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» 2018年02月07日 05時00分 公開

自分たちが決断できないことをユーザーに委ねるのはやめろ:えふしん×シバタナオキ対談 伸びるエンジニアが持つ「哲学と数字感覚」 (1/3)

これからの時代は、エンジニアも数字を意識しないとダメ?――モバツイで経営を経験したえふしんこと藤川真一氏と、ベストセラー『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』の著者シバタナオキ氏が、なぜエンジニアは数字を味方に付けなければならないのかを探った。

[取材・文:鈴木陸夫,@IT]

 現場でコードをバリバリ書きながら充実した日々を送っていたが、マネジャーへの昇進やプロダクトマネジャーなどへの職制変更を機に成果を出せなくなってしまった。または立場は何であれ、皆頑張っているのに担当するプロダクトが伸び悩んでしまった。

 エンジニアとしてそんな壁に突き当たってしまったとき、打開策の1つになるのがビジネスデベロップメントのやり方を学ぶことだ。

 ただ、少なくない若手エンジニアが、この分野の勉強を避けたがる。理由は幾つかあるが、損益計算書(PL)の読み方が分からない、または種々のKPIを分析しながらグロース施策を練るような「数字にまつわる業務」が苦手だから、というのもあるだろう。

 そこで今回、エンジニア界で名の知られる藤川真一(えふしん)氏と、書籍『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』(日経BP社)の著者であるシバタナオキ氏に、どうすれば事業数字に強いエンジニアになれるのかを聞いた。

 えふしん氏は、2000年代後半に一世を風靡(ふうび)した携帯向けTwitterクライアント「モバツイ」の開発・運営で社長業を経験した後、ECプラットフォームを運営する「BASE」のCTOに就任。個人開発者としてiPhoneアプリも運営しており、さまざまな立場を経験してきた人物だ。

 一方のシバタナオキ氏は、エンジニアリングをバックグラウンドに持つ経営者であり、著書の中でも「開発に役立つビジネスセンスは、決算を読み続けることで身に付く」と述べている。

 そんな両氏の経験談から、事業数字に強くなる働き方を探った。

サービス開発で問われる数字感覚は「ダメ出し」で磨かれる

藤川真一(えふしん)氏
「BASE」取締役CTO
FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年に「GMOペパボ」に入社。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年から携帯向けTwitterクライアント「モバツイ」の開発・運営を個人で開始し、後に法人化。2014年8月から現職。2017年9月に慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科博士課程を単位取得満期退学、2018年1月に博士(メディアデザイン学)取得、同学科研究員。

シバタ BASEは社員数が100人を超えたとお聞きました。順調に成長している証ですね。

えふしん ありがとうございます。でも、それに伴って問題も幾つか表面化しています。今、プロダクトを作っているメンバーは40人くらいいて、月に1〜2人くらいのペースで増え続けているので、いよいよミドルマネジメントが不足してきたんですね。

 それともう1つ、サービスが大きく成長していることもあって、「目先の開発計画と、会社のビジョンに基づいて設定したKPIとの整合性をどう取っていくか」が難しくなっていて。

 開発の最前線にいるエンジニアからすると、「今すぐこの機能改善をやるべきだ」「こんな新機能を開発したい」となりがちですが、本来は「その施策はどのKPIに影響するのか?」という視点も必要で。

 その際、数字で事業へのインパクトを試算しなければならないシチュエーションも出てきます。ただ、僕を含め、エンジニアには数字で語る怖さがあるわけです。

シバタ 分かります。「適当なことは言いたくない」ということですよね。

えふしん ええ。BASEはECプラットフォームなので、一番のKPIは流通総額(取扱高)を増やすこと。この点は開発チームにも明確に共有できていると思っています。

 しかし、細かな開発計画の実施有無を検討するとき、「その施策は何の数字を伸ばすためのものなのか」を誰も説明できない状態で議論が進んでしまうことも多くてですね。

 若手エンジニアにこの説明を求めるのは酷だと思いますが、リーダー以上になったら間違いなく必要になる。

シバタ ミドルマネジメント不足の問題もあるとなると、CTOであるえふしんさんのご負担が大きくなりますね。

えふしん この問題は、僕が育成と採用を頑張ることで解決しなければならないのですが……。

 シバタさんは楽天に勤めていらっしゃったじゃないですか。楽天市場の開発では、今話したような課題をどうやって解消していたんですか?

シバタ 楽天市場はチームの規模がすごく大きいのですが、開発のプライオリティーを議論する際は、「それで流通総額がどのくらい増えるの?」という議論を徹底してやっていました。

 開発チームが「こういう機能を作りたい」と提案してきても、想定でいいから必ず流通総額への貢献度を数字で出してみて、それを元に議論していましたね。それがないと判断が主観的、政治的になりやすいので、良い/悪いの判断ができないから「また次回持ってきてください」となるわけです。それを延々やっていました。

えふしん そのくらい真剣にKPIを考えろと。

シバタ だから楽天出身の人間は、KPIにつなぐところは相当訓練されていると思います。

えふしん 場合によっては、三木谷さん(三木谷浩氏 楽天会長兼社長)に直接ダメ出しされるわけですよね?

シバタ ええ。それを散々やった後に初めて、「あそこにボールを飛ばそう」とバットを振りにいく。もちろん、当たらないこともあるし、違う方向にボールが飛んじゃうこともあるんですけど。

えふしん 現場はすごくしんどいでしょうけど、そういう訓練ってとても貴重ですよね。エンジニアは数学的思考が得意ですが、ビジネスを成長させるために数字と向き合うのってまた別物じゃないですか。

 シバタさんの本には、決算に載っているような数字の情報をビジネスで使える知識に変換する力を「ファイナンスリテラシー」と書いてありましたが、サービス開発で必要なファイナンスリテラシーって、社長や上司のダメ出しを受けながら磨かれていく部分が大きいと思うんですね。

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