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仕事は楽しいかね?田中淳子の“言葉のチカラ”(10)

新入社員研修後のレポートに書いてあったひと言を見て、田中さんは思わず「ふふふ」と微笑んでしまった。そこに書かれていた言葉とは?

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田中淳子の“言葉のチカラ”
「田中淳子の“言葉のチカラ”」

連載目次

あなたの給料、2倍にします

 以前、こんな話をしている人たちがいた。「給料を2倍にしてくれたら、やる気出るよなー」「ほんと、ほんと。給料が倍になるなら、何でもやるよなー」。

 (お! 分かる、その気持ち。ちょっとだけ……なら)

 そこで尋ねてみた。「その給料2倍の仕事が“全く意に染まないこと”“楽しくないこと”だとしても、やりますか?」。すると彼らは答えた。「やりますよ。だって、給料2倍ですよー」「やるでしょう。給料2倍なら“どんなこと”でも」。

 その答えを聞いて、実際に「給料が2倍になる」と言われたら、どんなにやりたくないことでもするのだろうか、と私はふと思った。1日や1週間、1カ月といった短期ならまだ分かる。我慢して嫌な仕事をしても、お金は2倍もらえるのである。私だってやっちゃうかもしれない。

 しかし、それが1年2年と続いたらどうか。やりたくないことをしている状態は、心身を疲弊させていかないだろうか。

仕事なのに楽しそう

 ある企業の新入社員研修を担当した時のこと。最終日に受講者(つまり新入社員)が書いた「受講レポート」を見たら、こんなことが書いてあった。

 講師の田中さんは、楽しそうに研修を進めていた。

 “仕事”なのに“楽しそう”ということが少し不思議だった。でも、楽しそうに仕事をするのは、実はとても大切なことじゃないかと思った。

 私はまだ入社1カ月もたたず、研修には必死に追い付いていくしかないが、いつか自分も“楽しそう”に仕事に取り組めるようになりたい。

 「ふふふ」と微笑んでしまった。“楽しそう”に見えたということは、うれしいことだ。

 この時の研修は私にとってもチャレンジがいくつかあり、大変ではあったが得るものも多かった。何よりも、何十人という新社会人と1カ月近く共に過ごすのは、多くの刺激を受ける経験でもあった。

 だからだろうか。事実、私は「楽しいなぁ」と思いながら最終日を迎えた。受講者がそういう私の内面を感じとり、レポートに書いてくれたことに、私は勇気付けられた。

 彼は、私が“楽しそう”にしていることを観察した上で、“楽しそう”に仕事をすることはいいことだと感じた。だから、「いつか自分もそうなれるよう、今は頑張って勉強しよう」と決意を述べていた。

 まだ実務に就いていない新入社員にとって、「仕事」は「苦労」「困難」「大変なもの」といったイメージの方が大きかったのだろう。「楽しいなんてことがあるのか」と意外に感じたのかもしれない。

どうやって楽しむかが大切

 こんな話をしてくれた人がいる。その人は、OJTトレーナー(新入社員の指導に当たる担当者)であった。

 後輩には、どんな仕事でも“楽しんで”取り組むようにと伝えたい。“楽しい”仕事ばかりじゃないけれど、与えられた仕事の中に“楽しい”と思える要素を見つけ出すように、と。

 “楽しい”と思って取り組んでいれば、やる気が高まるので、成果も出やすいし、達成感も味わえる。それにより、またいい仕事が自分に回ってきて、やりがいを感じ、“楽しく”なる。好循環につながる。

 でも“楽しくない”と思っていたら、やりがいもやる気も感じず、やらされ感を持ったまま取り組むことになり、成果にもつながりにくい。達成感も味わえないし、他からも評価されないから、より“楽しく”なくなり、悪循環に陥る。

 若手のうちは、人から与えられる仕事ばかりで、自分がやりたいことを手掛けることは難しいかもしれないが、与えられた仕事であっても、“どうやって楽しむか”を常に考えることが大切だと後輩には伝えたい。

 仕事には苦労が付きものだ。勉強がツラかったり、利害関係者が大変な人だったり、他部署との調整に疲れ果てたりすることもある。「ああ、組織ってメンドクサイ!」と思うことも、顧客に怒鳴られて怖い思いをすることも、思いつきでいろいろ言う上司に翻弄されてヘトヘトになることもある。困難にぶつかることは日常茶飯事だ。自分の能力不足で成果が出せず苦悩することもあれば、低い評価に涙する日もあるだろう。

 それでも、仕事をしていると、得られるものもまたたくさんある。

 知識やスキルが上がるだけでなく、仕事を通じてステキな人に出会えることもある。お客さまから「ありがとう」と言われたり、「頑張って成し遂げたぜ!」と自画自賛したり、去年よりは成長できたと感じたり、「次回もあなたにお願いしますね」と1年も先の仕事の予約をいただいたり。

 「やりがいがある」「達成した!」「満足だ」などと感じるのは、得たお金からではなく(それはそれでとても重要だが)、働いている瞬間に受ける言葉や自分の心の中の充足感のようなものからではないだろうか。それを支えるのが「楽しい気分で仕事に取り組むこと」という面はあるに違いない。

 「楽しそうに働いている」かどうか、案外、他者も見ているものだ。そして、それは周囲にも伝染していく。

 楽しんでいるか。

 楽しい部分を見い出す努力や工夫をしているか。

 ため息ばかりつきそうなときこそ、自問自答していきたい。

いつか自分も“楽しそう”に仕事に取り組めるようになりたい。
「田中淳子の“言葉のチカラ”」バックナンバー

筆者プロフィール  田中淳子

 田中淳子

グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー

1986年 上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで、延べ3万人以上の人材育成に携わり28年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。

日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。著書:「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)など多数。誠 Biz.ID「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”

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