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幻のWindows 8.1 Update 2と盆(凡)のアップデート山市良のうぃんどうず日記(12)

2014年夏にWindows 8.1の次の大型アップデート「Windows 8.1 Update 2」が提供され、「スタートメニュー」が復活するとか、しないとか、それは8月だとか、いろいろとウワサされていましたが……。

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Windows 8.1 Updateの猶予期間、完全終了

 Windows Updateによるマイクロソフトの8月の定例更新は、お盆真っただ中の8月13日に当たりました。この時期に長期休暇を設けている企業のIT部門は、休み明けの更新作業で猫の手も借りたいところでしょう。

 8月は緊急2件、重要7件を含む、多数のセキュリティ更新およびセキュリティ以外の更新プログラムが提供されました。本連載でも以前触れましたが、最新のWindows 8.1とOffice 2013(MSI形式のみ)の環境は、以前のバージョンと比べて、更新プログラムの数やダウンロードサイズが大きく、時間もかかるような気がします(画面1)。特に、MSI(Windowsインストーラー)版のOffice 2013は毎回サイズが気になります。

画面1
画面1 Windows 8.1 UpdateとOffice 2013 SP1(ただし、一般的なクイック実行形式ではない、MSI形式)の環境でWindows Updateを実行したところ。自動選択された8月の更新のダウンロードサイズは約800Mbyte。Officeを除けば170Mbyte程度

 なお、MSI版はボリュームライセンスやMSDN(Microsoft Developer Network)サブスクリプションで提供されるもので、常に最新版を利用できる「クイック実行版」(Click to Run:C2R)を利用中のOffice 2013ユーザーにWindows Update(Microsoft Update)で更新プログラムが提供されることはありませんので、ダウンロードサイズは気にならないかもしれません。

 筆者のPCでは該当しませんでしたが、今回の更新プログラムを適用してWindowsが正常に起動しなくなったというトラブルもあるようです。これから適用するという企業や個人の方は、くれぐれもご注意を(詳しくは、この記事の最後に)。

 毎月の定例更新はセキュリティリスクを回避するためのものですが、その更新プログラムがPCの問題を引き起こす一番のリスクだったりして……。企業であればその辺のリスクを考慮して、パッチテストなどを行ってから全社展開できますが、個人ユーザーはそうもいきません。もし、何か問題があって正常起動できなくなり、何とか元に戻したいという場合は、以下の記事を参考にしてください。

 それはさておき、Windows 8.1 UpdateやWindows Server 2012 R2 Update(いずれも、更新プログラム「KB2919355」)は、“将来のセキュリティ更新を受け取るための必須の更新プログラム”という位置付けでした。

 個人ユーザー向けには6月の定例更新の前まで猶予措置がとられ、KB2919355が適用されていないPC向けにも更新プログラムが提供されました。企業ユーザーの場合は、8月の定例更新の前までWindows Server Update Services(WSUS)やMicrosoft Catalogを通じてKB2919355が適用されていないPC向けにも更新プログラムが提供されました。企業向けの猶予措置もとうとう終了し、8月の定例更新からはWindows 8.1およびWindows Server 2012 R2でセキュリティ更新を受け取るためには、KB2919355が必須になりました。

 まだKB2919355の適用が完了していないPCがある場合は、放置される脆弱(ぜいじゃく)性がどんどん増えていってしまうのでくれぐれもご注意ください。

Update 2ではない、改称でもない、ただの8月の更新

 Windowsの最新情報に敏感なITプロフェッショナルやWindows 8.1ユーザーの方なら、近い将来、従来の「スタートメニュー」に近い新しいUI(User Interface)を更新プログラムで入手できると期待していた人は多いはずです。なぜなら、今年の「Build 2014」でそのように受け取れる発表がマイクロソフト自身からあったからです(画面2)。

画面2
画面2 「Build 2014」で今後のアップデートで追加予定と発表されたWindows 8.1の新しいスタートメニュー。発表時は、Windows 8.1 Updateの機能として誤って報道されたことも

 そして、その時は8月の定例更新時にリリースされるであろうという、根拠のあやふやなニュースが出回りました。待望のスタートメニューの復活はWindows 8.1ではなく、次期Windows(開発コード名:Threshold)に先送りされたらしいというニュースもありました。

 8月上旬、マイクロソフトは「Windows 8.1 Update 2」の根拠のないウワサを否定した上で、いくつかの新機能と改善を含む「August Update」を提供することを予告しました。

 公式情報によると、Windows 8.1 Update 2の提供予定はないそうです。これまでもそうしてきたように、新機能や改善は毎月の定例更新のタイミングで今後もリリースするそうです。「August Update」が何か特別というわけではありません。“次の8月の更新のときにこれこれが……”という感じです。スタートメニューの復活話に関しては何も触れられていません。

 そして8月13日、多数のセキュリティ更新の提供と同じその日に、予告通り「August 2014 update rollup」(2014年8月の更新ロールアップ)パッケージという表現で一つの更新プログラムが提供されました。32bit版が約100Mbyte、64bit版が約170Mbyteのオプションの更新プログラム「KB2975719」がそれです(画面3)。

画面3
画面3 更新プログラム「KB2975719」は、Windows 8.1 Update 2ではなく、いくつかの新機能や改善を含む更新ロールアップ。インストールするには明示的に選択する必要がある

 オプションの更新プログラムであるため、Windows Updateを実行しても自動選択されることはありません(画面4)。重要な更新プログラムのみを自動的にインストールするようにしている場合は、手動で選択しない限り、この更新プログラムがインストールされることはありません。

画面4
画面4 「PC設定」の「保守と管理」→「Windows Update」から更新する場合は、詳細を表示して、オプションを選択する

 更新プログラム「KB2975719」の目玉機能の一つとして、古いActiveXコントロールをブロックし、問題のActiveXコントロールの更新を促す「Internet Explorer」(IE)の新機能がすでに多くのメディアで取り上げられていますが、それ以外にも小規模な新機能、改善、バグ修正が多数含まれます。詳しくは、以下で説明されていますが、IEの新機能以外に“これはいい”と思うような、誰にでもうれしいという機能はなさそうです。

 IEの新機能の詳細については、以下のサイトでご確認ください。

 ブロック対象となるActive Xコントロールはブラックリスト(%LOCALAPPDATA%\Microsoft\Internet Explorer\VersionManager\versionlist.xml)としてマイクロソフトから配布、更新されるようです。現状は、Java Active Xコントロールの古いバージョンをブロックするようになっています。

 ただし、このブロック機能の発動は9月の定例更新まで猶予されています。それまでの間、企業では「グループポリシー」を用いてブロック機能の無効化や信頼済みサイトの更新(信頼済みサイトはブロックの対象外)など準備作業を進められるようにとの配慮なのでしょう。

 なお、この機能は更新プログラム「KB2975719」だけの機能でなく、Windows 7 Service Pack(SP)1のIE 8以降、Windows 8のIE 10にも更新プログラム「KB2976627」([MS14-051]Internet Explorer用の累積的なセキュリティ更新プログラム(2014年8月12日))の一部として追加されています。

 更新プログラム「KB2975719」のもう一つの目玉、「高精度タッチパッド」(Precision Touchpad)の改善について。追加されたという新しいタッチパッドの設定が自分のPCには見当たらないと悩んでいる場合は、以下を参照してください。お使いのタッチパッドは高精度タッチパッドではないようですよ。このように更新プログラム「KB2975719」の目玉とされる機能のいくつかは、特定のハードウェアにだけ関係するものが少なくありません。

 最後に重要なことを一つ。更新プログラム「KB2975719」をインストールできるのは、Windows 8.1 UpdateまたはWindows Server 2012 R2 Update(KB2919355)に更新済みのPCだけです。また、オプションなので必要性を感じなければインストールしなくてもよいでしょう。必要性が高まれば、オプションではなく、重要な更新に切り替わるはずですから。

【追記】

 マイクロソフトは8月13日公開の更新プログラムの一部でWindowsが起動不能になるなどの問題が発生する恐れがあるため、更新プログラム「KB2975719」を含む、いくつかの更新プログラムのWindows UpdateやMicrosoft Downloadサイトからの配布を停止しました。お盆休暇が幸いした人も多いのではないでしょうか。

 今、Windows Updateを実行しても、今回の問題の出た更新プログラムがインストールされることはありません。その代わり、「August Update」である更新プログラム「KB2975719」をインストールしたくても、Windows Updateには出てこなくなりました(8月18日現在)。問題が出た場合の対処方法は以下の公式ブログで公開されています。更新後に問題が発生していないPCであっても、“予防的措置のために”アンインストールすることを推奨するとのこと。修正版が出るまでは更新プログラム「KB2975719」もまた幻ってことに。ホント、最近のWindows Updateって……。

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筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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