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» 2018年04月06日 05時00分 公開

Gartner Insights Pickup(55):IoTの“モノ”の声に耳を傾けるには

今後、ロボットなどの「モノ」が進化し続けると、人間はそのうちモノを擬人化することになるだろう。これを懐疑的に捉える必要はない。人間は、モノの声に耳を傾けることにより、さまざまなメリットを得られるようになっていくはずだ。

[Laurence Goasduff, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップ。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 家庭用ロボットを動かすことを想像してみよう。仕事をしている間に片付けておいてほしい作業のリストを(作業の方法や順番は何も気にせずに)作って渡せば、作業を片付けてくれるものとする。それが続けば、やがてあなたはロボットの判断を信頼し始め、ロボットに個性があると考えるようになり、ことによると、人間味すら感じるようになるかもしれない。

 このシナリオは、論議を呼んでいる擬人化の考え方を示している。擬人化は、人間の特徴や感情、意思を、人間以外の存在――つまり、“モノ”が持つと見なすことを指す。このアプローチに懐疑的な意思決定者もいるが、Gartnerのリサーチディレクターを務めるジム・デービーズ氏は、モノの擬人化は企業にとって、顧客、市民、ワーカーが人間とは限らない世界に備えるのに役立つと指摘する。

 「擬人化を最終目標にすべきではないが、『人間的なコンピュータインタフェース』というアプローチは、効率的で信頼性に優れた快適なトランザクションを促進する。モノを「顧客」「市民」「ワーカー」に見立てることで、ITリーダーやビジネスリーダーは、モノと人や組織の相互関係の在り方への戦略的アプローチを考えられる」(デービーズ氏)

擬人化のメリットとデメリット

 モノを設計する上で、擬人化アプローチには多くのメリットがある。人間の言語や記号を利用した擬人化技術や、仮想アシスタントやチャットボットのようなデバイスは、人工知能(AI)ソフトウェア/モデルと人間との間で、自然なやりとりや信頼、学習、共感を深めることができる。

 ただし、強力な擬人化アプローチが常に最適というわけではない。ロボットがユーザーに医療上のアドバイスを提供する場合のようなデリケートな状況では、過度な擬人化アプローチのせいで患者が不快になり、極めて重要な情報をロボットに伝えないかもしれない。

 とはいえ、擬人化はもう1つの機会を提供してくれる。「モノの声(Voice of the Thing:VoT)からデジタル顧客/ワーカー/市民のフィードバックを得る」という考え方だ。ネットワークに接続されたモノの人間化により、人間からと同じようにモノからフィードバックを得る機会が生まれ、それにより人間からの既存のフィードバックを補完できる。

モノはどれも同じではない

 そこで重要となるもう1つのポイントが、あるモノに“声”があるかどうかだ。モノのインターネット(IoT)の稼働データの単純な報告と、VoTと考えられるものを識別することが重要だ。主な違いは、VoTにはモノの意見を支える何らかのインテリジェンスが必要なことだ。

 「VoTは、単なる事実の報告ではない。事実を豊かに肉付けしてそのコンテキストを与え、フィードバックの原因を示すものだ」とデービーズ氏は説明する。

 「モノのフィードバックのベースラインは、事実やイベントベースの報告であることだが、VoTは、それら以上の何かと関連がなければならない。その中には意見や考えの他、記述のコンテキスト補完、短期目標と長期目標の両立の仕方に関する根拠の提示などが含まれる。稼働レポートとさまざまなフィードバックにおけるVoTの違いは、VoTがこれらと関連していることにある。VoTが直接的なものか間接的なものか、推測されるものかにかかわらずだ」(デービーズ氏)

今後はどのような展望が開けるか

 「エッジのインテリジェント化が、特に、新しいAI推論チップの採用や、分散型ネットワークの展開という形で進む中、VoTの進展が加速するだろう」とデービーズ氏は予想する。

 「その結果として、組織の外部に“論理的に考える”ことができ、チャットなどを得意とする複雑なモノが存在することになる」(デービーズ氏)

 しかし、IoTに関する考察はまだ成熟していないため、早期採用を考える組織にとって、ベストプラクティスを導き出す根拠となるエビデンスは限られそうだ。また、VoT活用の、もう1つの障害になりそうなのが「モノの擬人化はさまざまな部門――例えば、CRM、デジタルワークプレース、イノベーション、IT、マーケティング、他の多くのビジネス部門に関わる」と考えられることだ。それに伴う文化的、政治的、技術的なハードルから、活用を進めるのは一筋縄ではいかない可能性がある。

 いずれにしても、モノの自律化が進み人間から独立して実行する能力が高まるとともに、あるモノが他のモノにフィードバックを提供する能力が、そうしたモノによる学習やその結果としてのパフォーマンス向上を加速することは間違いない。

出典:How to Listen to the Voice of “Things” in the IoT(Smarter with Gartner)

筆者 Laurence Goasduff

Director, Public Relations


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