温故知新のマーケティング技術、「CDP」の新しさとはGartner Insights Pickup(72)

「顧客データプラットフォーム(CDP:Customer Data Platform)」は最新のマーケティング技術だ。マーケッターがこの有望な技術を最大限に活用するには、その多様な機能を実践的に理解する必要がある。まず、CDPの全体像を把握したい。

» 2018年08月17日 05時00分 公開
[Chris Pemberton, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 「顧客データプラットフォーム(CDP:Customer Data Platform)」は最新のマーケティング技術だ。マーケッターがこの有望な技術を最大限に活用するには、その多様な機能を実践的に理解する必要がある。

 マーケティングリーダーを対象としたGartnerの調査「Gartner CMO Spend Survey 2017-2018」によると、回答者は予算の3分の2を顧客の維持拡大のために投じている。極めて多くの顧客がスマートフォンやタブレット、ゲーム機、デスクトップPC、ノートPCといったデバイスを複数使っているため、多くのマーケッターが統合された顧客ビューを得ようと懸命だ。

 こうしたマーケッターは、生の顧客データを効率的に収集、管理、活用する効果的な方法を求めている。だが、統合された単一の顧客ビューに対するマーケッターの期待は、ないものねだりになりやすい。「顧客データプラットフォーム(CDP)」をうたう技術システムも、まだ標準的な機能が定まっていない。

 「顧客データプラットフォームが自社のニーズに最適かどうかを見極める必要がある。宣伝をうのみにしてはならない。自社のニーズを踏まえ、他の関連技術との機能的な重複を考慮してCDPを評価すると、当初の候補とは異なるシステムの方が優れたソリューションであることが分かって驚くかもしれない」と、Gartnerのリサーチディレクターを務めるリジー・フー・クーン氏は語る。

CDPとは、どんな製品を意味するのか

 CDPは、マーケティングなどのチャネルから得た顧客データを統合し、顧客モデリングを行い、メッセージや提案を配信するタイミングやターゲットを最適化するマーケティングシステムだ。

 CDP製品は、さまざまな成熟市場の製品――例えば、マルチチャネルキャンペーン管理やタグ管理、データ統合などが進化したものが多い。また、マーケティングテクノロジー投資の盛り上がりに乗じて、特定の目的に特化したCDP専用製品も登場している。CDPは新しい技術というよりも、既存機能をパッケージングし直したものと理解できる。これらの既存機能は、提供方法に難があったためにさまざまな製品であまり利用されてこなかった。

 CDPの新しさは、こうした機能をあらためて商品化していることと、マーケッターが顧客データと技術の両方に対するこれまでの膨大な投資から、価値を引き出すことに依然として苦労していることを認めていることにある。

 こうした中、GartnerはCDPを「マーケッターにとって使いやすいWebベースのインタフェースを備え、データ収集、プロファイル統合、セグメンテーション、アクティベーションが可能なテクノロジー製品」と定義している。

データ収集機能

 CDPに欠かせない中心的機能は、多くのソースからリアルタイムに個人レベルの生の顧客データをストレージの制限なく取り込む機能だ。データは、処理に必要な間だけ存在する。CDPのデータ収集では、一次識別子(電子メールやデバイスのIDなど)や属性(人口統計情報など)のデータも集める必要がある。

プロファイル統合機能

 CDPでは、個々人についてプロファイルを集約し、属性とIDの関連付けを行えることが重要だ。この作業では、データの対象者が特定されたら個人ごとに複数のデバイスをひも付けるとともに、顧客レコードの重複排除を行う必要がある。

セグメンテーション機能

 少なくとも、CDPはルールベースの顧客セグメントを作成、管理できなければならない。高度なセグメンテーション機能――例えば、セグメントの自動検知、傾向モデルといった機能を提供するCDPもある。

アクティベーション機能

 CDPはセグメント(とセグメントに関する作業指示)を、電子メールキャンペーンやモバイルメッセージング、広告、その他のキャンペーンやチャネルアクティビティを実行するための特定のツールに送信できなければならない。マーケッターは、顧客に直接働き掛けるこうしたツールをまだ必要としている。CDPは、次善の提案、クリエイティブの動的最適化、テスト、自己最適化といったアクティベーション機能を提供するものもある。

企業はCDPをどう考えるべきか

 企業が今行うべきことは、自社のマーケティングプログラムの目標を踏まえ、マーケッターにとって使いやすいデータアクセス機能や、統合された顧客ビューといったCDPの機能の中で最も有益なものを特定し、CDPを導入した場合、自社のITシステムがこうした目標の達成にどれだけ役立つかを評価することだ。

 自社の顧客データ管理および分析のエコシステムも評価する。自社マーケティングの非効率の根本原因を、CDPの主要機能であるデータ収集、プロファイル統合、セグメンテーション、アクティベーションの観点から分析する。自社の既存の技術およびシステムとこうしたCDPを検討し、個々の非効率の解決策を見いだす。

出典:The Marketer’s Guide to Customer Data Platforms(Smarter with Gartner)

筆者 Chris Pemberton

Writer and marketing strategist


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