「虹彩」を用いた生体認証技術、スワローインキュベートがSDKを提供経年変化が少なく、多様な環境で使いやすい

スワローインキュベートは「虹彩認証SDK」の提供を開始した。虹彩認証の欠点をカバーでき、ユーザー独自のアプリケーションに取り込みやすい。

» 2018年10月03日 14時00分 公開
[@IT]

 スワローインキュベートは2018年10月2日、「虹彩認証SDK」の提供を開始すると発表した。同社によれば虹彩認証について国産初のSDKであるという。

 従来、虹彩認証の欠点とされてきた測定条件に依存しやすい点を、パナソニックの特許を活用して解決したことが同SDKの特徴だという。データの登録から測定、認証に至る全ての機能をSDKが提供するため、ユーザーがアプリケーションを構築しやすいとした。

 虹彩の大きさは周囲の照度に応じて変化するため、照度条件が異なる撮影環境での認証精度の向上が、虹彩認証では課題となっていた。スワローインキュベートは、パナソニックの特許を活用した「瞳孔径マルチテンプレート」方式を採用することで、照度条件が異なる撮影環境での認証精度を向上させた。

 虹彩認証では、あらかじめ専用カメラで撮影した写真から2048bitの「虹彩コード」を生成してデータベースに格納しておき、認証時に撮影した写真の虹彩コードと比較する。

 虹彩認証SDKが採用した瞳孔径マルチテンプレート方式は、あらかじめ「瞳孔径・虹彩径比」の異なる複数の虹彩コードを登録しておくことで、照度条件に応じて瞳孔径や虹彩径が変化しても、FRR(本人拒否率)を低く抑える。また、瞳孔径・虹彩径比を分類してデータベースに格納するので、認証時に必要なデータベース参照を効率化でき、1秒未満で認証できるという。

 虹彩認証SDKを利用したアプリケーションでは、登録フェーズと認証フェーズの2段階で認証を実行する。登録フェーズでは目の画像を撮影後、画像から虹彩部分を抽出し、これを2値化して虹彩コードを生成、データベースに登録する。認証フェーズでは虹彩コードの生成までは登録フェーズと同じ動作だ。その後、瞳孔径・虹彩径比が近似している虹彩コードを抽出し、抽出した虹彩コードと測定した虹彩コードのハミング距離(データ中の異なる部分の数)を算出して、認証する。

 さらに、同SDKにはカメラ制御の他、虹彩部分の反射光除去、まぶた領域除去といった測定環境によって左右されやすいノイズを除去する機能も含まれている。

 虹彩認証SDKの対応OSは、macOS(10.11以降)、Linux(64bitのカーネル4.9以降、glibc 2.12以降)、Windows(64bitのWindows7以降)。C++の動的リンクライブラリ(DLL)として提供し、OpenCV 3.4.2、SQLite 3、gcc(4.8以降)、cmakeを利用する。コンソール版サンプルアプリケーションとサンプルデータベースも付属する。

 開発版ライセンスの価格は、1年当たり70万円(税別、以下同)。商用版ライセンスの価格は個別に見積もる。なお、虹彩認証を利用するには専用の虹彩撮影用カメラが必要で、開発向けにはスワローインキュベートが有料(6万円/年)でレンタルする。

虹彩認証の利点は?

 虹彩は瞳の周辺部分にあるドーナツ形の部分であり、網膜に向かう光量を調節する役割を担う器官。カメラの「絞り」に当たる。目の色を話題にするときの対象となる部分だ。

 虹彩の模様は指紋などと同様に人それぞれで異なり、同じ人でも左右の目で違う。しかも満2歳以降は一生変化しないといわれている。虹彩認証は、この虹彩模様の違いを基に個人を判別する生体認証技術。

 一般的な生体認証である指紋認証や静脈認証、顔認証と比較した優位性は大きく2つある。一つは手袋やマスクを着用する環境でも認証に問題が生じないこと。もう一つはセキュリティの高さを表す指標であるFAR(他人受入率)が120万分の1と低いこと。同社によれば、他の3技術と比較して、最もFARが低いという。

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