10日に8日は楽しめる「天職」を探せ――政治からテクノロジーへ転身した異色の社長が語るGo AbekawaのGo Global!〜Chris Barbin編(3/3 ページ)

» 2018年02月23日 05時00分 公開
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テクノロジーのトレンドは、最先端の開発者や「子ども」から学べる

阿部川 未来のテクノロジーをバランス良く見極め、移行するために心掛けていることはありますか?

バービン氏 Appirio社内には、新たなテクノロジーを学習や業務に積極的に活用する社員が大勢いますし、Appirioが2013年に買収した(注)クラウドソーシングプラットフォーム「Topcoder(トップコーダー)」のコミュニティーでは、世界最高レベルの開発者が使うツールやプラットフォームから、次のトレンドを見極めています。

注:現在は親会社Wiro傘下に組織変更

 個人的には、私の3人の子どもたちのやり方も参考にしています。若い世代の学習法は、私たちと全く違います。彼らの使う学習プラットフォームは、未来のテクノロジーを理解するヒントです。例えば、一番下の息子は14歳ですが、「Udacity(注)」を使ってコンピュータサイエンスを学んでいます。彼がコンピュータを操作するのを肩越しに見たり、ブラウザ履歴を調べたりすると、本当に驚かされます。息子はあまり良い顔をしませんが(笑)。

注:2011年に設立されたオンライン形式の営利教育機関。各分野の専門家を講師に迎え、プログラミングや機械学習など、テクノロジー関連の講座を提供している。

エンジニアへのアドバイス

阿部川 日本のエンジニアが集中する領域を見極めるには、何をすればいいでしょうか?

バービン氏 ベストなアドバイスは、「徹底的に、自分で何でもやってみること。あらゆるテクノロジーに触れて、その可能性を探れ」でしょうか。例えば、オンラインで無償公開されているテクノロジーを使って新しいソリューションを組み上げ、自作のAPIに流し込み、誰かに見せて説明してみる。まずは何か自分の手で作るところから始めましょう。

 いったん何かを作り上げれば、それを捨てて次に行くことも、さらに改善して成長させることもできます。それが、自分の持つスキルを有利な形で生かすベストな方法です。チャンスへのハードルは高いように見えて、実はとても低いのです。

Appiroの創業者兼CEO、Chris Barbin(クリス・バービン)氏から、エンジニアへのアドバイス

阿部川 最後の質問ですが、ビジネスマンとしての面とプライベートの面をどう両立していますか?

バービン氏 休みを取ると決めたら、その間は本当に休みます。その期間は、カレンダーに「DNS(Do Not Schedule/「何の予定も入れないで」の略)」と書き、その間は自分の携帯電話も見ません。子どもを学校に迎えに行き、家族と過ごす時間に集中します。

阿部川 仕事とプライベートのメリハリを付けつつ、しっかりと両方楽しむということですね(笑)。ありがとうございます! インタビューは以上です。

Go's think aloud 〜インタビューを終えて〜

 3人の元同僚と起業したAppirioは、10年を経て2000人規模になり、Wipro(世界第3位のITプロバイダー)のグループ企業として成長を続けている。

 現在のIT業界は、クラウド、ビッグデータ、その延長線上にあるAI、データ分析の分野へ大きく広がっている。起業時に「クラウド移行」を核に据えた点が、Appirioの成功を後押ししたことは間違いない。その原動力は、コンサルタント業界で経験した「何億ドルも予算を費やして、結局成果を出せない」プロジェクトを反面教師にした、バービン氏の先見性と探求力だ。

 彼は、17歳、16歳の娘さんと14歳の息子さんからも多くを学ぶという。彼が「DNS」と呼ぶ休暇は、未来のITビジネスのヒントを子どもたちから得るかけがえのない時間かもしれない。彼らが社会に出るとき、働き方から企業そのものの形まで、今とは違っているだろう。そのとき、いったい「仕事をする」ことは、人生の中でどんな意味を持つようになっているのだろうか。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

 アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、リポーター

 コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。

編集部から

「Go Global!」では、インタビューを受けてくださる方を募集しています。海外に本社を持つ法人のCEOやCTOなどマネジメントの方が来日される際は、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。

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