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» 2018年06月11日 10時00分 公開

DRサイトの運用コストを60%削減:京セラドキュメントソリューションズに聞く、 「簡単・確実・低コストで機能するDRサイト」をハイブリッド環境で実現する方法

「ニーズの変化に応えるスピード」が差別化の一大要件となっている今、ビジネスを支えるITインフラには「有事の際もビジネスを止めない」仕組みがあることが市場競争参加の大前提となる。だがDRサイトを構築していても、迅速・確実な復旧が難しい、維持コストがかさむといった問題が多くの企業を悩ませている。京セラドキュメントソリューションズもそうした課題を持つ1社だったが、DRサイトの刷新により全ての課題を解決したという。一体同社は何を行ったのだろうか? プロジェクトの内幕を聞いた。

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サイバー攻撃や自然災害に見舞われても、ビジネスを止めない環境があるか

 デジタルトランスフォーメーションのトレンドが進展し、ITの力を使った体験価値向上が重要な差別化要素となって久しい。製品・サービスの利便性を左右するソフトウェアが収益に直結する重要なコンポーネントとなり、ニーズを捉えて開発・改善する「スピード」と「柔軟性」が強く求められるようになった。

 これを受けて、ソフトウェアの開発・提供を支えるITインフラ側にも一層のスピードや柔軟性が求められている。ビジネス要求にスビーディーかつコスト効率よく応えるために、開発・運用環境としてパブリッククラウドを活用したり、運用を自動化したりすることも不可欠になりつつある。だが一方で、自然災害やサイバー攻撃など、有事の際にもシステムをいち早く復旧し、ビジネスへの影響を最小限に食い止めることができなければ、そうしたインフラの意義も半減してしまう。いわば「ビジネスを止めない仕組み」を持つことが、年々激化する市場競争に参加するための大前提であるといえるだろう。

 こうした中、近年注目されているのが「レジリエンシー(Resiliency)」というキーワードだ。レジリエンシーとは、事業停止を迫られるような事態に直面しても、必要な業務やシステムを素早く復旧し、影響範囲を最小限にとどめながら、ビジネスを通常通り継続可能とする能力を指す。このレジリエンシーを強化すべく、パブリッククラウド上にソフトウェア開発環境のDRサイトを構築することで、コストを抑えながら、ビジネスロスを最小限にできる環境を整備したのが、グローバルで大きなシェアを誇る複合機・プリンターメーカー、京セラドキュメントソリューションズだ。

 同社は京セラグループの中核企業として、複合機「TASKalfa」シリーズ、プリンター「ECOSYS」シリーズなどを提供。併せて、顧客の要望に応じて製品機能をカスタマイズしたり、あらゆる入出力デバイスと同社製品を連携できるようにするソリューションプラットフォーム「HyPAS」を提供し、“幅広い製品ラインアップときめ細かなカスタマイズ”を大きな強みとしている。

ALT 京セラドキュメントソリューションズ
技術本部 ソフトウェア開発統括部 ソフトウェア技術推進部 ソフト技術推進2課
課責任者 葉山真義氏

 従って、これを支えるファームウェアや制御システム、管理アプリケーションなどのソフトウェア開発が、まさしく同社の競争力を支える大きな柱となっているのだ。技術本部 ソフトウェア開発統括部の葉山真義氏は、ソフトウェア開発におけるレジリエンシー確保の重要性について次のように話す。

 「東日本大震災をきっかけにソフトウェア開発の災害対策を進めてきました。DRサイトは単に構築するだけではなく、システム担当者なら誰であれ、どんな状況であれ、本番と同等のパフォーマンスを持ったシステムを素早く稼働させ、事業を継続できなければなりません。もちろんコスト効率も追求することは大前提です。そのためには、“それなりの仕組み”が必要だと考えたのが、今回のDRサイト構築の背景です」(葉山氏)

 では同社は具体的に、どのような“仕組み”を整えたのだろうか? 詳しい話を聞いた。

開発環境のDRサイトをプライベートクラウドに構築

 京セラドキュメントソリューションズは、東京と大阪、アメリカ西海岸に2カ所、フィリピンに1カ所の計5拠点に研究開発拠点を持つ。ソフトウェア開発もその5拠点で行われており、拠点ごとに異なる部品や機能を開発。それをモジュールのように組み合わせて、1つのプロダクトを作り上げるという体制を敷いている。

 こうした開発体制は、同社の事業がグローバル規模で展開されていることとも関係がある。同社の連結売上高は3710億円で、京セラグループの売上高1兆5770億円(いずれも2018年3月期)の23.5%を占める規模だ。地域別に見ると、ヨーロッパ地域が50%、アメリカ地域が25%、日本が13%、アジア・オセアニアが12%という構成で、海外売上高比率が圧倒的に多い。また、製造拠点は中国やベトナム、チェコ、大阪、三重などに工場を有し、世界140カ国以上に展開。直轄の販売拠点は33カ国に達する。

 このように、研究開発から顧客サポートまで、グローバルネットワークを通じて、顧客ニーズに合わせた幅広いラインアップをそろえながら、前述のようにカスタマイズにも対応するなど、ニーズに幅広く、かつきめ細かく対応する体制を整えている。

 「顧客ニーズをくみながら、柔軟にソリューションをカスタマイズして提供できることが当社の特長です。米国やアジアのニーズも各開発拠点で吸い上げ、製品・サービスに反映しています。しかしながら分散したソフトウェア開発体制を敷くことは、各拠点でのトラブルが製品提供に大きな影響を与えるということでもあります。事業の軸となっているソフトウェア開発にトラブルが発生すると、製造現場はもちろん、グローバルで33カ国の販売拠点やカスタマーサポートにまで影響が及ぶのです」(葉山氏)

 実際、東日本大震災では、東京の開発拠点が被災し、部分的に事業が機能しなくなった。当時、開発は基本的にオンプレミスで行われており、DRサイトの構築も進んでいなかったため、開発が滞ることになったという。「東京にあった1Uの開発サーバを新幹線でハンドキャリーして大阪に持ち込み、事業をかろうじて継続しました。加えて、大阪でサーバを調達しようにも、災害対応などで全国的にサーバ機器が不足し、調達できない事態に陥っていたのです」と、葉山氏は当時を振り返る。

 そこで同社は震災以降、パートナーだった伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)と協力し、プライベートクラウドを構築。東京・大阪の開発基盤をプライベートクラウド環境に移行した上で、他拠点にある同じCTCのプライベートクラウドサービス「ElasticCUVIC」と「TechnoCUVIC VP」上にDRサイトを構築して、事業継続性を担保した。

DRサイトの維持コスト、復旧手順が大きな課題に……

 だが2014年からDRサイトの運用を開始したものの、新たな課題も生じていた。1つは、運用コストだ。DRサイトは、実際の開発環境とほぼ同じ構成のものを用意し、いざというときに切り替えられるように設計した。平常時には利用せずシステムもスタンバイ状態であるものの、機器や設置スペースなどによる維持コストはどうしても発生してしまう。

ALT 図1 プライベートクラウドを利用した当初のDRの概念図《クリックで拡大》
ALT 京セラドキュメントソリューションズ
技術本部 ソフトウェア開発統括部 ソフトウェア技術推進部 ソフト技術推進2課
南洋介氏

 インフラ基盤の構築・運用を担当している南洋介氏は、「メインサイト運用コストのおよそ6割のコストが発生していました。DRサイトは環境にかけるコストをミニマムにして、いざというときにメインサイトと同等のパフォーマンスを発揮できる仕組みをどう作るかがポイントです。コストを下げるための新しいアプローチを、CTCとともに継続して探していました」と話す。

 2つ目の課題は、属人化をどう排除するかだった。DRサイトを構築しても、いざというときにDRサイトを切り替える担当者が被災して作業できなければ、事業継続は難しい。特別なスキル・ノウハウが必要なく、誰でも簡単に、必要なときに必要な切り替え作業を確実に行える仕組みが求められた。

 南氏とともにインフラ基盤の構築・運用を担当している北野恵介氏は、「インフラ運用は、南と私の2人がそれぞれ情報やノウハウを共有して、いずれかが欠けてもインフラ運用や事業運営に影響が出ないような仕組みにしています。DRサイトの切り替えも毎年定期的に訓練を行い、手順を見直したり改善したりしています。ただ、ITシステムである以上、ある程度の知識は必要で、誰でも簡単に操作できるわけではありませんでした」と振り返る。

ALT 京セラドキュメントソリューションズ
技術本部 ソフトウェア開発統括部 ソフトウェア技術推進部 ソフト技術推進2課
北野恵介氏

 そして3つ目は、切り替えを手作業で行う必要があったことだ。DRサイトへの切り替えといってもボタン1つで済むわけではない。システムを立ち上げるまでの設定、立ち上げてからのサーバ、ストレージ、ネットワークの設定、システムの動作確認とテストなどを行ってようやくビジネスを復旧する準備が整う。訓練を定期的に行っていても、設定をミスすることもあれば、状況によっては手順の変更が必要であったり、対応できなかったりするケースも出てくる。

 「復旧手順をワークフローとして自動化し、人が作業をしなくても、システムが自動的に環境を立ち上げ必要な設定を済ませてほしいと考えていました」(南氏)

「VRP」と「CUVIC on AWS」を利用した新たなDRサイトを構築

 こうした課題解消に向けて、同社は2017年11月、CTCの協力の下、OSSも含めた幅広い視点で新たな事業継続ソリューションの選定を開始。要件となったのは、「コスト削減できること」「ビジネスへの影響を最小化できる機能を持つこと」「運用を自動化できること」「操作に経験やノウハウが必要なく誰でも扱えること」などだ。さらに「マルチクラウド環境で利用できること」も重視した。というのも、同社は中長期的に開発効率化を狙うため、選定と並行してマルチクラウド化の推進にも着手していたためだ。具体的にはCTCのパブリッククラウドサービス『CUVIC on AWS』を通じて、AWSの利用を開始していた。

 これにより、プライベートクラウドとのハイブリッド環境となる中で、最有力候補となったのがベリタステクノロジーズの事業継続ソリューション「Veritas Resiliency Platform」(以下、VRP)だった。選定当初から、運用自動化をはじめ、豊富な機能を高く評価していたが、当時VRPがバージョンアップによってマルチクラウドに対応したことが採用の決め手になったという。

ALT 図2 VRPとパブリッククラウドを使った新たなDRの概念図。ハイブリッド環境にDRサイトを構築することでコストの大幅削減を狙った《クリックで拡大》

 「CTCとAWSの利用を進め、DRサイトもプライベートクラウドからパブリッククラウドへ移行しようというタイミングになって、VRPがAWSなどのパブリッククラウドに対応することが分かったのです。VRPはDRソリューションとしての機能が豊富で、シンプルな操作性が魅力です。マルチクラウドへの対応が発表されたことで、これ以外には考えられないという状況でした」(南氏)

 VRPの特長は、レジリエンス管理のプロセスをワークフローとして自動化できること。複数拠点に分散するアプリケーション、仮想マシンなどのリアルタイムな稼働状況を単一のダッシュボードで包括的に監視し、ITサービスの移行、フェールオーバー、フェールバック、データ保護、業務を中断しないリカバリテストなど、レジリエンス確保に関わる操作を全て自動化できる機能を持つ。

 これにより、プライベートクラウド、パブリッククラウド、それらの組み合わせであるハイブリッドクラウド環境、それぞれの状態変化を常時監視し、WebベースのダッシュボードでRTO(リカバリ時間目標)とRPO(リカバリポイント目標)を可視化。オンプレミスとクラウド間、クラウドとクラウド間でのワークロードの移動もワンクリックで実行することで、すみやかな回復処理を支援する。中でも葉山氏らにとって特に魅力的だったのは「リハーサル機能」だったという。実際にDRサイトからの切り替えを行うとどうなるのかを、稼働中のシステムに影響を与えず、無停止で評価することができるためだ。

 同社はベリタステクノロジーズの導入コンサルタント、CTCのSEらとチームを編成し、2018年2月から構築作業をスタート。3月中旬に動作テスト、4月から本番稼働というスケジュールで進め、本番稼働までトラブルはほとんどなかったという。

 「当社がAWSのノウハウを蓄積していたことや、CTCのパブリッククラウドサービス『CUVIC on AWS』の信頼性が高かったこと、VRPが使いやすいソリューションであったことが背景にあったと思います」(北野氏)

コストを従来比60%削減。マルチクラウド化で一層の開発効率化を狙う

 CUVIC on AWSとVRPを導入した効果は大きく3つある。1つはコスト削減だ。CUVIC on AWS上に、プライベートクラウドからパブリッククラウドに基盤が移行され、停止中のシステムの利用料が下がったことにより、DRサイトの運用コストは、従来の方式と比較するとおよそ60%を削減できた。メインサイトと比較すると4分の1のコストで運用できるという。運用コストが大幅に下がったことで、新しいDRサイトの初期構築コストも数カ月で回収できる計算だ。

ALT 図3 AWSとのハイブリッド環境で、VRPを使ってDRサイトを構築。パブリッククラウドを使うことで大幅にコストを削減できた他、レジリエンス管理のためのワークフローも自動化。迅速・確実に復旧できる仕組みを築いた《クリックで拡大》

 残る2つの効果は属人化の排除と訓練の内製化だ。従来のようなDR切り替えに伴うシステムの立ち上げや設定は不要になり、VRP上で数クリックするだけでDRが可能になった。また、リハーサル機能を活用して、必要に応じて自分たちだけで訓練を実施できるようになった。これにより、経験不足を補うことでうっかりミスを防止したり、新たに配属されたスタッフに対してDR切り替え作業を手間なく教えたりすることもできるようになった。

 葉山氏は、レジリエンシーの取り組みについて「ITが経営環境を左右するようになった今、その重要性がますます高まっている」とあらためて強調する。

 「DRはリスクヘッジの意味合いがあります。コストを抑えながら、いざというときには事業をしっかりと再開できる仕組みを作るということは重要です。パブリッククラウドとクラウド環境を生かしたDRソリューションは、その面で多くのメリットをもたらしてくれます。当社も中長期的に全システムをパブリッククラウド化していく方針であり、現在はオンプレミスを含むプライベートクラウドとパブリッククラウドが8:2という状況ですが、数年後には逆転するか、それ以上の比率になっていくと思います。今後はVRPによって事業継続性を確実に担保しながら、Google Cloud Platform なども使ってマルチクラウド化することで、開発効率、コスト効率を一層高めていきたいと考えています」(葉山氏)

 一方で、VRP導入によって自動化のメリットをあらためて確認できたことを受け、開発業務においても各種自動化を推進する方針だという。南氏と北野氏も、「レジリエンシー担保を前提に、開発生産性をさらに追求し、経営に寄与していきたい」と口をそろえる。

 「自動化は生産性を上げるために欠かせない技術。RPAやAIを使った自動化によって一層の開発効率化を追求していく予定です。また社内の開発部門だけに閉じることなく、例えば今回のDRサイト構築で培ったノウハウを、何らかの形で顧客企業にも還元していくなど、ビジネスチャンスの拡大にも積極的に取り組んでいくつもりです。今後もCTC、ベリタステクノロジーズとのパートナーシップを大切にしながら、経営への貢献度をさらに高めていきたいと考えています」(葉山氏)

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提供:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社/ベリタステクノロジーズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年7月10日

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