連載
» 2018年01月26日 05時00分 公開

コンサルは見た! AIシステム発注に仕組まれたイカサマ(最終回):アンタ、まだ分かっちゃいないわね――ミサキより愛(AI)をこめて (1/3)

「北上エージェンシー」の生駒がチラシ制作システム発注詐欺で真に狙っていたのは、「マッキンリーテクノロジー」のAI学習ノウハウを無料でかすめ取ることだった。ことの真相を江里口美咲から聞いた北上の社長は、ある判断をする――。

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]
コンサルは見た!


コンサルは見た!」とは

連載「コンサルは見た!」は、仮想ストーリーを通じて実際にあった事件・事故のポイントを分かりやすく説く『システムを「外注」するときに読む本』(細川義洋著、ダイヤモンド社)の筆者が@IT用に書き下ろした、Web限定オリジナルストーリーです。

前回までのあらすじ

広告代理店「北上エージェンシー」の「発注スルスル詐欺」は、技術部長 生駒の計画的犯罪だった。無料で20人月分の作業をさせられた上にAIの学習ノウハウまで奪われた「マッキンリーテクノロジー」の日高から相談を受けた「A&Dコンサルティング」の江里口美咲は、マッキンリーの競合「アルプスソフトウェア」、そして北上の創業社長を訪問し、ことの真相を報告した。

悪行がバレた生駒の運命やいかに――。



登場人物

A&Dコンサルティング

misaki

江里口美咲

大手コンサルティングファーム「A&Dコンサルティング」のITコンサルタント。ユーザー企業のIT戦略策定支援やベンダーのソフトウェア開発品質改善を行う傍ら、プロジェクト開発にまつわるトラブルの数々も解決に導いている。性格:勝ち気、口調:辛辣(しんらつ)。

マッキンリーテクノロジー

hidaka

日高達郎

中堅ソフトウェア開発企業「マッキンリーテクノロジー」の技術営業。


北上エージェンシー

ikoma

生駒健司

中堅広告代理店「北上エージェンシー」システム企画部長。


kitagami

北上幸三

北上エージェンシー創業社長。創業30年で年商を数十億規模まで拡大したビジネスの鬼


アルプスソフトウェア

tamba

丹波

中堅ITベンダー「アルプスソフトウェア」AI本部長。




社長がご立腹だ!

ikoma

 「アルプスソフトウェア」の丹波から取引辞退の連絡を受け、「北上エージェンシー」の生駒は残ったコーヒーを一気に飲み干した。

 (作戦失敗、か)

 しばらく腕組みをしたまま動かなかったが、大きく息を吐くと首を左右に振った。

 (仕方がない。部門の赤字はリーダーたる自分の失点にはなるが、そもそもシステム開発は、かなり高い確率で赤字を出すものだ。誰にでも起き得る失敗を自分もやってしまった。その程度のことなら、これからいくらでもばん回の機会はある)

 生駒が椅子に深く背をもたせかけたとき、再びスマホが鳴った。生駒の上司に当たる総務担当取締役の鈴鹿からだ。

 (何の用だ?)

 首を傾げながら電話に出た生駒の耳に、鈴鹿の甲高い声が響いた。

 「生駒君、キミ、何てことをしてくれたんだ!!!」

 「えっ?」

 「広告作成システムの件だよ。社長が大変にご立腹だ!」

 「しゃ、社長が? 社長は何をそんなにお怒りなんでしょうか?」――そう言いながら、生駒は眉をひそめた。

 (マッキンリーからクレームでも入ったのか? しかし会社に損害はないはずだが……)

 「そんなのは、こっちが聞きたいよ。君は『マッキンリーテクノロジー』という会社をだましてプロトタイプを無償で作らせ、そのAI学習ノウハウをエサに別の会社――『アルプスソフトウェア』に格安でシステムの完成を依頼したそうじゃないか!」

 「あれは、マッキンリーがセールス活動として作ったものでして。契約もしていないのに作業をしたわけですから、ウチには費用を払う理由なんて……」

 生駒の反論に鈴鹿の大きな声がかぶさった。

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