【トレースフラグ 834】──バッファープールにラージページを用いたメモリ割り当てを許可するSQL Serverトレースフラグレファレンス(16)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ834の詳細と使い方」を解説します。

» 2018年02月08日 05時00分 公開
[内ヶ島暢之ユニアデックス株式会社]

SQL Serverトレースフラグレファレンス一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。

 今回は「トレースフラグ834」の詳細と使い方を解説します。

 トレースフラグ834は、Windows OSに搭載されているラージページの割り当て機能をSQL Serverで有効にします。SQL Serverの全てのバージョンに対応します。

 ラージページとは、2〜16MBの連続した物理メモリ領域を意味します。特定のAPIを呼び出すことでラージページをアプリケーションから利用できます。ラージページを利用するメリットは、仮想メモリのアドレスを物理メモリへ変換する際のオーバーヘッドを減らすことです(図1)。

図1 図1 Windows OSで仮想メモリと物理メモリをマッピングしている様子 一般的にプログラムがメモリを利用する時には仮想メモリアドレスから物理メモリアドレスへの変換が発生する。ラージページを使うことで変換の頻度を下げ、メモリアクセスの効率が上がる。

 ラージページを利用する際にはSQL Serverの起動アカウントが「メモリ内のページロック」権限を持っている必要があります。メモリ内のページロックについては別の連載をご参照ください(SQL Serverトラブルシューティング 第6回)。

 トレースフラグ834には副作用があります。列ストアインデックスを利用している際には、メモリ不足やSQL Serverプロセスの内部領域確保に関する動作によってパフォーマンス劣化を起こすことが知られています。このような場合、トレースフラグ834の利用は推奨されていません。

 Windows OSを稼働し続け、SQL Serverを頻繁に再起動する環境下では物理メモリの断片化が起こり、それが原因となってSQL Serverが起動しない問題を筆者も経験しています。利用には注意が必要です。

設定可能なスコープ

トレースフラグ834
設定 可/不可 要/不要
スタートアップ
グローバル
セッション
クエリ ×
トレースフラグ 3604/3605 不要

動作例

 トレースフラグ834の動作を確認しました(図2)。ラージページの割り当てが実施されていることが分かります。

図2 図2 トレースフラグ834を設定し、SQL Serverを起動した際のエラーログ(SQL Server 2014での画面例)
 ※本Tipsは、Windows Server 2012 R2上に「SQL Server 2016 RTM」をインストールした環境で解説しています。

筆者紹介

内ヶ島 暢之(うちがしま のぶゆき)

ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。

椎名 武史(しいな たけし)

ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。


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