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第1回 Software Defined Storageとは何か「攻めのIT」時代のストレージの基礎知識

ストレージの世界における重要な動きについて、その文脈を解説する新連載、「『攻めのIT』時代のストレージの基礎知識」。その第1回として、「Software Defined Storageとは何か」をお送りする。

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 今回より、「『攻めのIT』時代のストレージの基礎知識」と題して、連載コラムをお届けしていきます。ストレージに関する旬のキーワード、あるいはストレージの世界における重要な動きについて、その本質をご理解いただくために、標準的な用語解説ではなく、「文脈解説」に努めていきます。執筆を担当しますのはアイティメディア ITインダストリー事業部 エグゼクティブエディターの三木泉です。ITインフラを中心として、IT全般につき、これまで20年以上執筆や編集に携わってきました。

 初回のテーマは「Software Defined Storageとは何か」です。

 最近、複数のストレージ製品開発企業が、「Software Defined Storage(SDS)」という表現を使うようになってきました。この言葉が分かりにくいとお感じの方は多いと思います。それも当然です。特定の技術やアーキテクチャを指す言葉ではないため、明確な定義ができないのです。では、この言葉に意味はないのでしょうか。筆者はそう考えてはいません。

 SDSは、SDN(Software Defined Networking)から始まった「Software Defined〜」という表現が、ストレージの世界にも広がってきたものです。ですから、Software Definedということの意味を考える必要があります。

 まずはっきりさせておきたいのは、SDNでも、SDSでも、「Software Defined」は「Software Based」と同義ではないということです。ネットワークとストレージは、どちらもハードウェア製品が中心的な役割を果たしてきた製品ジャンルであり、「Software Defined」では、従来の製品の限界を打破するために、ソフトウェアの役割を強調しています。だからといって、「従来ハードウェアで実現してきた機能をソフトウェアで実現することがすごい」あるいは「ソフトウェアだけで機能を完結させた製品が無条件に優れている」ということではありません。

 これまでセキュリティなどで、ソフトウェアオンリーの製品があるにもかかわらず、アプライアンス製品が歓迎されてきた例がたくさんあります。その理由の1つは、運用がしやすいからです。

 SDNやSDSの製品には、ソフトウェアオンリーの製品も、ハードウェア製品を基盤とするものもあります。どちらであっても、SDNあるいはSDSの目的を実現するのにどう役立つかという観点で、その製品の価値を評価すべきだと、筆者は考えます。

 「Software Definedの明確な定義はできない」と、上に述べました。しかし、Software Defined製品の目指すものは、比較的はっきりしています。これを文章で表現すると、次のようになります。

 「Software Definedとは、利用者がやりたいことを最短距離で実現できるようにするための、ITインフラ製品の機能および利用方法」

 いいかえれば、Software Definedとは、ITインフラが文房具のように使えることを目指す動きなのです。

 昔は、家庭用のテレビを木製のキャビネットに収めたり、演幕のようなものを付けたりした製品がありました。しかし今、テレビは、映像や音声をより鮮明に映し出し、あるいは放送や映像コンテンツを楽しむための道具となっています。こうした目的のための機能で優劣が付けられるようになっています。

 ITインフラ製品でも、これは同じです。ITを活用する目的は、昔も今もビジネスの支援にあります。しかし、昔と今の大きな違いとして、ITの使われ方がより深くなり、より広くなっていることが挙げられます。今後さらにこうした動きが進んでいくと、IT製品自体の維持や運用に時間やコストを掛けることが難しくなってきます。ですから、IT製品自体の「都合」は最小限に抑え、ユーザー組織のやりたいことをできるだけ積極的に支えられるようなものが求められ始めているのです。

Software Defined製品の4つの「使える」

 筆者は、Software Defined製品は、4つの意味で、「使える」ことを目指さなければならないと考えています。

  • ユーザー組織がやりたいこと、つまりビジネス目的の達成につながりやすいという意味で「使える」
  • その製品を熟知したエキスパートでないと操作できないというのではなく、ユーザー組織の人々自身が、必要の範囲内で直接・間接に操作できるという意味で「使える」
  • 複雑な設定を必要とせず、求められる機能を自動的、自律的に提供できる頭のいい存在という意味で「使える」
  • 求められる機能や性能を確実に果たすという意味で「使える」)

ストレージにおけるSoftware Definedの意味

 上記のうち、「ビジネス目的の達成につながりやすいという意味で『使える』」という項目に、筆者は特にさまざまな意味を込めています。SDSの場合、ストレージ(ハードウェア、ソフトウェアを問わず)の機種の違い、容量、設置場所などをユーザーができるだけ気にすることなく、ビジネスニーズ、アプリケーションニーズに基づいて、データ管理ができるようになるというのが理想です。

 例えば複数のベンダーや機種のストレージを、あたかも1つの製品であるかのように論理的に結合し、データの自動階層化管理からスナップショットなどのデータ保護機能までを含めた一体的な運用ができるといった機能が考えられます。ニーズが変わったら、ユーザーは製品や容量の組み合わせを簡単な操作で変更し、管理できるようになるという世界です。その前提として、機種やベンダーの違いに関係なく、同じ操作方法で運用管理できるようになることが望まれます。

 また、レプリケーション先のストレージを従来とは別のベンダの製品に変更したとしても、レプリケーション先を新規ストレージに変更するだけで、即座に移行できるようになることが考えられます。

 大まかにいえば、どうすれば、ストレージ製品の都合に邪魔されることなく、ユーザーが自身の必要とするデータ管理を実現できるか、ということがSDSのテーマの1つとなります。

 「ユーザー組織の人々自身が、必要の範囲内で直接・間接に操作できるという意味で『使える』」とは、ストレージ製品の機能の利用をできるだけシンプルなものにすることです。ポリシーによる制御をうたった製品が徐々に増えているのは良い傾向です。ただし、個々のポリシーを実行するためのストレージ製品の機能設定を、専門家がやらなければならないのが現状です。これが不要になれば、SDSへさらに近づいていきます。

 「求められる機能を自動的、自律的に提供できる頭のいい存在という意味で『使える』」ことにも、実は深い意味があります。ユーザー自身がいくら操作できるといっても、ユーザーはデータアクセスを細かく管理したくない場合があります。ストレージインフラが、自ら常にストレージI/Oをモニターすることで、記憶媒体やストレージ装置に自動的にそのデータを移動し、ストレージ基盤全体としてのパフォーマンスとコストを常に最適な状態に保ってくれるようになることが望まれます。

 ストレージの場合、データというものを扱っていることによる根本的な課題があります。データには「重力」があるからです。広帯域WANのコストが飛躍的に下がらないかぎり、データを地球上のどこからどこへでも、臨機応変に常時移動するといったことは不可能です。また、アプリケーションが処理するデータは、パフォーマンスの点から、アプリケーションのそばにあるべきです。しかし、例えばIoT(Internet of Things)などから生まれるビッグデータは、世界中のあらゆる場所で収集されるかもしれません。それも、リアルタイムで大量のデータを吸い上げなければならないかもしれません。このようにデータの収集場所と利用場所が離れていくとき、データ基盤はどうあるべきでしょうか。

 一部の企業では、上記のようにビジネスニーズが大きく変化しようとしています。「重力」のあるデータという存在を扱うストレージが、これにどう対応できるか。ここにストレージの新たな可能性が生まれつつあります。

ビジネスの道具としてのストレージ

 ユーザー組織がやりたいこと、そしてITインフラ製品に期待することは、それぞれ異なります。このため、各ユーザーが利用したいSDSは異なるでしょう。しかし、ITインフラ製品自体の利用をあまり意識することなく、ビジネスの道具として使える製品を求めているという点は、多くの組織に共通していると考えます。この点で、「Software Defined Storage」とうたっていなくても、該当すると思われる製品も存在しています。

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