SD-WANの2020年はどうなる? 「米国でもハイブリッドWAN時代は終わり」Versa Networksの共同創業者兼開発責任者に聞いた(1/2 ページ)

日本と異なり、米国ではSD-WANの普及が主に「ハイブリッドWAN」ニーズによって進んできたとされる。だが、Cisco SystemsやVersa Networksは、米国でもハイブリッドWANはもはや主なSD-WANの推進要因ではないと言う。Versa Networksの共同創業者の一人であるクマール・メータ氏に、主に米国でのSD-WANの市場動向と同社の対応を聞いた。

» 2020年01月10日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

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 日本と異なり、米国ではSD-WANの普及が主に「ハイブリッドWAN」ニーズによって進んできたとされる。ハイブリッドWANとは、専用線とブロードバンド回線の価格差が大きいため、社内のビデオ会議やインターネットアクセスなどのトラフィックを自動的にブロードバンド回線へ流すことを意味する。

 だが、ここにきて、Cisco SystemsやVersa Networksは、米国でもハイブリッドWANはもはや主なSD-WANの普及理由ではないと話すようになっている。そこでVersa Networksの共同創業者の一人で、CDO(最高開発責任者)であるクマール・メータ(Kumar Mehta)氏に、主に米国でのSD-WANの市場動向と同社の対応を聞いた。Versa Networksは、Silver Peak Systemsなどと並び、最有力なSD-WAN専業ベンダーの一社。

2020年、SD-WANのテーマはセキュリティとマルチクラウド接続

 米国におけるSD-WANの用途の変化をメータ氏に聞くと、同氏はローカルインターネットブレイクアウトに伴うセキュリティニーズの高まりと、マルチクラウド接続を挙げた。

Versa Networksの共同創業者/CDO(最高開発責任者)のクマール・メータ氏

 「ユーザー組織が2020年に進めようとしていることは大きく分けて2つある。(SD-WANの普及)当初はハイブリッドWANのみといっていい状況だった。しかし、企業の各拠点からの直接インターネット接続が大きく広がってきた。そこでセキュリティが非常に重要になってきた。また、アプリケーションやデータのパブリッククラウドへの移行が進むのに伴って、より多くのユーザー組織が、複数クラウドへのSD-WAN接続を、統合的な管理の下で行いたいと考えるようになってきた」

 「これらの次に来るのが、(小規模拠点における)WANルータ、LANスイッチ、ファイアウォール、LTE接続、Wi-Fiアクセスポイントなどの統合ニーズ。さらに2020年以降顕在化してきそうなニーズは、『インテントベースドネットワーキング』とも呼べる、設定を抽象化する機能、さらにその次には、機械学習に基づき、ユーザーエクスペリエンスを最適化するよう、セキュリティおよびWANを自動制御する機能が求められるようになるだろう」

 これらは、優先度の差こそあれ、Versaだけでなく多くのSD-WANベンダーが取り組んでいくテーマと言えそうだ。

マルチクラウドが、WANの統合管理ニーズを高める

 パブリッククラウド接続に関しては、支社/支店からの本社を経由しない直接接続が、米国では当たり前のようになっているとメータ氏は言う。これには国土が広いなどの米国の地理的な要因も影響していると考えられる。

 クラウドへのSD-WAN接続は、必ずしも各拠点からパブリッククラウド上の自社VPCまでをインターネットVPCでつなげる必要はない。Equinixなどのクラウドエクスチェンジサービスを使うと、自社拠点からEquinixまではインターネットVPN、EquinixからクラウドのVPCまでは直接接続といった構成が可能だ。

 Versaの管理コンソールからはEquinixに直接WANエッジルータソフトウェアをインストールし起動できるようになっているという。なお、EquinixはAPIを通じ、複数のSD-WANベンダーなどと連携している。

 バブリッククラウド接続に関する新たな傾向は、ユーザー組織における複数クラウドの併用が広がってきていることにあるとメータ氏は話す。ユーザー組織の複数拠点が、それぞれ複数のクラウドとの間で通信を行うようになり、複雑化する。その統合管理が、SD-WANへの新たなニーズとして浮上しているという。

セキュリティに関する期待が高まる

 SD-WANベンダーは、セキュリティについて、さまざまなスタンスをとっている。まず、各拠点に置く装置(CPE)/ソフトウェアに搭載するのは基本的なファイアウォール機能などに留め、Zscalerなどのクラウドセキュリティサービスと連携するパターンがある。

 CiscoやVersaは自社でセキュリティも提供しようとしている。Ciscoは既存のブランチルータにSD-WAN機能を搭載できるようにした他、自社のクラウドセキュリティサービスを進化させ、SD-WAN製品との統合的な管理を実現しようとしている。Versaは(クラウドセキュリティではなく)自社のCPEに一通りのセキュリティ機能を搭載し、SD-WANと統合的に管理できることを訴求している。

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