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» 2017年09月06日 05時00分 公開

開発と運用の新たな接点を模索:VMware、マルチクラウド戦略とVMware Cloud Servicesの説得力 (1/2)

VMwareは、2017年8月に開催したVMworld 2017で、同社が2016年に打ち出した戦略の第1弾を、「VMware Cloud Services」という形で具体化してみせた。VMware Cloud Servicesの大部分は、主要パブリッククラウドに直接対応した運用管理支援サービス。これらが説得力を持つ理由は、開発者と運用担当者の関係の変化を反映している点にある。

[三木泉,@IT]

 「VMwareは仮想化ソフトウェアの企業でしかなく、オンプレミスの仮想化には未来がない」――。VMwareは、過去数年、こうした間接、直接の攻撃や懸念の対象となってきた。だが、2017年8月末に開催されたVMworld 2017の来場者の多くは、同社の新戦略に納得して帰っていったのではないだろうか。

 VMwareは2016年春、マルチクラウド戦略を打ち出した。これは、さまざまなパブリッククラウドに対し、一貫した管理手段を提供することを目的としていた。ポイントは2つある。「VMwareの仮想化技術が採用されていないクラウドにも、プライベートクラウドと似た管理、ガバナンスを適用できるようにすること」「複数のクラウドを、共通の手法で管理できるようにすること」だ。

パブリッククラウドの利用は、さまざまな企業の戦略に組み込まれつつある。だが、「特定のクラウドを使いさえすれば自社の問題が解決する」とは考えていないところが多いという。VMwareのマルチクラウド戦略も、出発点はここにある

 当時来日したVMwareのパット・ゲルシンガーCEOに、「パブリッククラウドではAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureが急成長し、多くの企業が利用するようになってきている。(マルチクラウド戦略について語る前提として、)この事実を受け入れ、その上で自社の価値を発揮するということなのか」と聞くと、そうだと答えた。

 具体的な取り組みとして、VMwareは2016年8月、複数のパブリック/プライベートクラウドにまたがる統一的な運用管理ツールのクラウドサービスを、「Cross-Cloud Services」という名称で開発中であることを明らかにした。

参照記事:
ヴイエムウェアのマルチクラウド戦略は、DevOps時代の情シスの役割を支えられるか
米ヴイエムウェアの「Cross-Cloud Services」は、企業のクラウド利用をさらに促進するか

 2017年8月のVMworld 2017で、VMwareはこれを「VMware Cloud Services」という総称で提供開始すると発表。イベント第2日の基調講演では、同サービスを他の同社製品とともに駆使したデモを行った(なお、「VMware Cloud Services」というサービス名は、マルチクラウド管理サービスに、Workspace ONEなどの他のサービスを組み合わせたところからきており、名称は分かりにくくなった感が否めない)。

 デモについて語る前に、VMware Cloud Servicesにおける初期のサービスとして発表されたものを手短に紹介すると、次のようになる。

VMware NSX Cloud:ネットワーク仮想化の「VMware NSX」をパブリッククラウドに適用。VMware vSphereベースでないクラウドでもマイクロセグメンテーションができる。

Wavefront by VMware:アプリケーションパフォーマンス管理サービス。プロセス単位での可視化、分析により、パフォーマンスや可用性に関する問題の原因を突き止められる。

VMware Discovery:クラウド上のIT資産管理が行えるツール。

VMware Network Insight:ネットワーク通信の可視化・分析ツール。セキュリティ上の問題発見や、NSXによるマイクロセグメンテーションのポリシー作成を支援する。アプリケーションのコンポーネント間通信から依存性情報を取得、データセンター移行にも役立てられる。

VMware Cost Insight:各パブリッククラウドおよびプライベートクラウドのコストを計算・分析できる。

VMware AppDefence:構成管理ツールやハイパーバイザーから得られる情報に基づき、アプリケーションのあるべき姿を「マニフェスト」として管理。逸脱が発生した際にはアラートを出したり、通信をブロックしたりするなどができる。

Workspace ONE Intelligence:端末のエージェントで、メトリックス(計測情報)を収集、これを使ってユーザーエクスペリエンスの低下につながる問題を分析できる。

Automation Service:テックプレビュー段階のサービス。ソフトウェアコンポーネントのカタログを開発者に提供。クラウドに依存しないでデプロイスクリプトで、任意のクラウド環境に投入できる。

 これらのうち、Discovery、Network Insight、Cost Insightは既存のオンプレミス管理製品「vRealize」シリーズの機能を切り出してサービス化したものといえる。NSXは広く知られている通り、オンプレミス版があり、NSX CloudではSDNコントローラをサービスとして提供する。Wavefront、AppDefence、Automaton Service、Workspace ONE Intelligenceは、今回新たに加わった製品だ。

VMworld 2017の基調講演におけるデモに、説得力があった理由

 VMworld 2017におけるデモには説得力があった。VMware Cloud ServicesをはじめとしたVMwareの製品が、後ろ向きの管理ではなく、インフラ運用をアジャイル化するとともに、企業におけるデジタル変革を促進できることを、分かりやすく示したからだ。特にVMware Cloud Servicesは、セキュリティや資産管理、パフォーマンスモニタリングなどの機能を備えるが、従来型の運用管理製品のように後ろ向きな、開発者とIT部門の対立を助長するものではなく、逆にIT部門が開発者を積極的に支援し、またサービスによっては開発者自身が直接活用できるものとして示したからだ。

架空企業Elastic Sky PizzaのITマネージャー、アリソンは、CIOの策略で、突然IT担当バイスプレジデントに昇格されてしまう。そしてITインフラの近代化、オーダーシステムの改修、ソーシャルへの対応を全て短期間のうちに終わらせることを約束させられてしまう

 デモは、デジタル変革に迫られているビザチェーンを舞台としたストーリー仕立て。この企業は新たな競合にビジネスを侵食されており、早急に手を打たなければならない。オンライン注文システムを刷新しなければならず、ソーシャルアプリの情報を活用したユーザーの嗜好への対応も急務。だが、足元では情報漏えいの発覚により、抜本的なセキュリティ対策を迫られている。また、IT運用が硬直化しており、素早いIT展開が難しい状況だ。新任責任者は、全てを短期間のうちに解決せよと命じられる。そこで新任IT責任者は、VMwareの製品を駆使し、セキュリティ対策、注文システムの拡張、IT運用の改善を行った。

 まずはVMware Cloud Servicesのサービスの1つであるアプリケーション指向セキュリティサービス「AppDefence」で、アプリケーションレベルでの保護およびガバナンスを実現。次に管理ツールの1つである「vRealize Business」で社内と複数クラウドサービスのコスト比較を行った、これに基づき、既存アプリの一部をVMware Cloud on AWS(VMC on AWS)へ移行すると決断。

 移行では、「vRealize Network Insight」というネットワーク可視化ツール(VMware Cloud Servicesにも同一サービスがある)で通信状況に基づきアプリケーションの依存性を確認。この上で依存性の少ないものからVMC on AWSへのvMotionを実行した。

 新たなアプリケーションはオンプレミスのPivotal Container Services環境で構築。NSX/NSX Cloudで、開発者の手を煩わすことなく、運用側がきめ細かなセキュリティポリシーを構築、これをデプロイ先のパブリッククラウドにそのまま移行できる。

 Automation Serviceでは、オンプレミス、主要パブリッククラウドを対象に、特定クラウドに依存しないソフトウェアデプロイメントが可能になる。クラウド非依存の「Infrastructure as Code」を実現できるという。

 一方、拡張したオンライン注文システムは、稼働開始直後にトラブルが発生した。開発チームはVMware Cloud Servicesのサービスに含まれるWavefrontおよびWorksspace ONE Intelligenceを通じてアプリケーションパフォーマンスを分析。一部アプリケーションサーバの処理能力がガベージコレクションで急速に低下、また、アプリケーションで使用しているサードパーティの認証サービスのパフォーマンスが極端に落ちていることを突き止め、対策を講じた。

 上記のデモが印象付けたのは、「スピード」「柔軟性」「アプリケーション指向」「開発者との親和性」だ。AppDefence、Network Insight、Wavefrontは全てアプリケーション指向であり、特にWavefrontは開発者自身が活用することもできる。NSX Cloudも、多様なクラウドにおいて、アプリケーション単位での一貫したセキュリティ運用を支援する。NSXのためのポリシーは、Network Insightを使って短時間で作成できる。Cost Insightでは、各種クラウドのコスト管理を通じ、自社が個々のアプリケーションやサービスについて、最適解を選んでいることを常に確認できる。

 加えて、vSphereベースのパブリッククラウドなら、既存アプリケーション移行において変換作業などがなく、場合によってはvMotionを使えることから、時間とコストを抑えられるという点を強調している。

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