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» 2017年09月22日 05時00分 公開

Gartner Insights Pickup(32):Microsoftの営業改革は、業種別の対応とクラウド利用促進が焦点

Microsoftは大掛かりな営業改革を進めている。重点顧客や重点業種を明確化するとともに、クラウドの利用促進に向け、ユーザーの実利用実績に基づく営業担当者への報酬を重視する制度を導入した。

[Stephen White, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップ。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

編集部注:本記事は、2017年7月のMicrosoftによる発表を解説した、ガートナーアナリストによる2017年7月12日付けのブログポストを、@IT編集部が翻訳し、掲載したものです。

 2017年7月初め、Microsoftの組織再編に関するニュースが報じられた。同社の2017会計年度が6月末に終了したのを機に、同社が進めてきた改革の詳細が明かされた形だ。

 約1年前、MicrosoftでCOO(最高執行責任者)を務めていたケビン・ターナー氏が退社。それ以来、同氏の統括分野ではさまざまな変更が行われてきたが、現在はグローバル営業部門の大掛かりな構造改革が進行中であることが明らかになった。

 この構造改革には、営業組織の再編、営業業務における重複排除、エンタープライズと中小規模のアカウント管理における区別の明確化に加え、報酬プランにおけるライセンス販売からクラウド利用拡大への重点の移行が含まれる。

 Microsoftの新しい営業体制では、規模別の顧客区分が6セグメントから4セグメントとなり、新たなエンタープライズ担当組織(「Industries」と呼ばれている)では6つの重点業種が設定されている。このうち、製造および資源、金融サービス、小売りの3つは新しいコマーシャルエンタープライズ部門が担当し、政府機関、ヘルス、教育はパブリックセクター部門が担当する。

 この6つの業種それぞれに向けたソリューションには、重点的にエンジニアリング投資が行われる。メディアや法務、ホスピタリティ、テクノロジーなど、他の業種の顧客企業も業種別の営業チームによって管理される。だが、少なくとも当面は、これらの業種向けソリューションの開発と提供はパートナーに依存する。

 SMB(中小企業)を対象とした新しい顧客セグメントは「SMC(Small, Medium and Corporate)」と呼ばれ、サービスの提供ではパートナーが大きな役割を果たす。Microsoftの社内リソース投資は、インサイドセールスによるデマンドジェネレーション活動に振り向けられる。

Microsoftの営業組織の変化で顧客が受ける影響

 4つのセグメントへの顧客企業の分類は、企業規模だけでなく、技術依存度や成長性も考慮して行われる。この分類方法は精緻(せいち)化が進められているが、これまでコーポレートテレマネージド部門やSMB部門の管理対象だった企業については、Microsoftはあまり顧客管理を行わなくなりそうだ。パートナーが顧客との関係管理を担い、EA(エンタープライズ契約)ではなくCSP(クラウドソリューションプロバイダー)ライセンスモデルを活用するからだ。

 こうした体制の移行は、2016年初めに発表された変更に関連している。この変更は、EAの最小シート数を250から500に引き上げるというものだった。この変更は現在も有効で、既存の契約企業は500未満のシート数で契約を更新できる。

 一方、エンタープライズグループの管理対象となった企業については、Microsoftは重点的に対応していく。こうした企業は、Microsoftの顧客管理担当者当たりで見た顧客数の減少の恩恵を受けることになる。

 営業組織の再編の最も前向きな影響は、技術的な関与が強化されることかもしれない。エンタープライズ部門の顧客は、Microsoftと直接やりとりしながらAzureソリューションや幅広い技術スタックを探索するようになりそうだ。特定の業種にある程度特化したソリューションも、Microsoftから直接提供を受けやすくなるかもしれない。これらのソリューションは、パートナーのカスタマイズサービスへの依存が少なくなる可能性もある。

 こうした方向での目覚ましい変化は構造改革後に期待できるものであり、新会計年度の実績というよりも、Microsoftの長期的な取り組みのプロセスの一部になる。

ライセンス販売に代えてクラウドの価値と利用にフォーカス

 Microsoftはサブスクリプション販売ではなく、クラウドサービスの利用促進に軸足を移す方針を掲げており、この方針が営業改革の柱となっている。これは、2017年7月に開催されたMicrosoftのパートナー企業向けイベント「Inspire 2017」で発表された。

 Microsoftは5年近くにわたり、この方向へのシフトを進めてきた。クラウドの消費(あるいはアクティブな利用)を直接反映するパートナー向けインセンティブプログラムも実施している。この取り組みを推し進め、Microsoftの営業担当者が案件の成約ではなく、クラウドの利用状況と100%連動した報酬を(少なくともAzureに関しては)得るようにしたことは特に重要だ。

 クラウド利用の重視は、顧客への営業提案に影響する可能性がある。顧客の契約予定金額の大きさではなく、サービスの利用実績に基づいて営業交渉で譲歩が行われる割合が増えるかもしれない。Azureサービスに投資している企業は直感的には最大限に使いたいと考えるものの、実際にはオンラインサービスの利用実績は予定を下回ることがよくある。

 では、なぜMicrosoftは案件の成約を重視しないのか。成約に力を入れても実際の利用が少ないと、契約更新時にサブスクリプションを増やしたいオンラインサービスベンダーにとって問題となるからだ。これまでの契約期間がそうした利用状況では、更新に関する顧客の前向きな判断は期待できない。

 また、Azureサービスをアクティブに利用している企業は、自ずと同サービスに大きく依存するようになる。Microsoftが提供している新しいハイブリッドクラウドサービス「Azure Stack」と合わせて考えると、Microsoft技術によるハイブリッド戦略を採用している顧客が他のプロバイダーのクラウドサービスに乗り換えることはまずなさそうだ。

 業種別対応の重点的な強化と、案件の成約に基づく報酬プランに代わる「サービス利用状況に基づく報酬プラン」の導入が示しているのは、Microsoftが長期的に推進している事業のサービス化が大きな節目を迎えているのかもしれないということだ。

 Microsoftは、新たに選択した複雑な道のりを進むことが、エンタープライズ顧客の価値を長期的に高めるという目標の達成につながると考えている。

出典:Microsoft Inspired to Go Vertical and Stop Selling Licenses(Gartner Blog Network)

筆者 Stephen White

ステファン・ホワイト

リサーチディレクター


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