カーナビの要は使い勝手の良いアプリだ。よそには渡さん!コンサルは見た! オープンソースの掟(4)(2/2 ページ)

» 2018年06月28日 05時00分 公開
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プレミア電子の「作戦」

 同じころプレミア電子の社長室では、社長の武田とシステム企画部長の木村が、同じくliberty ITのニュースを見て、ひそひそと話をしていた。

takeda

「いよいよ、ダッシュが日本市場に進出か……」

 武田が下唇を噛んだ。

 「自社のカーナビを日本の自動車メーカーに売り込むために、社長自らが来日したようです」

 木村の顔もこわばっている。

 「わが社がシェアを独占していることが、日本の自動車メーカーや消費者にとって不幸だと? 随分と言ってくれるじゃないか」

 憤る武田をなだめるように、木村は話を続けた。

kimura

「しかし、今のままではダッシュは何もできません。何しろ彼らのカーナビに載っているアプリは、言語も操作性もドイツ仕様で、日本では使い物になりませんから」

 木村の答えに、武田はイラツキながら反論した。

 「だが、ダッシュが日本のカーナビソフト開発会社――つまりジェイなどと組んだらどうなる。何せウチのバルサは、使い勝手の良いボカで持っているようなものだ。ボカをダッシュに取られでもしたら、大変なことになる……。木村君、例の件、急いで進めてくれたまえ」

 武田の指示を聞いた木村は、有能な部下らしく「作戦」を再確認した。

 「承知しております、例の作戦ですね。わが社との契約が切れて資金繰りが悪化したジェイに資金援助という形で出資して、そのまま一気に取り込み、わが社の子会社にする……」

 「とにかく! ジェイの全てをわが社で囲い込んで、ダッシュに渡さないことだ。しかし時間があまりない。もっと一気にジェイを追い込めないか?」

 焦りを隠そうともしない武田に、木村はニヤリと微笑んで答えた。

 「ご心配なく。既に手を打っております」





「コンサルは見た!」Season3「オープンソースの掟」は、毎週木曜日掲載予定です


書籍

システムを「外注」するときに読む本

細川義洋著 ダイヤモンド社 2138円(税込み)

システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」が、大小70以上のトラブルプロジェクトを解決に導いた経験を総動員し、失敗の本質と原因を網羅した7つのストーリーから成功のポイントを導き出す。

※「コンサルは見た!」は、本書のWeb限定スピンアウトストーリーです

細川義洋

細川義洋

政府CIO補佐官。ITプロセスコンサルタント。元・東京地方裁判所民事調停委員・IT専門委員、東京高等裁判所IT専門委員

NECソフト(現NECソリューションイノベータ)にて金融機関の勘定系システム開発など多くのITプロジェクトに携わる。その後、日本アイ・ビー・エムにて、システム開発・運用の品質向上を中心に、多くのITベンダーと発注者企業に対するプロセス改善とプロジェクトマネジメントのコンサルティング業務を担当。独立後は、プロセス改善やIT紛争の防止に向けたコンサルティングを行う一方、ITトラブルが法的紛争となった事件の和解調停や裁判の補助を担当する。これまで関わったプロジェクトは70以上。調停委員時代、トラブルを裁判に発展させず解決に導いた確率は9割を超える。システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」。2016年より政府CIO補佐官に抜てきされ、政府系機関システムのアドバイザー業務に携わる

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