シスコの2018年度における国内事業の前提が、これまでと異なる理由サービス、ソリューション指向を強める

Cisco Systemsの日本法人、シスコシステムズは2017年10月18日、同社の2018会計年度における国内事業戦略を説明した。同社の新年度はこれまでと前提が異なる。本社が過去1年にわたり、発表してきた製品群により、従来とは異なる展開が可能になるからだ。

» 2017年10月23日 08時00分 公開
[三木泉@IT]

 Cisco Systemsの日本法人、シスコシステムズは2017年10月18日、同社の2018会計年度における国内事業戦略を説明した。同社の新年度はこれまでと前提が異なる。本社は、過去1年にわたり、製品戦略のシフトを象徴する製品群を次々に発表してきたからだ。日本法人は新年度、これらを反映させた活動を展開していく。

 シスコの鈴木みゆき社長は2017会計年度、戦略的な意味での成長率が評価され、日本法人が本社の「グローバルトップカントリーアワード」を受賞したという。特に中堅・中小企業向けのビジネスは30%以上成長。「Cisco Start」の販売パートナーは5700社とほぼ倍増。「Cisco Meraki」もNTT東日本の「ギガらくWi-Fi」における採用で、大きく伸びたという。

Cisco本社はこの1年で大きく変わった

 Ciscoは過去1年、特にネットワーク/インフラやセキュリティで、大胆な取り組みを進めてきた。方向性やコンセプトこそ以前から示してきたが、過去約1年の間に製品が出そろってきたことは大きな変化だ。これらの新製品が直ちに同社の収益の大部分を占めるようになるわけではないとしても、企業のCIOが抱える課題に対するCiscoとしての解決策を提示できるようになったからだ。特にITインフラの刷新、マルチクラウド対応、IoT、セキュリティでこれが当てはまる。

 Ciscoが2016年3月に発表した「Cisco DNA」というアーキテクチャでは、組織や組織内ユーザーの「やりたいこと」に基づいてネットワークを構築でき、その後はネットワークにおけるさまざまな事象、あるいはコンテキスト情報に基づき、自律的に運用できる世界を目指している。

 同アーキテクチャを具現化する製品として、データセンター向けには「Cisco ACI」や「Cisco Tetration Analytics」を提供しているが、Cisco ACIでは新たにマルチクラウドへのプライベートネットワークの延伸機能を発表した。Cisco ACIのクラウド延伸と、アプリケーション指向のマルチクラウド運用管理ツールである「Cisco CloudCenter」が統合することで、シスコのマルチクラウド関連機能は狭義のインフラレイヤーを超えるものとなる。

「ACI Anywhere」では、Cisco ACIを社内データセンターだけでなく、パブリッククラウドにも適用できる

 なお、Ciscoのマルチクラウドソリューションは、企業データセンターの刷新/統合を含む。Tetration Analyticsで既存データセンターにおける通信の状況を把握できることで、アプリケーション単位のデータセンター移行を効率化、併せて新データセンターでは、同じくTetration Analyticsの情報に基づきCisco ACIのマイクロセグメンテーションポリシーを作成、新データセンターできめの細かなセキュリティを適用できる。

 一方、サーバ「Cisco UCS」およびハイパーコンバージドインフラ「Cisco HyperFlex」の管理をクラウド化した「Cisco Intersight」も発表した。

 キャンパスネットワーク(社内LAN)では、新ソフトウェア「Cisco DNA Center」で、グラフィカルなインタフェースを通じ、ネットワークを抽象的に構築できるようにしている。こうして、「ネットワーク構築=各機器をコマンドで設定する」という世界から徐々に離れようとしている。

 セキュリティでは、主に買収を通じ、DNSによるセキュリティなど、ユニークなものを含めた包括的な製品群を構築した。クラウドサービスとして提供するものを意図的に増やし、特にIoTで要求されるスケールと適用・運用の容易さを実現している。

 また、脅威情報を収集・管理・分析する社内組織「TALOS」の情報が、より多くの製品に統合されるようになってきている。

 IoTではエッジデータの管理、処理、移動を行う「Cisco Kinetic」を発表。セルラー端末の接続管理を行う「Cisco Jasper」と連携して、IoTをネットワークだけでなく、「データ」という切り口で支える基盤ができた。

Cisco Kineticにより、IoTをより上のレイヤーでも支えられるようになった

 こうしてCiscoは、企業におけるネットワークを含めたITオペレーション戦略の策定・遂行を支援する包括的な製品ポートフォリオを完成しつつある。日本法人では、これを生かして、新年度に後述の新たなサービスを展開する予定だ。

日本法人は新年度に何をやろうとしているか

 シスコは本社の新たな動きを活用して、新年度の国内事業を進める。

 IoTでは「スマートファクトリー」「スマートシティー」「スポーツ&エンタテイメント」の3分野に注力し、具体的な目標を設定している。スマートファクトリーではファナック、ヤマザキマザックなど6社と共同ソリューションを展開済みだが、2018年度はこれを累計で10社に増やしたいという。

 スマートシティーでは、スマートライティングと監視カメラを使ったソリューションを展開中。新年度は新規に2件、京都・嵐山のスマートツーリズムおよび東京・日本橋の「安心・安全街づくり」を進める。スポーツ&エンタテイメントでは、6つのスタジアムにIoTを展開中だが、新年度にはこれを累計10カ所に拡大する。

 ネットワーク/インフラでは、上記の本社における新製品を活用し、データセンターおよびキャンパスネットワークの刷新、マルチクラウド利用管理機能の整備などのニーズに対応する。Cisco MerakiやCisco Startなどの中堅・中小企業向けビジネスでは、シスコブランドの認知度をさらに高めたいという。

 通信事業者向け事業では、5Gに向けた「次世代サービスプロバイダー」への移行支援を進める。データトラフィックの急増に対応するコアルーターの提供だけではない。特に新年度は、マネタイズの多角化につながるような、SD-WAN、NFVへの対応、これを活用したビデオやセキュリティのクラウドサービスを、通信事業者と共同開発していくという。

 これらを提供する過程で、「リカーリングレベニュー」つまり定期的に繰り返し収益が発生するビジネスモデルへの移行を進めていく。

 シスコは、新年度に日本で2つの新サービスを提供開始するという。1つは「ビジネスクリティカルサービス」。ITインフラのコスト効率化、コンプライアンス強化およびデジタルトランスフォーメーションの基盤への刷新に関する設計から運用までのサービスを提供する。もう1つは「ハイバリューサービス」で、マルチベンダー環境における他ベンダーを含めた統合的な運用の支援を提供する。

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