「モダンアプリケーション」「AI」「IoT」がポイント――Microsoft、次期Windows 10アップデートSDKの主な改良点を発表より簡単に機械学習の実験が可能に

次期Windows 10アップデートのSDKでは、「従来型デスクトップアプリケーションのモダナイズ」「Windowsでの人工知能(AI)活用」「Windows IoTによるインテリジェントエッジのサポート」を柱とするさまざまな改良が行われる。

» 2018年03月09日 11時00分 公開
[@IT]

 Microsoftは2018年3月7日(米国時間)、次期Windows 10アップデートのSDKの主要な改良点を発表した。改良のポイントは、「デスクトップアプリケーション開発者がアプリケーションを簡単にモダナイズできるようにする」「Windowsで人工知能(AI)を活用する」「Windows IoTでインテリジェントエッジをサポートする」の3つだ。

モダンワークプレース向けのモダンアプリケーション

 Microsoftは、モダンワークプレース(現代的な職場環境)向けに新しく作成されるアプリケーションについては、引き続き「ユニバーサルWindowsプラットフォーム」(UWP)をモダンネイティブプラットフォームと位置付け、「将来にわたって最適なパス」として推している。

 その一方で、次期Windows 10アップデートSDKでは、従来型のWindowsデスクトップアプリケーションの開発者が既存の「Win32」「Windows Presentation Foundation」(WPF)、「Windows Formsアプリケーション」に、以下のようなモダンエクスペリエンスを追加できるようにした。

  • 「Microsoft Edge」のレンダリングエンジンを使用したモダンWebView:全てのWin32、WPF、Windows FormsアプリケーションでMicrosoft Edgeのレンダリングエンジンを利用できる。これにより、MicrosoftのWebプラットフォームの最新改良を取り入れることが可能になる。また開発者は、「グリッド(Grid)および可変ボックス(Flexbox)レイアウト」「HTTP Interceptor」「WebRTC」といった最新Web技術にもアクセスできる
  • UWPの全ての利点を継承した包括的なコンテナ化ソリューションを提供する「MSIX」:MSIXが全てのWin32、WPF、Windows Formsアプリケーションに適用される。MSIXパッケージングフォーマットは、2018年3月7日にオープンソース化された
  • コンテンツやデータをユーザーに柔軟に表示できる「Adaptive Cards」:Adaptive Cardsは、「Skype」や「Microsoft Teams」の通知、タイムラインアクティビティー、botなど、ユーザーとコンテンツの接点を価値の高い魅力的なものにできる。Adaptive Cards 1.0が2018年3月7日に提供開始される

 Microsoftは、コミュニティーで作られた開発ツールの市場投入が進んでいることも紹介した。例えば、Advanced Installerは、既存のWindowsデスクトップアプリケーションをモダナイズし、「.appx」パッケージを作成できる無料ツール「Advanced Installer Express Edition」を発表した。Microsoftは、他のサードパーティーインストーラの開発にも協力している。

AIによるモダンエクスペリエンス

 次期Windows 10アップデートのSDKにより、開発者はAIを利用して魅力的なエクスペリエンスを提供できる。あらかじめ訓練済みの機械学習(ML)モデルをアプリケーションで利用し、以下のようなメリットを持つAIエクスペリエンスを提供することが可能だ。

  • 低レイテンシのリアルタイム結果:Windowsは、PCのローカル処理能力を利用してAI評価タスクを実行できるので、結果を迅速かつ効率的に得られる
  • オペレーションコストの削減:新しいSDKをMicrosoft AzureのAIプラットフォームとともに利用することで、開発者はAzureの訓練モデルとWindowsデバイスでの評価を組み合わせた、手頃なコストのエンドツーエンドAIソリューションを構築できる。カメラ映像やテレメトリーセンサーのような大規模データセットの取り込みに伴う帯域幅関連コストを削減または不要にすることで、大幅にコストを抑えることが可能だ。なぜなら、複雑なワークロードをエッジでリアルタイムに処理し、AI訓練のためにクラウドに送信するサンプルデータを最小限に抑えることができるからだ
  • 柔軟性:開発者は顧客とシナリオのニーズに応じて、AIタスクをデバイスで実行するか、クラウドで実行するかを選択できる。デバイスで処理が行われるのは、オフラインになった場合や、さまざまな理由(コスト、サイズ、ポリシー、顧客の希望など)から、データをクラウドに送信できない場合だ

 Windowsは、Microsoft、Facebook、Amazon Web Services(AWS)が推進し、NVIDIA、Intel、Qualcomm、AMDといった独立系ハードウェアベンダー(IHV)が対応しているMLモデルの業界標準フォーマット「ONNX」をサポートしている。次期Windows 10アップデートで開発者は、Windows 10デバイスファミリー全体でAIプラットフォームを利用できる。その中には、IoT(Internet of Things)エッジデバイス、HoloLens、2-in-1デバイス、デスクトップPC、ワークステーション、サーバなどが含まれる。

Windows開発者向けAIプラットフォームの紹介の様子

インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジにおけるWindows IoT

 Microsoftは、アプリケーション開発の在り方が根本的に変わりつつあり、モバイル中心の世界から、全てのデバイスが相互接続された世界へのシフトが起こっていると認識している。

 相互接続された世界でアプリケーションをサポートするため、Microsoftは2018年3月7日、「Windows 10 IoT」の2つのエディションを発表した。

  • Windows 10 IoT Core:フットプリントの小さいスマートエッジデバイス向け。NXPモジュールは50ドル未満の単価で出回っており、Windows 10ベースの優れた低コストソリューションを構築できる
  • Windows 10 IoT Enterprise:強力なPCやサーバクラスハードウェア向け。ATMや医療機器、産業機器などでの利用が想定されている

 どちらのプラットフォームでも同じツールやワークフローを利用でき、開発者が使い慣れたMicrosoft Visual Studio、NuGet、リモートデバッグなどがサポートされている。

 Microsoftは、クラウドデータにアクセスするデバイス層である「インテリジェントエッジ」を、クラウドと実世界を橋渡しするインタフェースと位置付けている。インテリジェントエッジ関連のパートナーとしてVolkswagen、Misty Robotics、XOGOなどがある。

 またMicrosoftは、「インテリジェントクラウドは、実世界からのデータを処理し、イベントに反応し、サーバレス環境で機能する」と述べ、パブリックプレビュー版がリリースされた「Azure IoT Edge」を使えば、迅速かつ簡単に、クラウドマイクロサービスをWindows環境から活用できると説明した。

 次期Windows 10アップデートは、今回発表されたビルディングブロックを全て提供する。開発者はWindows MLやAzure IoT Edgeのパブリックプレビュー版により、Windows PCで実験を行ったり、低コストなWindows IoTデバイスを試したりできると、Microsoftは述べている。

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