ハイパーコンバージドインフラを将来にわたって活用するための4つのポイントGartner Insights Pickup(81)

ハイパーコンバージドインフラ(HCI)は、オンプレミスインフラの柔軟化、アジャイル化の推進に貢献する。I&Oリーダーが今、HCIを今後にわたり活用するための4つのポイントをまとめた。

» 2018年10月19日 05時00分 公開
[Christy Pettey, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 ハイパーコンバージド製品の中核機能は、ここ5年間の急速な進化を経て標準化されつつある。ベンダーはそうした中で差別化を進めるため、運用の簡素化に向けたネットワークの自動化や人工知能(AI)など、新しい機能を導入し始めている。また、ハイブリッドクラウドのデプロイやエッジコンピューティングといった新しいユースケースを開拓している。

 Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるアルン・チャンドラセカラン氏によると、こうした新たな流れを踏まえてハイパーコンバージドインフラ(HCI)を活用するには、4つの重要なポイントがある。ITインフラ&オペレーション(I&O)の担当リーダーは、これらのポイントを押さえてベンダーを選択することで、HCIの潜在的なユースケースを広げ、投資を将来にわたって保護しなければならない。

ポイント1:ハイブリッドクラウド機能に強いHCIベンダーを優先的に選定する

 ハイブリッドワークロードがますます増えている。企業が耐障害性やアジリティの向上、総所有コスト(TCO)の低減を目指し、クラウドのIaaS(Infrastructure as a service)やPaaS(Platform as a Service)の利点を活用しているからだ。ほとんどの企業がワークロードポータビリティや冗長性の観点から、仮想インフラを機能的なハイブリッドクラウドに進化させ、パブリッククラウドのIaaSと統合したいと考えている。

 HCIベンダーが製品に追加してきたクラウド管理機能は、クラウド管理プラットフォームと比べると基本的なものに見えることがある。だが、ベンダーはパブリッククラウドプロバイダーと密接に提携し、よりクラウドに統合されたサービスを提供するようになっている。

 「これにより、顧客がレガシーおよびクラウドネイティブアプリケーションをハイブリッド環境にデプロイする際の難しさが緩和される可能性がある」と、チャンドラセカラン氏は見る。

 「I&Oリーダーは、ハイブリッドクラウド機能に強いHCIベンダーを優先的に選定しなければならない。この機能の評価は、ベンダーがサポートするクラウドプロバイダーの選択肢の広さや、オンデマンドの使用量に応じた従量料金、APIサポートの深さなど、広範なパラメーターで行う」(チャンドラセカラン氏)

ポイント2:エッジユースケースには堅牢(けんろう)で簡素なプラットフォームを選択する

 HCIは、運用のシンプルさとフォームファクタのおかげで、エッジコンピューティングの従来および新しいニーズに対処できる可能性がある。Gartnerは、今後2年間でハードウェアベンダーが、特に小売り、鉱業、製造業におけるエッジユースケースに対応するため、耐久性を高めたサーバプラットフォームでHCIをサポートするようになると予想している。

 I&Oリーダーは省スペースを効果的に実現し、コンピューティングの新しい抽象化(コンテナなど)にも対応できる簡素なハードウェアのサポートによって、TCOを低減できるHCIベンダーを選ばなければならない。

 デジタルビジネスニーズに対応できるだけの弾力性を備え、完全に仮想化されたHCIを使えば、高度なアナリティクスアプリケーションをエッジにデプロイできる。

 チャンドラセカラン氏は、例えば、鉱業では採掘現場でゲートウェイを使ってセンサーデータを集約し、マイクロデータセンターでホストされたHCIでこれらを分析できると語る。「このプロセスにより、採掘装置の予測メンテナンス、採掘プロセスの管理、人員の安全と緊急対応に向けた採掘場の耐震解析といった課題に対処できる」と、チャンドラセカラン氏は説明する。

 「エッジロケーションへのエンドポイントの追加に合わせて、HCIもノードの追加によってスケールアウトできる。従来の3層アーキテクチャの場合と比べて、HCIは、フォームファクタが小さいためにラックスペースを節約でき、消費電力も少なく冷却要件も低い。これらはいずれも、エッジコンピューティングインフラのアーキテクチャの設計上、重要な要素だ」(チャンドラセカラン氏)

ポイント3:ネットワーク自動化にこだわる

 HCIは、パフォーマンスと可用性の要件がますます高くなるアプリケーションをサポートするのに使われている。そこでHCIクラスタは通常、拡張が必要になり、ノード数は一握りよりもはるかに多くなる。そのため、ネットワーキングはクラスタ設計の不可欠な部分だ。ネットワーキングがシステムレベルで統合されていなければ、サービスレベル契約(SLA)の達成は難しく、トラブルシューティングや問題解決は非常に複雑になってしまう。

 「だが、HCIベンダーは最近まで、大抵の場合、ネットワーキングを単純な相互接続として扱い、このアプローチが問題解決やSLA順守の妨げになってきた。しかし、彼らもネットワークの統合はもはや無視できない上、適切に行えばネットワークコンポーネントが競争力のある資産にさえなることを理解するようになってきている」(チャンドラセカラン氏)

ポイント4:ベンダーから、リソースの最適化に役立つAIOps機能の提供を受ける

 混合ワークロードの複雑さが増し、ミッションクリティカルなアプリケーションが追加される中、ワークロードの最適な配置やワークロードニーズへのインフラの適応力、自己修復インフラが重要になる。多くのI&Oリーダーが、HCIをオンプレミスおよびマルチクラウドアーキテクチャとして評価するようになり、アプリケーション配置の選択肢が多様化するだろう。その結果として、AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations:AIを利用したIT運用)がリソースの総合的な最適化に役立つようになる。

 というのも、統合や接続の急速な増加に伴い、生データや分析、問題解決、修正の量も増加の一途をたどり、ほとんどのIT部門の対応力やノウハウの限界を超えてしまうからだ。

 「その解決策はAIにある。AIは、高品質なリアルタイムデータの提供、アルゴリズムやモデルの実行による異常の検出、これまでのインシデントの相関調査、根本原因分析に基づく修正の提案を行える。SLAを保護するプロアクティブなディシジョンツリーの一環として実行されるAIベースの分析および提案を、HCI管理者が利用できることが最も望ましい」(チャンドラセカラン氏)

出典:4 Factors Shape the Future of Hyperconverged Infrastructure(Smarter with Gartner)

筆者 Christy Pettey

Director, Public Relations


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