大規模クラウドビジネスにおける、アジリティとコストの兼ね合いの難しさ「The Next Platform」で読むグローバルITトレンド(14)(2/2 ページ)

» 2017年10月12日 05時00分 公開
[Nicole Hemsoth, The Next Platform]
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正確な数値でコストを比較するのは難しい

 すでに議論したように、常に物事は見た目より複雑だ。オンプレミスとコロケーション/リースハードウェアのパブリッククラウドとのコスト比較は、企業によって異なる。SendGridのケースでは、ハードウェアを待っている間の遅れが重要な要因になるとジャスパーソン氏は主張する。長いプロビジョニングサイクルのせいで機会を逃したり、大きなスパイクに対処できなかったりする場合があるからだ。

 また、特別なプロジェクトに取り組むエンジニアがハードウェアを待つ時間を無駄にするコストも、今回の決定に至る大きな要因だった。もちろん、これに加えて需要のピークや谷に対応できるオンデマンド関連の利点がある。これに、Spot Instanceの価格メリットを組み合わせられる。同社はワークロードの一部に、Spot Instanceを利用しようとしている。

 AWSへの移行の提案を財務責任者にどう説明したのかと問われ、ジャスパーソン氏は「AWSとこれまでのやり方を正確な数値で比較するような、議論へのアプローチをしていない」と述べた。

 「全く異なるモデルなので比較するのは難しい。ごまかそうとしているわけではない。移行はまだ初期の段階で、正確な数字が判明するまでに至っていない。だが、これだけはいえる。私たちにはDBAと、まだ移行されていないリレーショナルデータベースがある。客観的な意見として『Amazon Athenaは安価ではない』が、エンジニアの時間を費やしたりミドルウェアを構築したりする必要はない。そうした作業は事実上、無料だ。このような例が示すのは、直接コストを見積もることはできるものの、他にも多くの変数があるということだ。Amazon Auroraのようなものでも同じことがいえる。問題に取り組んでいる40コアのマシンが5台あって命題を解こうとしているならインフラストラクチャのコストを可視化できるが、構築や保守のための他のコストも存在しており、それらは説明が難しい」

 SendGridの例から分かることは幾つかある。「クラウドネイティブなはず」と多くの人が考える企業であっても、Webベースのサービスを「自然な」環境に移行するというコスト方程式は複雑だ。

 敏しょう性、オンデマンドインフラストラクチャの迅速な対応、およびエンジニアリング時間のインテリジェントな使用を実現する能力を集計するのは難しい。例えば、コアインフラストラクチャの(構築、購入、レンタルを含む)全ての要素および管理負荷から解放されたとして、機械学習サービスを構築する真のコストとはどのくらいだろうか。こうした取り組みのために投入される開発者の工数はどれくらいなのか? 代わりに開発されたかもしれない他のものの価値はどれくらいなのだろうか?

 これらは厄介な質問だ。パブリッククラウドに関する議論は成熟してきたにもかかわらず、「CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)にどのように説明したか」に関するアーキテクトの答えは依然として複雑だ。とはいえ、これらの答えは興味深い。直接的な数字に関する言及は一貫して欠けている。だがAWS、またはGoogleやAzureが、そのソフトウェアプラットフォームサービスにより、新しいアプリケーションの構築をはるかに簡単にしているという議論は、力を帯びてきている。

 大規模なパブリッククラウドが、オンデマンドインフラストラクチャへの対応に十分なレベルの開発サービス基盤を開発するには長い年月がかかった。提携が増えているにもかかわらず、クラウドコンピューティングにはまだまだ多くの新規参入余地があるようだ。新規参入組の一部には、当初から存在しているべきだったと思われる企業もあるが。

出典:When Agility Outweighs Cost for Big Cloud Operations(The Next Platform)

筆者  Nicole Hemsoth

former Editor in Chief of HPCwire


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