WSUSによるWindows 10の機能更新プログラムの配布[前編]企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(32)(2/2 ページ)

» 2018年09月13日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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WSUSによるアップグレードは、パイロット展開後に全社展開が基本

 企業では、Windows 10のアップグレードをWindows 10が標準で備える「Windows Update for Business(WUfB)」ポリシーによる延期設定、Windows Server 2012以降の「Windows Server Update Services(WSUS)」、その他のソフトウェア配布ソリューション(Microsoftの「System Center Configuration Manager」やサードパーティー製品)などで行えます。

 なお、WUfBを利用する場合、遅延設定で機能更新プログラムのインストールを延期可能な日数には、半期チャネル向けの配布開始から最大で365日という制限があることに注意してください。

 どの方法を利用する場合でも、一部のクライアントに限定してパイロット展開し、アップグレードの成功の有無やアプリやデバイスとの互換性問題を検証した上で、全社展開するのが基本です。

 Windows Server 2012以降のWSUSの更新管理環境が既に構築済みであれば、それを使用して機能更新プログラムをWSUSクライアントに配布し、Windows 10の新バージョンにアップグレードできます。対象の限定は、WSUSクライアントをコンピュータグループで分けることで対応できます。WSUSの「製品と分類」オプションで「Upgrades」という分類を選択してMicrosoft Updateと同期することで、機能更新プログラムを配布できるようになります(画面1)。

画面1 画面1 「製品と分類」オプションで「Upgrades」分類を選択すると、機能更新プログラムをMicrosoft Updateと同期するようになる

 本稿執筆時点(2018年9月)では、Windows 10 バージョン1709以降では次に示す機能更新プログラムが利用可能です(画面2)。

  • Windows 10(ビジネスエディション)、バージョン1709、<言語(ja-jpなど)>の機能更新プログラム
  • Windows 10(コンシューマーエディション)、バージョン1709、<言語(ja-jpなど)>の機能更新プログラム
  • Windows 10(ビジネスエディション)、バージョン1803、<言語(ja-jpなど)>の機能更新プログラム
  • Windows 10(コンシューマーエディション)、バージョン1803、<言語(ja-jpなど)>の機能更新プログラム

画面2 画面2 2018年1月以降の機能更新プログラムの種類(ビジネス/コンシューマー)とバージョン1803からの提供時期の変更点に注意

 機能更新プログラムは言語ごとに用意されており、32bit(x86)と64bit(x64)の両方に対応しています。以前はエディションごとに用意されていましたが、2018年1月以降(バージョン1709)以降は、「ビジネスエディション」と「コンシューマーエディション」の2つで提供されるようになりました。

 ビジネスエディションは、ボリュームライセンス製品のEnterprise、Education、Pro、Pro Education、Pro for Workstations、およびこれらのNバージョン(欧州向け)をアップグレードできます。コンシューマーエディションは、リテール製品のProとEducationエディションをアップグレードできます(HomeエディションはWSUSのサポート対象外です)。

 Windows 10 バージョン1803以降では、機能更新プログラムがWSUSに同期される時期についても注意が必要です。Windows 10 バージョン1709以前は、一般向けリリースから数カ月遅れて、WUfBポリシーの「半期チャネル」(Windows 10 バージョン1703以前の「Current Branch for Business」向けの配信が開始されると、WSUSにも機能更新プログラムが同期されました。

 Windows 10 バージョン1803からは、一般向けリリースと同時(バージョン1803は米国時間で2018年4月30日)にWSUSに機能更新プログラムが提供されます。さらに、WUfBポリシーの「半期チャネル」向けの配信開始と同じタイミング(バージョン1803は米国時間で2018年7月10日)で、更新されたビルドのインストールイメージ(.esd)で作成された機能更新プログラムが再リリースされるようになりました。この変更は、公式ブログのアナウンスが反映されたものです。

 Windows 10 バージョン1803の機能更新プログラムのリリース日は、米国時間で「2018年4月30日」と「2018年7月10日」に2回リリースされています(日本語版のWSUSの日付は日本時間)。どちらもWSUSで配布可能ですが、新しい機能更新プログラムの方が不具合が修正されたビルドですので、そちらを承認して配布してください。

 機能更新プログラムはリリース日で判断できますし、ビルド情報はそれぞれの機能更新プログラムの「ファイル情報」を開くと、配布用インストールイメージ(.esd)のファイル名から判断できます(画面3)。

画面3 画面3 Windows 10 バージョン1803の機能更新プログラムの初回リリースはビルド17134.1、2回目のリリースはビルド17134.112(2018年6月の品質更新プログラム相当)

 次回は、Windows 10 Enterprise バージョン1607のWSUSクライアントを対象に、Windows 10 バージョン1803の機能更新プログラム(17134.112)を承認して、WSUSクライアントがそれを検出、インストールし、アップグレードが完了するまでをレポートします。

 先に言っておくと、ダウンロードは数分で完了しましたが、アップグレード完了までに5時間ほどかかりました。バックグラウンドでアップグレードインストールが進む間、応答性が悪くなることが何度かありました。

 エンドユーザーへの影響を避けるためには、夜間に開始するなどの検討が必要でしょう。複数台の場合はネットワーク帯域が占有され、さらに時間がかかるかもしれません。WSUSの要件や更新の制御、ネットワークの考慮事項などは、以下のMicrosoft公式ブログのまとめが参考になると思います。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。


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