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» 2018年12月10日 12時00分 公開

混雑原因を数分で発見 混雑予測シミュレーション分析の新技術――富士通研究所と早稲田大学が共同開発

富士通研究所と早稲田大学理工学術院が、人間行動シミュレーションの結果から混雑原因を短時間で発見する技術を共同開発した。空港の混雑緩和施策の分析では、従来手法の約4倍の混雑原因を発見できた。富士通研究所の都市監視サービスと連携させたソリューションとして実用化を目指す。

[金澤雅子,ITmedia]

 富士通研究所と早稲田大学理工学術院の高橋研究室(高橋真吾教授)は2018年12月7日、人間行動シミュレーションの結果から混雑につながる原因を自動で分析する技術を開発したと発表した。

 人々の行動をエージェント(自律的な行動主体)としてモデル化する人間行動シミュレーションは、現在、緊急時の避難行動の予測や都市計画時の人の動線確認などに活用されている。

 その一つである混雑予測のシミュレーションでは、数千〜数万のエージェントがそれぞれ年齢、性別、来場目的などの多くの属性を持ち、案内板などから経路や混雑の情報を認知しながら目的地と経路を選択し、移動するといった行動をとることで、多様な混雑を生み出す状況をシミュレートする。ただし、混雑原因を分析して対策を導き出すには、専門家が大量のシミュレーション結果を分析し、混雑原因と対策の仮説と検証を繰り返すため、数カ月かかることもある上、原因の見落としにより有効な施策を見つけられないこともあるなど、課題があるという。

 これに対して、今回開発された混雑原因の発見技術では、人間行動シミュレーションの結果から、混雑に関係するエージェントの特徴を網羅的に自動分析して混雑原因を発見する。数千〜数万のエージェントのそれぞれがとった行動や経路の結果を一つ一つの項目として羅列せずに、ある程度共通する項目でグルーピングし、少数の項目を組み合わせてエージェントの特徴を表現することで、混雑に関わったエージェントの特徴を抽出しやすくする。これにより、さまざまな人の属性や行動パターンに合わせた混雑緩和対策が可能になるという。

 例えば、従来の手法では、食事をする、A地点で案内板を見るなど、数十以上の項目で表現されるエージェントの属性、認知、行動に関するデータを全て組み合わせてエージェントの特徴としていたため、膨大な組み合わせパターンが発生していた。

 新技術では、共通要素が含まれる項目を属性、認知、行動の観点からグルーピングした上で、グループごとにエージェントの特徴をクラスタリングすることで、組み合わせパターンを減少させ、エージェントを特徴付けやすくする。

Photo 属性、認知、行動の関係に基づく網羅的な混雑原因を発見

 これにより、ある部分で発生した混雑の原因を探りたい場合に、どのような属性の人々に対して、どのような認知や行動を変化させる施策が有効であるかといった、施策に直結する原因を網羅的に発見できるようになる。

 例えば、複合施設で起きた店舗Aと店舗Bの混雑の例では、店舗Aの混雑は認知に着目すると案内板の集客効果が原因であり、店舗Bの混雑は行動に着目するとレストラン利用客のまとまった来客が原因であると特定できる。従って、混雑解消には、店舗Aの混雑は利用者のもう1つの目的であるATMに誘導する案内板で集客を分散させる施策が有効であり、店舗Bの混雑にはスタッフを増員し、処理速度を上げる施策が有効と判断できるという。

Photo 新技術による店舗Aと店舗Bの混雑原因の発見と施策例

 富士通研究所では、効果を検証するため、2015年に開発した空港の混雑緩和施策の分析を目的とした人間行動シミュレーションに新技術を適用したところ、専門家による分析と比較して、約4倍の混雑原因を発見できたという。

 例えば、国際線の出発手続きでは、受託手荷物検査、チェックイン、保安検査、出国審査の4つの手続きを経て航空機に搭乗する。新技術の適用により、保安検査の混雑分析では、旅客が特定のチェックインカウンターで滞留することに起因して保安検査の突発的な混雑が生じることを今回新たに発見した。新技術によって発見された混雑原因に基づいて施策を導出したところ、専門家による分析結果から導出した施策に比べて、保安検査の待ち人数を6分の1に削減し、施策実施に必要な人員数を3分の2に抑える効果があることをシミュレーション上で確認。さらに、分析時間が数カ月から数分へと大幅に短縮できたという。

Photo 空港内の混雑を予測する人間行動シミュレーション画面

 富士通研究所では、新技術を活用することで、インバウンドの増加、人口の都市集中による商業施設やイベント会場などの混雑に対する緩和策をいち早く検証でき、快適で安全な社会の実現に貢献すると説明。今後、イベント会場や空港、ショッピングモールなどでの混雑を対象に実証を進め、デジタルサイネージやテナント配置などの混雑緩和策の効果も併せて検証していく。

 また、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」とスーパーコンピュータ技術を活用して、都市の状況をリアルタイムに把握するスマート都市監視サービス「FUJITSU Technical Computing Solution GREENAGES Citywide Surveillance」との連携を通じて、混雑の将来予測ソリューションの早期提供を目指すという。

 早稲田大学では、混雑に限らず、人間行動を含む社会・市場・組織における複雑な現象を分析し、問題解決を図るためのシミュレーション技法の確立を目指すとしている。

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