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» 2018年08月27日 05時00分 公開

ワタシハ人間デス:「火の鳥」の「ロビタ」を、2018年のテクノロジーで解説しよう (4/5)

[米持幸寿(Honda Research Institute Japan),@IT]

ヤマトの「ハレルヤ」、レングードの「聖母ダニューバー」

 その後話はAD3704に飛び、未来編に突入する。

 人類が滅びかかっている未来、世界には5つの都市が残っている。物語には「ヤマト」と「レングード」の2つの都市が登場し、それぞれ「ハレルヤ」と「聖母ダニューバー」という「人工頭脳」に支配されている。人工頭脳と表現されているが、見たところ「巨大コンピュータ」である。

「コンピュータに支配される社会」という不信感

 都市の幹部や政治家たちは、都市を管理する人工頭脳の指示を絶対に守らなければいけない。まるで「崇拝」しているようだ。そして、人工頭脳が決定した戦争によって、全ての人類が滅亡する。

 ここに書かれているのは、「コンピュータに支配される社会」という「不信感」である。これは、現代にも通じるものである。

 しかし、現代のAIはそこまで賢くない。物事を幅広く理解し、さまざまなことを考慮して全体像を把握した上で判断を行えるようなAIはまだ存在しないだろう。

 今日、何かの決定をAIを活用して行っている場合でも、AIは何かの判断装置として「全体の仕組みの中の一部」に活用されているのにすぎないことが多い。すなわち単なる「道具」である。定規みたいなものだ。レコメンデーションや占いのような正解が曖昧なものは、乱数発生装置やサイコロの代わりにAIを使っているにすぎない。

 もちろん、人工ニューラルネットワークを活用した単一機能の道具を、さらにネットワークとしてつなぎ合わせていくと、より複雑な判断をする高度な道具に発展する可能性は否定できない。それらをどんどんつなぎ合わせていけば、いつかは人のように物を考えるような装置へ発展するかもしれない。

 あるいは、現在のような人工ニューラルネットワークだけでは、いずれ何らかの限界を迎え、そこまで発展できないかもしれない。

ハレルヤや聖母ダニューバーの描写には、コンピュータに対する不信感が現れている。しかし、現代のAIにはそこまでの機能はない。

異なる判断をする、巨大コンピュータたち

 物語の中盤、ヤマトのハレルヤとレングードの聖母ダニューバーは、脱走した山之辺の扱いを巡って対立する。

 ハレルヤは無形生物であるムーピーを毛嫌いし、ムーピーの1個体であるタマミをかくまっている山之辺を抹殺しようとする。一方、ダニューバーはヤマトから逃げ出した山之辺をかくまおうとし、結果として双方は戦争を選択する。人工頭脳が、個々で違う結果を導き出す。これは現代のコンピュータやAIでも起こり得ることである。

 「山之辺の処遇をどうするかの判断」のような処理は、「最適化問題」と捉えられよう。山之辺の処遇は「中間変数」のようなものだ。都市にはさまざまな「状況」があり、山之辺とタマミの存在はその一つといえる。

 タマミを生かすか殺すかで、その後のさまざまが変化するだろう。そうした事柄を総合して、後々の結果を予測していくことが、最適化システムの役割と考えられる。

 この場合、ヤマトの状況とレングードの状況、そしてハレルヤに与えられた「目的変数」(何を最適化するか)とダニューバーに与えられた目的変数に違いがあれば、山之辺の処遇をどうするか意見が別れるのは当然のことだろう。

都市の最適化問題において、さまざまな状況と最適化目的変数が違うため、ハレルヤとダニューバーの意見は違うものとなった。

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