるのかを聞いた。

[三木泉,@IT]

 GoogleはG Suiteについて、従来から「人々の働き方を変えるもの」だとしてきた。だが、この製品群自体が今、機械学習の適用によって大きく変わろうとしている。Google Cloud G Suite部門バイスプレジデントのプラバッカー・ラガバン(Prabhakar Raghavan)氏に、ユーザーは今後、G Suiteにどんなメリットを期待できるのかを聞いた。

「G SuiteはMicrosoft Officeの代わりではない」

――G Suiteはこれまで、従来型の「プロダクティビティスイート(オフィス製品群)」をどう超えようとしてきたと説明しますか?

Google Cloud G Suite部門バイスプレジデントのプラバッカー・ラガバン氏

 プロダクティビティスイートの機能にとどまらず、新しい働き方を提案してきました。言い換えれば、これまでのプロダクティビティスイートと同様な使い方をしている組織は、G Suiteの機能を十分に活用していないといえます。

 例えば「Googleドキュメント」における共同編集の機能は、従来とは異なる仕事のやり方を提案しています。しかし、この機能の存在を知らない顧客が多数います。私たちはこれまで個々の機能をアピールしてきましたが、次第に分かってきたのは、異なる仕事のやり方自体のメリットを認識してもらう必要があるということです。この認識がない限り、斬新な機能であっても使っていただけないでしょう。もっとGoogleの責任として、顧客における組織としての業務変革の支援を進めていこうと考えています。製品の機能は、従来の物差しとは違う形で提示する必要があります。

今後重要なのは、チームとしての生産性向上

――では、その延長線上で、G Suiteをどう進化させようとしているのですか?

 今後に向けた焦点は、個人の生産性もさることながら、チームとしての生産性です。「全体は個々の合計に勝る」からです。すなわち、チームが仕事のライフサイクルをどう回していくのかに焦点を当てる必要があります。

 例えば会議のライフサイクルです。会議をスケジュールして、実際にビデオ会議などを行った後、チームでのチャットなどでフォローアップをするかもしれません。Googleドキュメントで、アクションアイテムの確認をするかもしれません。さらにこれに基づいて別の会議を開くかもしれません。つまり、会議は30分や1時間行われる、1回限りのものではありません。今お話ししたようなプロセスの一部です。

――会議はプロジェクトの一部だという言い方もできますよね。

 それを今、話そうとしていました。会議が短期的なライフサイクルならば、プロジェクトはより長期的なライフサイクルを表現しています。

 プロジェクトがいったん始まると、多数の並行的な仕事の流れが生まれます。さまざまなメンバーがそれぞれ別のことをやり、時々お互いのやっていることの間で同期を取ろうとします。さらにサブプロジェクトを作ってそれぞれの目的を達成して戻るなどして、最終的にこのプロジェクトが終わります。

 そこで私たちが今やっていることは、チームがこの間にどう振る舞うのかを丁寧にトレースすることです。現時点では会議のライフサイクルに焦点を当てていますが、より長期的には、プロジェクト全体を対象としていきます。

 私たちは「チーム・ジャーニー」(チームの行動プロセスを旅に例えた言葉)と呼んでいますが、これを理解した機能は、今後不可欠になってくると思います。このジャーニーの各ステップで、メンバーの全員が、適切なツールを使えることが重要です。AIは、まさにこのために使う必要があります。

 非常に古い例として、Gmailでは、ある人を宛先に加えると、他に追加すべき宛先をGmailが自動的に提案する機能があります。最近でも、チームの各メンバーがお決まりの単純な作業から解放されるような機能を強化しています。

――チーム機能を利用してもらいやすいように、共同作業を表現したアイコンを示すなどが必要なのではないでしょうか?

 そのために、チームをアイデンティティとして表現することを進めています。

 現在、各ユーザーは自分の単一のアイデンティティを持ち、電子メール、ドキュメント、ドライブなどさまざまな機能にわたって使えます。これをチームにも当てはめます。メンバーは流動的に変わって構いません。チームがさまざまな機能を臨機応変に利用する主体になれることが、製品の進化に向けて不可欠な要素です。

 チーム内には、リーダーやオーガナイザーなど、異なる役割の人たちがいます。この役割を、各機能の利用にどう反映させていくか、私たちは十分に理解しようとしています。これを私たちは「チームコンストラクト」と呼んでいます。

 Amazonのジェフ・ベゾス氏は「2 Pizza Teams」(2枚のビザを分け合える規模のチームでプロジェクトを進めるのが適切という考え方)について語っていますが、2 Pizza Teamsでも200 Pizza Teamsでも機動的にビジネスを進められる必要があると考えています。

――ではどのように、チームの大小にかかわらず生産性を発揮できることを示すのですか?

 Google Hangout Chatは、約2000人の規模にスケールできます。他のサービスについても、スケールすることは非常に重要です。私がチーム機能の開発において部下に言っているのは、「全ての機能が無限にスケールすることを目指せ」ということです。

 あなたの質問への答えとしては、機能を実際に提供開始して初めて、世界は私たちを信じるようになると考えます。

G Suiteとセキュリティ

――日本の企業の間ではセキュリティについての関心が高まっています。そこでGoogleが、「G Suiteを使いさえすれば、クライアントセキュリティを強化できますよ」と言えるようになれば、非常に大きな価値だと思います。

 ご存じの通り、インテリジェントな人々であっても、クラウドがオンプレミスよりも安全になり得るということが、まだ想像しきれていません。私たちはこれを訴え続けてきましたが、メッセージは少しずつ伝わっている状況だと思います。

――分かりますが、一方で多くの企業にとってエンドポイントセキュリティは複雑化しすぎており、シンプルに使えるソリューションが求められていると思います。

 確かに、例えばボタン1つでセキュリティを確保できるようにできれば素晴らしいとは思います。

 しかし、例えば二要素認証について、当社の最大の顧客の1社は、これが役に立つと認識しているものの、採用には至っていません。従業員に対してトレーニングをしなければならないからです。多少の手間を掛けてもらえれば、もっとセキュリティを高められます。

機械学習をG Suiteにどう取り込むか

――機械学習のG Suiteへの活用について、既に触れられた部分はありますが、別の例で紹介してもらえませんか?

 あなたの仕事は聞くことで、私の仕事は将来の未発表製品についてあまり具体的に語らずに、できるだけ多くのことを話すことだと思いますので、私たちがどのように考えているか、いくつかの例を紹介します。

 まずカレンダーから始めましょう。現在のカレンダーアプリは、200年前のカレンダーと基本的に何も変わっていません。コンピュータの画面に表示されるようになっただけです。本来は、「特定の社員と週1回ミーティングを持ちたい」「週3回フィットネスクラブで汗を流したい」「マーケティング部門の週1回のミーティングを聞きたい」という希望をカレンダーに伝えるだけで、スケジュールを調整してくれるべきです。現在はこうした調整作業に、自分自身や人間のアシスタントが、何時間も費やしています。しかしユーザーは、やりたいことを言うだけで済むようになるべきです。人間の介入を全く必要とせずに、部屋や空き時間の調整ができるべきなのです。

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