Windows 10のIME、郵便番号辞書の更新はどうなっている?山市良のうぃんどうず日記(142)

平成最後の師走となりました。年賀状作成の時期でもあります。最近は年賀状を出す人が減ったようですが、年賀状の文面や宛名書きのために、この時期だけ自宅のPCとカラープリンタが大活躍、という人もいると思います。宛名書きで重要なことと言えば「郵便番号」です。Windows 10標準の「Microsoft IME」には郵便番号辞書が付属していますが、この辞書の更新はどうなっているのでしょうか?

» 2018年12月10日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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Windows 10のIMEの郵便番号辞書はいつの辞書?

 Windowsには日本語入力システムとして「Microsoft IME」が搭載されており、これには「郵便番号辞書」が付属しています。これにより、郵便番号を文字入力して日本語変換すれば、対応する住所に素早く変換できて便利です(画面1)。

画面1 画面1 Microsoft IMEの郵便番号辞書のおかげで、郵便番号から対応する住所を素早く変換できる

 Windows 7やWindows 8.1に同梱されるMicrosoft IMEのシステム辞書は、Windows Updateを通じて自動(または推奨やオプション)で何度か更新されてきました。Windows 10でもそうだと思っているかもしれませんが、少し状況が異なります。

 以下の画面2を見てください。これは、米国時間2018年10月2日にリリースされ、その後、11月13日に再リリースされたWindows 10 October 2018 Update(バージョン1809)の郵便番号辞書の情報です。

画面2 画面2 最新のWindows 10 バージョン1809のMicrosoft IMEの郵便番号辞書は1年ほど前の郵便番号データに基づいたもの

 日本郵便から公開された「平成29年(2017年)11月30日更新版」の郵便番号データを基に作成されているそうです。ちなみに、本稿を執筆している11月末現在、日本郵便が公開している最新のデータは「2018年10月31日更新版」となっているので、最新のWindows 10でも最新の郵便番号データを利用できるわけではありません。

 次の画面3を見てください。こちらは、Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607)と同じOSビルドである長期サービスチャネル版「Windows 10 Enterprise 2016 LTSB」の郵便番号辞書の情報です。「平成27年(2015年)8月31日更新版」のデータを基に作成されたものでした。

画面3 画面3 Windows 10 Enterprise 2016 LTSB(バージョン1607)の郵便番号辞書の情報。3年以上前の郵便番号データに基づいたもの

 気になったので、Windows 10 バージョン1607以降の各バージョンで、2018年11月の品質更新プログラムまで更新された状態の郵便番号辞書を確認してみました。その結果が次の表になります。

Windows 10のバージョン 郵便番号辞書データ
Windows 10 バージョン1607(Anniversary Update) 平成27年8月31日更新版のデータ
Windows 10 バージョン1703(Creators Update) 平成28年9月30日更新版のデータ
Windows 10 バージョン1709(Fall Creators Update) 平成29年5月31日更新版のデータ
Windows 10 バージョン1803(April 2018 Update) 平成29年11月30日更新版のデータ
Windows 10 バージョン1809(October 2018 Update) 平成29年11月30日更新版のデータ

 この結果を見る限り、Windows 10の各バージョンにリリース時に付属していた郵便番号辞書は、そのバージョンに対するその後の品質更新プログラムで新しいものに更新されることはないように見えます。機能更新プログラムでアップグレードされるときに、アップグレード先のWindows 10に付属する新しい郵便番号辞書が利用可能になるという状況が続いています。

 10年の長期サポートが提供されるWindows 10 Enterprise 2016 LTSBは「2026年10月13日」までサポートされますが(メインストリームサポートは2021年10月12日まで)、果たして、今後、郵便番号辞書が更新されることはあるのでしょうか。

 メインストリームサポート期間中にもかかわらず更新されないとしたら、あまりにも不親切な気がしてなりません。同じOSビルドのWindows Server 2016も同様の状況にあります。特に、「リモートデスクトップサービス(RDS)」のユーザーセッションの日本語環境に影響があります。

 平成の大合併(2005年ごろピーク)のときは違って、郵便番号辞書が古くても、大合併後のデータなら大きな影響はないのかもしれません。しかしながら、もし自宅の住所が郵便番号から変換できないなら話は別です。その場合は、ユーザー辞書の方に単語として登録しておくとよいでしょう。

 ちなみに、Microsoft IMEの競合製品であるジャストシステムの「ATOK 2016/2017/Tech Ver.31 for Windows」には、2018年11月29日に最新の「平成30年10月31日更新版」の郵便番号データから作成された郵便番号辞書が提供されました。

Windows 7やWindows 8.1の郵便番号辞書は?

 製品サポート期間中であるWindows 7/8.1のMicrosoft IMEの郵便番号辞書はどうなっているのか、確認してみました(画面4)。

画面4 画面4 Windows 7/8.1のMicrosoft IMEの郵便番号辞書は、「平成26年9月30日」の郵便番号データに基づくもの

 筆者が確認した範囲では、以下の更新プログラムで更新される辞書が最新版のようです。どちらも、日本郵便から公開された「平成26年(2014年)9月30日更新版」の郵便番号データを基に作成された辞書でした。

 Windowsでは標準搭載されるMicrosoft IMEとは別に、Microsoft Office製品に同梱される「Microsoft Office IME」もありました。Office 2013以降はMicrosoft Office IMEが同梱されなくなったため、Microsoft Office IME 2010が最後のバージョンとなりました。

 Microsoft Office IME 2010に付属する郵便番号辞書は、以下の公式ブログによると2016年10月時点で「平成25年(2013年)9月30日更新版」の郵便番号データを基に作成されたものです(既にダウンロード提供終了)。

 Office 2010はメインストリームサポートが既に終了しているため(延長サポートは2020年10月13日まで提供)、郵便番号を含む辞書の更新予定はないそうです。つまり、可能な限り最新の郵便番号辞書を利用したいなら、Microsoft Office IMEではなく、Windowsに搭載されているMicrosoft IMEを使った方がよいということになります。

 なお、「郵便番号変換ウィザード」というExcelアドインがMicrosoftから提供されていましたが(Excel 2000-2007用はMicrosoftダウンロードセンターから入手可能、Excel 2010用は配布停止)、こちらはExcel 2010以前を対象としたもので、Microsoft Office IMEの郵便番号辞書に依存するものでした。

 最新のOffice環境でこのアドインを利用してみようなんて思い付いても、やめておいた方がよいですよ。もし、インターネット上にExcel 2010用のアドインを見つけたとしても、入手元を信頼できるはずもありませんし、レガシーなWindows/Office環境でない限り、まともに動くかどうかも分かりません。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。


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