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» 2018年06月15日 05時00分 公開

Gartner Insights Pickup(64):公共機関におけるクラウド導入の光と影

Gartnerは、公共機関におけるパブリッククラウドサービスの利用規模は、2021年まで2桁のペースで拡大すると予測している。一方で、2021年までにプライベートクラウドの導入がパブリッククラウドの2倍のペースで進む見通しだ。これをどう考えるべきだろうか。

[Rob van der Meulen, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップ。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 公共機関におけるクラウド導入の上位2つの理由は、サービス提供の効率化とコストの削減だ。Gartnerによると、公共機関におけるパブリッククラウドサービスの利用規模は、2021年まで2桁のペースで拡大する見通しだ。同社は、2021年までの公共機関によるパブリッククラウドサービス支出の年平均成長率を17.1%と予測している。

 全業種で見ると、企業や組織はIT予算の平均20.4%をクラウドに投じている。公共機関におけるこの数字は、公共機関が国、州や省、地方自治体のどのレベルで行政を担当しているかによって異なる。地方自治体の機関ではIT予算の20.6%、国の機関では22%がクラウドに投入されている。

 「公共機関がクラウドの導入を成功させる鍵は、個々の機関が自組織に固有の技術上、組織上、手続き上、規制上の課題に責任を持って対応することにある」と、Gartnerのリサーチディレクターを務めるネビル・キャノン氏は指摘する。

 「例えば、国の機関は通常、クラウド導入を『戦略的なITモダナイゼーションの長期にわたる取り組みの一環』と位置付ける。これに対し、地方の機関はクラウドによってイノベーションやコスト削減による目先の戦術的なメリットを追求する傾向がある」(キャノン氏)

 地方機関は、クラウド支出の拡大によるメリットを享受するのが得策と言える。予算の縮小や人口統計の変化、デジタルエンゲージメントへの期待の拡大に伴い、これまでになく変革の必要性が高まっているからだ。

パブリックかプライベートか

 公共機関におけるパブリッククラウドの利用は着実に拡大している。だが、依然としてパブリッククラウドに関する懸念が根強いことから、急速なペースでの導入は進んでいない。公共機関のパブリッククラウド利用に対する反対派が唱える上位3つの理由は、セキュリティやプライバシーの問題、機能不足、ベンダーロックインへの懸念だ。

 このことから、Gartnerは2021年まで、公共機関がパブリッククラウドの2倍のペースでプライベートクラウドを導入すると予測している。ただし、プライベートクラウドはスケーラビリティ、機能、コスト削減、アジリティといった点で、パブリッククラウドと同等のメリットは提供しない。

 しかも、公共機関が“プライベートクラウド”として報告するものの多くは、“高度な仮想化”や“アウトソーシングされたITインフラ”に分類する方が適切だ。それらは、特定のワークロードを実行するのには優れた環境かもしれない。だが、本当のプライベートクラウドのメリットを全て備えてはいないだろう。実際に、公共機関のプライベートクラウドが実現できることとパブリッククラウドが提供する機能の差は広がっている。

 「公共機関のプライベートクラウドは、新たなレガシーだ」(キャノン氏)

 Gartnerのある調査では、公共機関のプライベートクラウド環境全体のうち、クラウドの特徴を全て備えているものは5%に満たないことが明らかになった。「このことが浮き彫りにしているのは、実質的にはクラウドへの移行が行われていなくても、それを語ることに政治的なメリットがあるということだ」とキャノン氏は説明する。

 「クラウドの実装がお粗末、あるいは不完全だと、公共機関の職員にとっても市民にとっても、いずれ最悪の結果を招く恐れがある」(キャノン氏)

データをどこに保存するか

 多くの場合、データ主権は必須の要件と考えられている。公共機関の多くは、データを国外に保存することをためらったり避けたりしており、それが広く報じられた事例もある。

 オーストラリア政府は、契約サプライヤーがオフショアクラウドでイタリア企業にデータを処理させていたことが分かったため、このサプライヤーとの契約をキャンセルした。また、英国政府はダブリンやアムステルダムの施設で運用されているクラウドサービスを使って、国防省のデータを保存することが法律上可能だった。だが、プロバイダーが英国内での運用を始めてから、同社のクラウドサービスを使うようになった。

 市場が発展し、新しい機能がますますクラウドでのみ提供されるようになるとともに、今後、クラウドを全く使わない公共機関は提供サービスの機能面で立ち遅れるかもしれない。

出典:Understanding Cloud Adoption in Government(Smarter with Gartner)

筆者 Rob van der Meulen

Manager, Public Relations


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