検索
ニュース

クラウド電話APIのTwilioが日本上陸、創業CEOに聞いた数十兆円市場のテレコム関連市場に狙い

クラウド上で電話向けAPI群を提供する急成長中のベンチャー、TwilioがKDDIウェブコミュニケーションズと組んで国内での提供を開始した

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 巨大なテレコム市場の一角で破壊的イノベーションを起こしつつあるTwilio(トゥイリオ)が、いよいよ日本に上陸した。2012年10月に業務提携を発表していたKDDIウェブコミュニケーションズと米Twilioの2社は、2013年4月17日から日本国内でも“クラウド電話API”と彼らが呼ぶ「Twilio」の提供を開始すると発表した(プレスリリース)。APIドキュメントの日本語化も完了していて、今後はKDDIウェブコミュニケーションズのサービスとも統合していくという。

 @ITでは来日中のTwilio CEOで創業者のジェフ・ローソン氏と、日本のカウンターパートとなるKDDIウェブコミュニケーションズの小出範幸氏に話を聞いた。


Twilio CEOのジェフ・ローソン氏(左)、KDDIウェブコミュニケーションズ SMB事業本部 Twilio事業部 小出範幸氏(右)

すでにTwilioを利用する開発者は20万人に急成長

 Twilioはクラウド上で電話網と接続する「電話API」群を提供する2008年創業のソフトウェア企業だ。2008年末にサービスをリリース。開発者数は2010年に1万5000人だったのが、2013年現在は20万人に急増している。社員数も昨年1年間だけで75人増えて現在150人。42カ国でサービスを提供している。

 Twilioは、RESTやXML、JSON、PHP、Ruby、JavaといったWeb開発で広く使われている技術を組み合わせて音声応答システムやSMS関連サービスを構築できるようにするプラットフォームをAmazon EC2を使って提供している。Twilioのクラウドが公衆交換電話網(PSTN)とつながっていて、Web(ネット)とPSTNが地続きとなる。これまで高価で専門的だったテレフォニー関連の“エンタープライジー”な開発を、無償のSDKとAPI提供によって、一気にWebの世界に結び付けるのがTwilioだ。

 Twilioが提供する機能は様々だが、WebアプリやITシステムからAPIを叩くだけで、以下の機能が利用できる。

  • 電話の発着信(KDDIは050番号を着信用に提供する。国際通話にも対応)
  • 音声再生(mp3などの音声ファイルが利用可能)
  • テキスト音声変換(近日、日本語にも対応予定)
  • プッシュ音入力によるナビゲーション・メニューの実装
  • 通話内容の録音と保存
  • 40人まで参加できる「カンファレンス」の作成
  • 発信側の通話のキューイング
  • 通話キュー(大量の着信通話の管理とルーティング)

 例えば、電話カンファレンスを開催するとなると、一般的には専用の接続端末やサービスの利用が必要だが、Twilioでは1行のコードで実現できるという。

 Twilioの利用は初期費用無料。電話番号利用のための月額料金が490円で、固定電話への通信料が9円/分、携帯電話への通信料が19円/分、VoIPへの通信料が0.25円/分、録音領域は1万分まで無料で、追加録音料金は従量制で別途課金となる。

数十兆円規模の市場で既存ソリューションの代替を提供

 「われわれの顧客には、例えばオンデマンドで動画配信するサービス事業者のHuluがいます。彼らは顧客から質問を受けるのにTwilioのプラットフォームを使っています」(ジェフ・ローソンCEO)

 現在、コールセンターで利用されているのは主にシスコやアバイアといった古参ベンダのソリューションだが、Twilioが狙うのはこの市場だ。

 「Huluはアバイアのハードウェアを買うこともできたでしょうが、まず第一に価格が高い。それに導入までの期間も非常に長く、数千万円、あるいは数億円かかるでしょうし、導入期間は12カ月から18カ月に及ぶでしょう。Twilioなら、そうした時間的余裕がなくても素早く必要なソリューションが作れますし、初期投資も不要です」

 違いは初期コストだけではなく、柔軟性にもあるという。

 「シスコやアバイアの製品群は特定の単一目的を果たすように設計されています。拡張性はありますが、実際には簡単ではありません。例えばHuluのような企業は、既存の利用者データベースと統合し、ビジネスロジックやワークフローに組み入れる必要があります。こうしたことはアバイアでも可能ですが、非常に高く付きます。なぜなら、こうしたソリューションで求められるスキルセットは特殊な“奥義”のようなものだからです。自社ソリューションのサーティフィケーションを実施しているのも同様の理由からです」


Twilio CEOで創業者のジェフ・ローソン(Jeff Lawson)氏

 「一方、TwilioはAPIの集合ですから、パーツを組み合わせて自由に必要なソリューションを作ることができます。Web開発の基本が分かる人なら誰でもすぐに利用できます。だから、Huluでは自分たちに必要なソリューションのほとんどを2人の開発者が2週間という期間で実装できてしまったのです。アバイアのソリューションに特化した専門家に依頼し、半年とか1年をかけて作ってもらう必要はないのです」

「米国市場で見れば、年間数十兆円規模のお金が、シスコやアバイアといった昔ながらのソリューションやサービスを使ったシステムの開発・導入に費やされています。われわれの見方は違います。世界は変わりつつあって、よりソフトウェアベースとなり、柔軟なモジュールの組み合わせで開発するようになってきています。Twilioの開発者たちは、こうした旧来のソリューションを生まれ変わらせ、未来を構築しつつあるのです。開発はより機敏にでき、かつビジネスプロセスにも深く統合されたものが実現可能です」

 多彩なAPIを叩きながらビジネスロジックを実装していくというアプローチは現代的なWeb開発者にとって当たり前のことだが、旧来のソリューションではシステムはサイロ化しがちだとローソン氏は指摘する。

 「典型的な例はIVR(自動応答システム)です。顧客に電話口で顧客番号や社会保障番号を入力させるような認証システムですね。顧客は電話で番号を入れますよね、でもその後にコールセンターからの電話がかかってくると、いったん入力したはずの顧客番号を再び聞かれたりする。なぜかというと、こうしたサイロ化したシステムでは、別部署の人たちやシステムが互いにコミュニケーションを取らないからなのです。モノリシック(一枚板)なソリューションというのは、こういうサイロを作りがちですが、優れた顧客体験を提供するには、こうしたピースの1つ1つを全て組み合わせていく必要があるのです」

Dropboxも2段階認証でTwilioを活用

 昨今、パスワードの使いまわし問題などから2段階認証が注目を集めている。単純にユーザー名やメールアドレスとパスワードの組み合わせだけで認証するのではなく、ワンタイムパスワードなどを併用する認証方式だ。この際、デバイスでトークンを生成する場合に、デバイスが本人のものであることを確認する目的で、サービス側からスマートフォンなどの電話端末に発呼する必要がある。

 個人向けオンラインストレージのDropboxやBox.netは、このプロセスで電話発信の部分にTwilioを用いているという。Dropboxのように多くの国にユーザーを抱える事業者にとって、Twilioの利用価値は高いだろう。

 DropboxやBox.netのように自前で2段階認証を実装するケースもあるが、「AuthyというSaaSを使えば自社で2段階認証を実装する必要すらない」(ローソン氏)という。

 このほかTwilioを使った例として、以下のような事例がある。

  • スマートフォンアプリによってタクシー配車を効率化するベンチャーのUber。近隣の運転手とタクシー利用者をTwilioでつなげる
  • 大手航空会社。フライトの遅れやキャンセルをSMSで乗客に知らせる
  • ユーザーサポートプラットフォームのZenDesk。従来のメールによるコミュニケーションに加えて、音声による通話サポートもTwilioを使って開始
  • 米大手ホームセンターのHome Depot。配送担当ドライバーや受け取り担当者にSMSノーティフィケーションで配送状況をリアルタイムで通知

 「アプリやワークフロー、ビジネスロジックに電話を組み入れたいと思っている人たちに向けたAPIがTwilioです。コミュニケーションが、その会社にとってコアな部分になり得ると思います」(ローソン氏)

3つの起業で気付いた「自分たちがほしかったモノ」

 ジェフ・ローソンCEOは、シリアルアントレプレナーだ。3つの会社を起業した経験が、Twilioに結びついているという。

 「1990年代に始めて以来、私は3つの企業を立ち上げました。1つはオンラインの出版関連、1つはEコマース、1つはオフラインの会社です。ぜんぜん違う種類の3つの会社を立ち上げた経験から、コミュニケーション関連の問題といっても、それぞれ異なる問題を解決しないといけない、別ソリューションが必要であることを理解していました」

 「だから、ソフトウェア開発者向けのAPIとしてTwilioを設計したんです。要素を組み合わせるアプローチとすることで、さまざまなソリューションをソフトウェア開発者自身が作ることができるわけです。いろいろと話を聞くと、スタートアップ企業の創業者たちは、同じ問題を抱えていることが分かったのです」

 「私は会社を興すのが好きですから、数年ほど次に何をやるべきかを探していました。AWSのプロダクトマネージャをしていたこともあって、このチャンスの存在に気付いたんです。どんな問題を解くべきかを探すように自分自身を仕向けていたことが、Twilioのアイデアに繋がったのだと思います」

異なる方面から市場に参入

 テレコム産業といえば、各国ともに規制産業で参入障壁が高いように思える。

 「モバイル通信キャリアになろうという話なら、それは非常に難しいことだったでしょう。でも、われわれは全然違う方面から参入していますからね。Twilioのように既存のインフラ上に開発者向けサービスを構築するというのは誰もしていませんでした」

 「われわれはソフトウェア側の人間です。ソフトウェアの人々にとって、テレコムというのは全く異質のものでした。Twilioが登場するまで、どうやって電話をかければいいのか、SMSを送ればいいのかすら分からなかったのです。われわれ自身が開発者ですから、Twilioのターゲット層そのものでもありました。どういうプロダクトがほしいのか、何が重要なのか、利用者となる開発者がどこにいて、どうやって探せばいいのか、そうしたことを見つけていくのはごく簡単でした」

 日本での勝算はどうか。国内でTwilioを提供するKDDIウェブコミュニケーションズの小出範幸氏はこう話す。

 「アウトバウンドの一方向のみですが、われわれもAPIで電話がかけられるboundioというサービスを開発し、1年半ほど提供してきました。最初のうちは、どう使っていいか分からないという声も聞きましたが、最近は色々アイデア次第で作れるのではないという風に見て頂けるようになってきたように思います」

 「すでに組んである既存ITシステムを変える必要がないという話もありますが、一方でこうしたシステムは改変の困難さが問題となっています。改変が手間で、拡張しようと思ってもできない。ところがTwilioなら、どんどん自分たちで開発ができる。すでにWebサービスをやっているような企業だと、Twilioに変えてしまおうという動きが大きな会社でも出始めています」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る