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» 2018年06月25日 05時00分 公開

開発残酷物語(8):開発費5000万円、売り上げ10万円!――オリジナルプロダクト開発に失敗し続けたシステム開発会社の今 (1/4)

トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探る本連載。今回は未経験分野のゲーム分野に勢いで参入して、火だるまになった事例を紹介します。

[竹内充彦,@IT]

 「開発残酷物語」は、システム開発会社比較検索サービス「発注ナビ」ユーザーのシステム開発会社の方々に過去の失敗事例をお話しいただき、プロジェクト運営の勘所を読者諸氏と共有し、これから経験するトラブルを未然に防ぐことを目的としている。

 聞き手は、山本一郎氏。今回、失敗談をお話しいただいたのは、2017年に「スタイル・フリー」の代表取締役に就任した島田篤史氏だ。

山本一郎氏(左)、スタイル・フリー 島田篤史氏(右)

経験者ゼロで無謀なチャレンジ!

 スタイル・フリーは2007年に設立されたシステム開発会社だ。Web制作事業、SIer事業、メディア事業、マーケティング事業などを展開し、現在、東京、名古屋、大阪、福岡に拠点を構え、ベトナムでのオフショア開発なども手掛けている。

 「幅広く事業を展開していますが、メインはSES(システムエンジニアリングサービス)です。そのため、エンジニアの採用は大きな課題でした」(島田氏)

 SESは開発力を人月単位で提供するため、稼働エンジニアの数を増やすことでビジネスが拡大する。逆にいえば、エンジニアをいかに採用していくかが、ビジネス成長の大きな鍵を握っている。

 ソフトウェア開発業界の典型的な構図はこうだ。まず、大手の開発会社がエンドユーザー(システムを使う企業や団体)から大規模なシステム開発案件を受注する。そして全体設計を行い、実際の開発を二次請けの開発会社に委託する。委託された企業は社内メンバーで実装、メンバーが足りなければさらに下請けの会社に依頼するか、SESでエンジニアを補充する。

 マイナンバーや年金などの官公庁系の巨大システムや、大手銀行のシステム統合といった大規模プロジェクトでは、多くのSES事業者がサービスを提供していた。事実、マイナンバー導入前には「マイナンバー関連システムの開発も手掛けています」とうたうSES事業者が無数に存在していた。

 そうなると働く側のエンジニアは、どこのSES事業者に就職しても携わるプロジェクトは同じということになり、自ずと仕事内容「+α」の部分に会社選びの基準を見い出すことになる。

 「そこで先代の社長が、『他社との違いを打ち出そう』と自社オリジナルのゲーム開発に乗り出したんです。2013年ごろの話です」(島田氏)

 「これまたスゴい地雷原を進む決断をされたんですね」(山本氏)

 ゲームに限らず、自社オリジナルのソフトウェアやネットサービスの開発を目指すSES事業者は多い。エンジニアにとって「いつかは自社製品の開発に携われる」のは魅力的であるし、経営側にとってもメリットは多いからだ。

 島田氏によれば、同社が最初に開発に取り組んだのは、当時流行し始めていたソーシャルゲームで、内容は本格的なカードバトル型のゲームだった。

 「私も3年ぐらい前まで、ゲームプロダクトに関するビジネスに関わっていました。お話を聞くと、ずいぶんガッツリやろうとされていたんですね」(山本氏)

 「はい。ガッツリとやらかしちゃいました(苦笑)。何しろ開発費に5000万円かけたのに、売り上げはたったの10万円でしたから」(島田氏)

 「アイタタタ……。なぜ、そんなことに?」(山本氏)

 先代の社長が「やるぞ」と決めたものの、社内にゲーム開発の知見を持つ人材は皆無。そこで、ゲームのプランニングから開発まで一通りの経験がある人を新たに雇い入れ、ディレクションをその人に一任したそうだ。また、ゲーム開発経験のあるプログラマーも複数人採用したという。しかし、完成したものは、端から見ても「ショボ過ぎる」(島田氏)と感じるものだったそうだ。

 「でも、ソーシャルゲームって、リリースしたらすぐにはやめられませんよね?」(山本氏)

 「そうなんです。最低でも1年間はクローズできない。その間もゲームは動いていますから、当然運営費もかかります」(島田氏)

 これに懲りて自社オリジナルゲーム開発を諦めたり、やり方をダイナミックに変えていたりしていたら、本連載で採り上げるまでもない「ありがちな話」だ。

 だが同社は違った。

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