IBM、汎用量子コンピューティングシステム「IBM Q」の新展開を発表20量子ビットシステムが間もなくオンラインアクセス可能に

IBMは、IBMクラウドで提供する汎用(はんよう)量子コンピューティングシステムおよびサービス「IBM Q」向け量子プロセッサのアップグレードを発表した。

» 2017年11月14日 11時00分 公開
[@IT]

 IBMは2017年11月10日(米国時間)、ビジネスやサイエンスに応用可能な汎用(はんよう)量子コンピューティングシステムおよびサービス「IBM Q」の、アーリーアクセス商用システム向け量子プロセッサにおける2つのアップグレードを発表した。

 IBMは、IBM Qの本格提供に向けてシステムやソフトウェア、アプリケーション、実用化技術に重点を置いて量子コンピューティング技術スタック全体の開発を推進している。顧客は、2017年末までにIBM Qシステムのコンピューティング能力にオンラインでアクセスし、実用できるようになる予定だ(現在アクセスできるものは実験用)。またIBMは、2018年に同システムのアップグレードを計画している。アップグレードの内容は以下の通り。

  • オンラインで顧客に提供される最初のIBM Qシステムは、20量子ビットプロセッサを搭載する。このプロセッサは、超電導量子ビット設計、接続、パッケージングが改良されたものになるという。コヒーレンス時間(量子計算に使用可能な時間)は、平均90マイクロ秒で、忠実度(※)の高い量子操作が可能だとしている
  • IBMは、50量子ビットプロセッサの運用プロトタイプ(IBM 50Q System)の開発と測定に成功した。この新プロセッサは20量子ビットアーキテクチャを基に拡張したもので、次世代のIBM Qシステムに搭載を予定している

※「量子もつれ」の程度を評価する量の1つ

IBM 50Q System用に配線されたIBMの冷却装置(Credit: IBM)

 今回発表のアップグレードは「量子ハードウェア開発が急ピッチで進んでいることを示している」とIBMは述べている。

 IBMは、先進的でスケーラブルな汎用量子コンピューティングシステムを顧客に提供し、アプリケーションの実用化を探求できるように注力している。この6カ月以内にも、20量子ビットプロセッサのコヒーレンス時間を、公開中の5量子ビットおよび16量子ビットシステムの2倍に伸ばしたとしている。2018年も、量子ビットの品質、回路の接続、操作のエラー率といった面で改良を続ける予定だ。

量子コンピューティングのエコシステムの取り組み

 IBMは量子コンピューティングシステムの開発だけでなく、量子コンピューティングのエコシステムの拡大にも取り組んでいる。そのために量子コンピューティングコミュニティー向けの「オープンソースソフトウェアツール」、近い将来を想定したシステム向けの「アプリケーション」、教育および実用化向けの「資料」などを手掛けている。

 オープンソースソフトウェアツールに関しては、量子コンピュータのプログラミングと実行に使うオープンソースソフトウェアの開発者向けキット「QISKit」を、2017年にリリースした。現在、ユーザーはQISKitを使って量子コンピューティングプログラムを作成し、実際のIBMの量子プロセッサや、オンラインで提供されている量子シミュレーターで実行できる。

 このQISKitは最近、量子システムの状態を調査するための可視化ツールが追加された他、「IBM Data Science Experience」と統合され、量子アプリケーションの動作確認済みサンプルも追加された。

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