再考、Windows 10 Enterprise LTSC――LTSCで安定的な長期運用は可能か?企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(38)(1/2 ページ)

Windows 10のサービスモデルには、年に2回新バージョンがリリースされる「半期チャネル(SAC)」と2〜3年ごとに新バージョンが登場する「長期サービスチャネル(LTSC)」の2つがあります。LTSCはオフィスのクライアントPCを想定したものではありませんが、最新のWindows 10 Enterprise LTSC 2019のリリースを機に、あらためてその特徴や機能、制約を学びましょう。

» 2018年12月06日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

安定的な長期運用のため、あらためて注目されるLTSC

 Microsoftは企業のクライアントOSとして、Windows 10の「半期チャネル(Semi-Annual Channel:SAC)」で提供されるWindows 10 ProまたはEnterprise(特に、Enterpriseの方)の利用を推奨してします。

 SACは年に2回(春と秋)に新バージョンがリリースされ、各バージョンは原則として18カ月間、「品質更新プログラム」のサポートを受け取ることができます。最短(既定)で半年、延期したとしても1年半のサイクルでバージョンアップし続けることは、たとえバージョンアップのためのライセンスの追加コストが不要だったとしても、検証や展開作業の管理の負担増は企業のIT部門に重くのしかかるでしょう。

 SACのサービスモデルは2018年9月に見直され、EnterpriseとEducationエディションについては30カ月(バージョン1607〜1803は30カ月、バージョン1809以降は秋リリースについてのみ30カ月)にサポート期間が延長されました。これで、検証に半年かけたとしても、2年サイクルでバージョンアップしていくことが可能になりました。

 それでも、従来の10年(メインストリーム5年+延長サポート5年)という長いサポート期間中にシステムのアップグレードやリプレースを考えればよかった頃と比べると、サイクルが早過ぎると感じている企業は多いと思います。誰もが最先端のIT技術を必要としているわけではないのです。

 Windows 10のサービスモデルにはもう一つ、「長期サービスチャネル(Long Term Servicing Channel:LTSC)」があります。以前は「長期サービスブランチ(Long Term Servicing Branch:LTSB)」と呼ばれていたものです。こちらは、従来と同じ10年の長期サポートが提供されます。

 2018年10月にSACではWindows 10 October 2018 Update(バージョン1809)がリリースされましたが、同時にLTSCバージョンもリリースされました(いずれも11月中ごろに再リリース)。Windows 10のLTSCとしては、以下に示す3つ目のバージョン「Windows 10 Enterprise LTSC 2019」です(これは、以前にWindows 10 Enterprise 2018 LTSCと呼ばれていたものと同じです)。

  • Windows 10 Enterprise 2015 LTSB(Windows 10 初期リリースと同じビルド、10240.x)
  • Windows 10 Enterprise 2016 LTSB(Windows 10 バージョン1607と同じビルド、14393.x)
  • Windows 10 Enterprise LTSC 2019(Windows 10 バージョン1809と同じビルド、17763.x)

 Windows 10 Enterprise評価版のサイトでは現在、Windows 10 Enterprise バージョン1809またはWindows 10 Enterprise LTSC 2019の90日評価版を入手できます(画面1)。

画面1 画面1 Windows 10 Enterprise LTSC 2019評価版のデスクトップ。Microsoft Edge、Cortana、Microsoft Store、その他のビルトインUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリは利用できない(この画面は2018年10月初めに提供された評価版のもの。11月に再リリースされた評価版はビルド17763.107ベース)

 以下の公式ドキュメントによると、LTSCは、組織内のほとんど、または全てのクライアントPCに展開することは想定されておらず、「特定用途でのみ使用してください」という注意書きがあります。特定用途の例としては、医療機器、POS(販売時点情報管理)システム、ATMを制御するPCなどの専用システムが挙げられています。

 LTSCでは、「機能更新プログラム」で新機能が追加されることはありません。また、「Microsoft Edge」「Microsoftストアアプリ」「Cortanaアプリ」、その他のビルトインのUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリは提供されません。標準のWebブラウザは「Internet Explorer(IE)11」だけで、UWPアプリの実行環境が削除されているわけではなく、独自に開発したUWPアプリをサイドローディング方式で展開することは可能です。

 IE 11は事実上、開発が終了した製品であり、現在は不具合の修正やセキュリティ問題への対応のみが行われています。新しいWeb技術が登場し、それが主流になると、IE 11では参照できないサイトが増えてくると予想されます。Microsoft Edgeを追加することはできませんが、「Mozilla Firefox」や「Google Chrome」といったWebブラウザを使えば、多くの場合、回避できるはずです。

 Microsoftは、LTSCのWindows 10での「Microsoft Office」の利用は想定していません。この件に関しては、2018年2月に重要な発表が行われました。Office 365 ProPlusは、2020年1月14日をもって、LTSCのWindows 10をサポートしなくなります。2月の発表内容の一部は9月に変更されましたが、LTSCのWindows 10に関しては変更されませんでした。

 なお、ボリュームライセンスで提供されるOffice 2019(新機能が追加されない製品)については、Windows 10 Enterprise LTSC 2019(発表時には2018と記述されています)がサポートされます。ただし、Office 2019のサポート期間は従来の10年から7年(メインストリーム5年+延長サポート2年)に短縮されました。

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