デジタルビジネス推進の障壁は3つ、ガートナーが調査社長を説得できる人材が不足

ガートナー ジャパンの調査によれば、日本企業にとってデジタルビジネスを推進する際の最大の障壁は「人材不足」「技術力不足」「予算不足」だという。デジタルビジネス推進に抵抗するのはまず経営トップ、次いで財務・経理部門、業務部門だった。

» 2018年08月21日 08時00分 公開
[ITmedia]

 ガートナー ジャパンは2018年8月20日、企業の情報システムのソーシング担当者を対象としたデジタルビジネス推進に関するWeb調査の結果を発表した。

 それによると、日本企業にとってデジタルビジネスを推進する際の最大の障壁は「人材不足」で、「技術力」と「予算」の適切な確保も課題であることが分かった。また「経営トップの意識」や「企業文化が保守的」「社員の勉強不足」「経営幹部のリーダーシップの不足」といった回答も多かった。逆にサイロ型組織(縄張り意識)や他部門の反対という回答は比較的少なかった。

デジタルビジネス推進の障壁(n=412、複数回答可)(出典:ガートナー)

 ガートナーでリサーチ&アドバイザリ部門のバイスプレジデントを務める松本良之氏は、今回の結果について次のように語っている。

 「日本で人材不足は、IT分野に限らず日本経済の課題として取り上げられている。デジタルビジネスで必要とされる人材は、企業の働き方や文化の改革を推進する能力を持った人材であり、要求される能力も極めて高い。今回の調査でも、日本企業でデジタルビジネスを推進するための人材の確保は困難であることが示された」

 ガートナーは、日本企業の技術力不足には理由があると分析。日本経済の低迷が原因で、企業のIT投資が長期間抑制されていたことが影響しているという。大規模ITプロジェクトを企画から経験した人材は日本企業には少ない。それに加えて高齢化や採用の凍結、アウトソーシング指向の高まりなども重なり、日本企業には限られたIT経験しか持たない人材が増えているとしている。

 予算については、新しく企画したり提案したりする能力が欠如していることが背景にあると、ガートナーでは見ている。経営陣がデジタルビジネスに投資する意向を持っていたとしても、IT部門のこれまでの業務ではそのような能力が重視されていなかった。IT部門の業務が保守運用やコスト削減中心だったことが原因だ。

抵抗勢力トップは「社長」

 今回の調査では、デジタルビジネスを推進する際の抵抗勢力についても調べた。「抵抗勢力がある」と回答した割合は全体の39%で、部門別で最も多かった回答は「経営トップ」、次いで「財務・経理部門」「業務部門」「営業部門」だった。

デジタルビジネス推進における抵抗勢力(n=92、複数回答可) (出典:ガートナー)

 この点について松本氏は、「デジタルビジネスの推進には抵抗勢力が存在する。今回の調査結果では、IT部門が直面する抵抗勢力の筆頭が社長だと判明した。デジタルビジネスを成功させるために、IT部門は経営/役員層を関与させて、経営サイドを巻き込める環境の構築を目指すことが肝要だ。そのためには、CIO(最高情報責任者)やIT部門のリーダーが経営層を納得させるビジネス知識や交渉能力を持ち、社長との信頼関係を構築する必要がある。社内の抵抗勢力とどう折り合いをつけていくのかが、今後のデジタルビジネス推進の課題だ」としている。

 ガートナーのリサーチ&アドバイザリ部門でバイスプレジデント兼最上級アナリストを務める足立祐子氏は、今回の結果について、「IT人材の不足が、日本企業でデジタルビジネスの推進を妨げる最大要因であることは、想定範囲内だ。しかし、単に人数が不足しているだけでなく、最新の技術を使いこなせる人材や、企画能力に長けた人材、経営層など社内外のステークホルダーと交渉できる人材など、役割に応じたさまざまなタイプの人材と能力の不足が、問題の根を深くしている。この難局を乗り切るためには、IT人材の採用や育成の強化だけでなく、ソーシングと調達能力の向上、IT戦略と予算の考え方や見せ方の変更、CIO個人のリーダーシップの強化など、多角的に切り込むことが重要だ」と述べている。

 なお今回のWeb調査は、日本全国のITユーザー企業で、ITシステムの構築や導入、保守、運用、サービス委託先の選定に関与している担当者を対象に、2018年5月に実施した。有効回答数は412件だった。

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