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Webの3つの問題を解決する「HTML5」とは何なのかHTML5“とか”アプリ開発入門(1)(2/2 ページ)

最近よく目にする「HTML5」という言葉。JavaScriptのAPIやCSS3、SVGなどを含め、急速な広がりを見せつつある「HTML5」の基礎を学べる入門連載です。「HTML5を使うと、何ができるのか」「それを実現するには、どのようなプログラムを書いたらいいのか」をお届けします

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HTML5が解決する、Webの“3つ”の問題とは

 HTML5は、Webにとって計り知れないほど大きな意義を持つバージョンアップです。なぜなら、これまでのWebが抱えていたさまざまな問題を一挙に解決しようとする、とても意欲的なバージョンとなっているからです。

 では、それらの問題とはどのようなもので、HTML5はそれらをどう解決しようとしているのでしょうか。

□ 【問題1】Webブラウザ間の互換性が低い

 最初に挙げられるのは、Webブラウザ間の互換性の低さです。あるWebブラウザでは正常に動作するHTML/CSS/JavaScriptなどでできたWebプログラムが、ほかのWebブラウザでは動作しないというのは日常茶飯事です。

 この問題の原因をひと言でいうなら、「仕様と実装が乖離(かいり)している」のが理由だといえるでしょう。仕様があいまいだったり、そもそも標準化されていない仕様だったり、さらにはWebブラウザが仕様に従っていなかったりと、仕様と実装の乖離はさまざまな原因から起こります。

→ 【解決】Webブラウザ間の互換性を向上させる

 HTML5では、この問題を解決すべく、「すでにWebブラウザが実装している機能を詳細に分析し、そこから仕様を抽出する」という作業が広範にわたって行われました。これにより、既存のWebブラウザが備えている機能には「標準に準拠」しているというお墨付きを与えられます。

 その仕様に従ったプログラムを書けば、どのWebブラウザでも動作する可能性が高くなり、Web開発者/デザイナにとって大変喜ばしいことになります。さらには、今後その機能を実装しようとするWebブラウザベンダにとっても、文書化された仕様が存在するので、実装が非常に楽になります。

□ 【問題2】文書内に埋め込まれた「意味」が不明確

 次に挙げられる問題としては、「以前のHTMLは、文書構造の「意味」を表すための機能が不足していた」ということが挙げられます。

 例えば、「見出し」「本文」といった文書構造を表すのに、これまでは<div>要素を用いることが一般的でした。しかし、<div>要素は厳密にいうと「意味を持たない」という意味の要素です。<div>が多用されたHTML文書は、開発者が目で見て読むのであれば、文書構造の意味を把握することは容易かもしれません。

 しかし、例えば検索エンジンやスクリーンリーダーなどのプログラムにとっては、「どこからどこまでが重要な本文なのか」「この<ul>要素はナビゲーションメニューを表しているのか、文書中の個条書きなのか」すらも分からないのです。

→ 【解決】文書内に埋め込まれた「意味」を明確にする

 HTML5では、この問題に対処するため、数多くの意味的要素(「セマンティックな要素」と呼ばれます)が追加されました。それだけではなく、Web文書のアクセシビリティ(障害を持つ人々にとっての扱いやすさ)を向上させるための仕様(WAI-ARIA)や、文書中に埋め込まれたデータの意味を明示するための仕様(Microdata)など、さまざまな周辺技術との統合も果たされています。

□ 【問題3】Webアプリの機能が制限されている

 最後に挙げられる問題は、Webアプリ関係の機能が貧弱だったことです。Webアプリは、インターネットからダウンロードされてそのまま実行されるという性格を持つため、ユーザーのセキュリティを脅かすような機能は制限されてしかるべきです。

 しかし、それを差し引いても、従来のWebアプリにできることはあまりに貧弱でした。何せ、アップロードするファイルを選択する際、複数のファイルを同時に選択することすらできなかったのです!

→ 【解決】よりリッチなWebアプリを構築可能にする

 こうした機能の貧弱さを補うべく、現在さまざまなAPIが新たに提案されています。Webブラウザによる実装も急ピッチで進められており、「Webアプリだから不可能」といわれる機能は、近い将来かなり限られたものとなることでしょう。

今後は、HTML5“とか”の有用な使い方を紹介

 こうして見てきたように、HTML5はWebが抱える問題を次々に克服し、Webを次のステージに進めようとしています。近い将来、「どんなUI(ユーザーインターフェイス)でもHTML5で書くのがアタリマエ」という時代が来るかもしれません。

 それほど意義のあるバージョンアップなだけに、HTML5の仕様は膨大で、さらにいまも進化を続けています。こうした流れの速さは、少なくとも今後1、2年は収まることがないでしょう。

 本連載では、「HTML5や、その周辺技術は何を可能にするのか」という切り口から、以下のようなテーマについて語っていきたいと思います。

  • HTML5マークアップ
    • HTML5の記述方法
    • セクション関連要素
    • 強化されたフォーム要素
    • ルビ
    • IFrameのサンドボックス化
    • メニューとコマンド
    • ……
  • HTML5関連API
    • ビットマップグラフィックを操作する(Canvas要素)
    • ベクタグラフィックを操作する(SVG)
    • 動画・音声を再生する(Video/Audio要素)
    • オフラインWebアプリケーションを実現する
    • クロスドメイン通信を実現する
    • ローカルストレージを利用する(Web Storage、Indexed Database API)
    • バックグラウンド処理(Web Workers)
    • サーバプッシュを実現する(Server-Sent Events)
    • ソケット通信を実現する
    • ファイルの読み書き(File API/File Writer API)
    • 位置情報取得(Geolocation)
    • 情報を通知する(Web Notification)
    • パフォーマンスを測定する(Web Timing、Resource Timing)
    • モバイルデバイス用のAPI
    • ……
  • CSS3関連
    • CSS3セレクタ
    • CSS Transitions
    • CSS Transforms
    • CSS Animations
    • Webフォント
    • メディアクエリ
    • ボックスレイアウト
    • ……

 ただし、WebブラウザによるHTML5の実装がまちまちであるという現状も加味して、「広く使える」機能を優先して紹介しようと考えています。従って、記事の順序はこのとおりになるわけではありません。

 次回は連載の初回ということで、HTML5の基本的な記述方法や文法についてお話したいと思います。お楽しみに!

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著者紹介

株式会社オープンウェブ・テクノロジー 代表

白石俊平(@Shumpei

Google API Expert(HTML5)
HTML5開発者コミュニティ「html5-developers-jp」管理人

 

HTML5関連でいろいろ活動中。いまはHTML5をビジネスに活用すべく、日々奮闘中です。第1弾サービス、「DaVinciPad」は順調に稼働中。趣味は子どもたちと遊ぶこと

著書
「HTML5&API入門」(2010 日経BP社)
「Google Gearsスタートガイド」(2007 技術評論社)



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