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» 2017年09月08日 05時00分 公開

「実際のサービスでまず小さな成果を出せ」:Pivotal CEOが語るKubernetes、そして一般企業のデジタルトランスフォーメーション (1/2)

Pivotalのロブ・ミーCEOとのインタビューを予定していたところ、同社がKubernetesのディストリビューションを含む製品をVMwareと共同発表というニュースが飛び込んできた。そこで企業におけるデジタルトランスフォーメーションの進展と、Kubernetesを製品化した理由について、ミー氏に聞いた。

[三木泉,@IT]

 Pivotalは、企業のデジタルトランスフォーメーションを、開発手法、開発プラットフォーム/ツール、文化と、多角的に支援することで急成長してきた。一方同社は2017年8月末、「Pivotal Container Platform(PKS)」という、コンテナオーケストレーション技術Kubernetesに基づくアプリケーションプラットフォーム製品をVMwareと製品化し、発表した。本インタビューでは、大きくレベルの異なる話題ではあるが、企業におけるデジタルトランスフォーメーションの進展度とアドバイス、そしてPKSを製品化した理由について、Pivotal CEOのロブ・ミー氏に聞いた。まずはPKSの話題からだ。

――PKSの発表に、大変驚きました。Pivotal Cloud Foundry(PCF)は主要クラウドプロバイダーの全てで展開されていますし、Google CloudはTechnology Partner of the YearにPivotalを選んでいます。サム・ラムジ氏にインタビューしたとき、同氏も「Cloud FoundryとKubernetesはどちらも必要」と言っていました。Kuboの発表では、「Pivotalの顧客の間でKubernetesの利用が広がっていて、その運用で困っているところが多い」という点が開発理由に挙げられていましたが、事実上のKubernetesディストリビューションまで製品化する必要性は、どこにあったのでしょうか?

参照記事
米Pivotal Labs創業者が具体的に語る、一般企業は「Google」とどう戦えばいいか
[速報]PivotalとVMware、Kubernetesプラットフォームソフトウェアを発表
Pivotalとグーグル、Cloud FoundryとKubernetesを統合運用する新プロジェクトKuboを立ち上げ

ミー氏 Cloud Foundry(CF)およびPCFは、Diegoというコンテナオーケストレーション機能を中核としていますが、より高いレベルの抽象化を提供するため、これを表に出すことはしていません。コードをプッシュしてくれれば、あとは自動的に運用されるようになっています。

 一方、Kubernetesの人気は非常に高まってきました。多くの人が、Kubernetesを使ってコンテナを動かしたいと考えるようになっています。

 そこで、競合的な見地からいろいろ考えました。オーケストレーションエンジンをKubernetesに置き換えればいいのか。市場はそれを求めているのか。いつの日か、Kubernetesへの置き換えをするかもしれませんが、これをしたからといって、得るものはないと思います。

Pivotalのロブ・ミーCEO

 顧客はますますワークロードをKubernetesで動かしたいと考えるようになっていますし、実際に使い始めています。そして運用で困っています。

 CF、PCFにはBOSHという非常に強力なプラットフォームがあります。これは、プラットフォームを動かすプラットフォームといえます。アプリケーションを動かすプラットフォームがあり、さらにこれを動かすプラットフォームがあるわけです。

 こうした二重の抽象化は、大きなメリットをもたらしてきました。アップグレードやセキュリティパッチなどをダウンタイムなしに行えるからです。これはPCFの成功をもたらしてくれました。

 そこでBOSHをKubernetesに適用できれば、従来はできなかったことが実現できるようになります。Kubernetesユーザーも使いたいと思ってくれるでしょう(注:この部分はKuboのことを述べている)。

包括的なプラットフォームを目指す

ミー氏 次に出てくる質問は、「これをどう位置付けるのか、Pivotalは自分と戦おうとしているのか」といったことでしょう。私たちは、より包括的なプラットフォームを構築していく過程で、シンプルに複数レイヤーの抽象化を提供していくことができるという点に気付きました。

 CF/PCFでは、アプリという抽象化レイヤーを提供しています。一方、生産性が高いかどうかは別として、コンテナという抽象化レイヤーを使いたい人たちはいます。また、ワークロードの中には、CF/PCFで動かすよりも、コンテナで動かした方がいいものもあります。

――例えばどういうワークロードですか?

ミー氏 KafkaやSparkを使ったデータサービスは、CF/PCFでは完全な自動化ができておらず、時間と労力が求められます。Kubernetesを使って直接コンテナで動かせば、少し楽になります。

 もう1つは「リフト・アンド・シフト」です。既存のワークロードをコンテナでくるんでPaaSで動かしたいというニーズがあります。これに対し、私たちは、「クラウドネイティブに移行し、ある程度労力を使って12ファクターアプリケーションに近いものにしていくべき」という立場を貫いてきました。それでも、移行を急ぎたい人がいます。データセンターの統合などで、1カ所にワークロードをまとめたいと考え、Kubernetesを使おうとしています。

 そこで私たちは、顧客にこうしたことを行う場を与えれば、これらのアプリケーションが潜在的には将来PCFに移行し得ると考えています。(PCFにとって)素晴らしいステージングの場です。

 (大企業には)時には数千もの既存アプリケーション資産があります。顧客はこれらを皆、PCFに移行できればいいと考えているのです。

 Comcastは、「開発者1500人、アプリケーション1000、運用担当者4人」と書かれたスライドを見せて、PCFの利用について語りました。PCFはこれほどまでに効率が高いのです。

 企業はこれに向けて、まずPKSに既存アプリケーションを移行し、次に少しずつPCFに移行すれば、(PKSへの移行で)とりあえずある程度のメリットを享受し、次に(PCFへの移行で)さらに多くのメリットを得ることができます。

――なぜ、PKSに移行した顧客が、PKSにどどまったりGoogle Cloudに行ったりするのでなく、PCFに移行すると考えるのですか?

ミー氏 Javaで書かれ、ミドルウェアを使う既存アプリケーションを単純にコンテナで包んでPKSで動かすのでは、PCFで得られるような自動スケーリング、フェイルオーバーなどのメリットが実現できません。マイクロサービス化すれば、アップデート、開発、スケーリングをコンポーネントごとに行えるようになります。

 私たちが常に主張してきたのは、コンテナエンジンに既存アプリケーションを移すことで、ある程度のメリットが得られるものの、それが最終的な姿なら、あなたの全ての問題を(解決することなく)、別のパッケージに入れただけだということです。それがPCFへの移行に向けた一段階なら、アプリケーションを順次分解していくことで、はるかに多くのメリットを享受てきます。

 ハイレベルな答え方としては、「顧客はアプリケーションを(PCF上で)ソースコードから直接動かしたいと思っていますし、(Kubernetesを使い)コンテナで動かしたいとも思っています。そこで私たちは、この2種類の抽象化を、統合的に管理できるレイヤーとともに提供します。これは他の誰にもできないことです」ということになります。

 最終的にはFunctions as a Service(注:サーバレスコンピューティングと同義)、データサービスも、BOSHによって管理できる形で提供します。こうしたあらゆるレベルの抽象化を統合的なプラットフォームで提供できるのは、非常にパワフルなことだと考えます。PCFとPKSは別の製品ですが、どちらも包括的なビジョンの要素だといえます。

――PKSとPCFの利用をどちらも拡大する顧客が出てくることを想定しているのですね?

ミー氏 そうです。

――では、CNCFがKubernetesのコンパニオンプロジェクトとしてホスティングしているようなツールを採用することもあり得るのですか?

ミー氏 いろいろなものの組み合わせになると思います。BOSHやConcourse(Pivotalが生み出したCI/CDツール)など、PCFをパワフルにしているツールも、PKSに適用できます。CNCFから出てくるさまざまなツールも、ユーザーが使いたければPKSで使うことができます。PCF、PKSで一部のツールを共通に使っていくことになると思います。この点では非常に高速な展開を予想しています。

 BOSHとともに、私たちはPCFのために数年を掛けて開発してきたオンデマンドブローカーをPKSに適用し、Kubernetesクラスタをオンデマンドでデプロイし、スケーラブルに管理できるようにしています。

――Kubernetesは「overhyped(騒がれすぎ)」だと思いますか?

ミー氏 おそらくそうでしょうね。テクノロジーが周囲の熱や興奮に追い付くのに苦労しているという点では、定義としてoverhypedだと思います。そうであってもこれは現実です。そこで、私たちの経験をコミュニティにもたらしていくことができます。Kubernetesへのコントリビューションもしていきますし、関わりを強めていくつもりです。こうしたことを通じて2つのコミュニティの橋渡しができるようになります。

 顧客やコミュニティはこれまで(CFとKubernetesが)対立していると思ってきたでしょう。しかし、Googleも私たちも、そうは考えてきませんでした。今回の発表で、この2つが共存し、補完し合う、異なる抽象化レベルの技術だということを明確に示せたと思います。

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