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マイクロソフトは「セキュリティ」「管理」「イノベーション」で企業のデジタルトランスフォーメーションを強力に支援Microsoft Tech Summit基調講演(1/2 ページ)

日本マイクロソフトは2016年11月1〜2日の2日間、IT技術者向けのイベント「Microsoft Tech Summit」を開催。企業がデジタルトランスフォーメーションを実現していくための最新技術と実践的なノウハウを、100を超えるセッションで紹介。ここでは、初日に行われた基調講演の模様をレポートする。

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マイクロソフトはIT技術者を「IT Hero」として応援していく

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日本マイクロソフト 執行役員 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏

 日本マイクロソフトは日本国内のIT技術者/デベロッパーに向けて、2つの大きなイベントを開催している。1つは2016年5月に行われた「de:code」、そしてもう1つが今回の「Microsoft Tech Summit」だ。

 Microsoft Tech Summit初日の基調講演の冒頭には、伊藤かつら氏(執行役員 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長)が登壇。マイクロソフトにとってのIT技術者向けイベントの重要性について、次のように切り出した。

 「マイクロソフトは、テクノロジーでより良い世界をつくりたいと思っています。ただ、これはマイクロソフトだけではできないこと。企業のインフラエンジニア、セキュリティエンジニア、ネットワークエンジニア、そしてデベロッパーがいて、初めて実現できることです。そもそも、マイクロソフトが42年前に最初に出した製品は開発ツールでした。IT技術者を大切にするというマイクロソフトのDNAは、このモバイルとクラウドの時代でも変わりません」(伊藤氏)

 伊藤氏は、Microsoft Tech Summitのテーマとして「セキュリティ」「管理」「イノベーション」の3つを挙げた。この3つは、今日のようなモバイル/クラウド時代において、企業がデジタルトランスフォーメーションを成し遂げていくための重要なポイントであると同時に、実際に企業が取り組みを進める上での悩みでもあると伊藤氏は説明した。

 実際、マイクソロフトは、それらの悩みに応えるべく、さまざまな取り組みを活発化させている。例えば、セキュリティに関して、2017年はセキュリティ認定資格「CISSP(Certified Information Systems Security Professional)」の取得を100人規模で支援する予定だという。

 また、管理に関しては、2016年10月に最新のサーバOSとなる「Windows Server 2016」と運用管理スイート製品の「System Center 2016」をリリースするとともに、「Azure Stack」のプレビューを進め、企業インフラの運用管理環境を大幅に改善しようとしている。

 さらに、イノベーションに向けては「Dynamics 365」でERP(Enterprise Resource Planning)やCRM(Customer Relationship Management)の機能を統合することで、最新のクラウドサービスに進化させている。

 その上で伊藤氏は「ITはビジネスを加速させるキードライバーです。それを実現するのはIT技術者であり、マイクロソフトは技術者を“IT Hero”として心から応援していきます」と訴えた。

「3大課題」を乗り越えたユーザーの事例を紹介

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日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンターセンター長 澤円氏

 続いて、登壇したのは、マイクロソフトテクノロジーセンターセンター長を務める澤円氏だ。セキュリティ、管理、イノベーションという3つの課題を解決した実際のユーザー事例を紹介した。

 セキュリティの取り組みを加速しているユーザーが、ベネッセホールディングスだ。「(情報漏えいという)苦い経験をしたベネッセでは、これまで以上に強固なセキュリティを実現するために、IT環境の整備に取り組んでいます。そこで活用されているのがOffice 365、Enterprise Mobility+Security(EMS)、Windows 10タブレットです。新しい働き方を推進すると同時に、グループ全体でセキュリティを向上させています」と澤氏は説明する。

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ベネッセホールディングスは、Office 365、EMS、Windows 10でセキュリティの強化と新しい働き方を実現
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米マイクロソフト ワールドワイドチーフセキュリティアドバイザー Jonathan Trull氏

 また、マイクロソフトにおけるセキュリティ強化の取り組みについては、米マイクロソフトのジョナサン・トゥルル(Jonathan Trull)氏(米マイクロソフト ワールドワイドチーフセキュリティアドバイザー)が解説。トゥルル氏は、「Intelligent Security Graph」と呼ばれる脅威インテリジェンスを最近のホットなトピックスとして紹介した。

 「世界中から収集した脅威データを可視化して、サイバーアタックを継続的に追跡できるようにしています。Intelligent Security Graphなどの最新技術から得た知見は、マイクロソフト製品に反映されます。今日の脅威は、1つの対策だけでは防ぐことが難しい。人、プロセス、技術の全てを巻き込んで対応していく必要があります」(トゥルル氏)

 マイクロソフト製品にどのように反映されているのかについては、Windows 10に搭載されたセキュリティ機能「Credential Guard」でエンドポイントでのマルウェア防御が向上したことや、「Windows Defender ATP(Advanced Threat Protection)」によりマルウェアがどういった動きをしたのかを追跡できること、Azureの新サービス「Azure Security Center」により、不足しているセキュリティ対策を容易に発見できることなどをデモを交えて紹介した。

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Windows 10はサンドボックス機能が搭載されたことで、マルウェアの実行を防ぐことができるという

 続けて澤氏は、2つ目の課題であるマネジメントに取り組んでいる企業の事例として、石油暖房機大手のコロナを紹介。コロナでは、製品カタログを電子化し、社外から簡単にカタログを閲覧できるようするといった営業スタイルの刷新に取り組んだという。

 「外部からのアクセスを安全に行う必要がありました。そこでキーになったのが、強固なセキュリティ基盤と管理機能を提供するWindows Server 2016でした」(澤氏)

 Windows Server 2016の新機能の1つに「Nano Server」がある。例えば、Nano Serverを使ってWebサーバを冗長化しておくと、何らかの障害でダウンした場合でも、新しいサーバインスタンスを迅速に立ち上げることができるなど、可用性を大幅に高められる。スビード感を持ったサービスのスケールアウトも可能だ。また、Azure Stackでは、オンプレミスでパブリッククラウドのAzureと同じ環境を立ち上げることができる。操作性もAzureとほぼ同じだ。「スピード感と高い運用性が実現できます。開発スタイルも大きく変わります」と新機能をアピールした。

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Azureの管理画面(左)とAzure Stackの管理画面(右)を並べて、操作性をデモ。ほとんど同じ操作で、同じことができる

 澤氏はさらに、閉域網サービス「Express Route」や「Microsoft Operations Management Suite(OMS)」を使ってシステムをAzureに移行し、運用管理工数を大幅に削減したエイアンドティーの事例を紹介。さらに、エイアンドティー(A&T)のシステム移行を支援したビットアイル・エクイニクスの橋本利一氏が登壇し、OMSのメリットを次のように評価した。

 「ダッシュボードが非常に見やすい。『Power BI』へOMSのログをエクスポートできるので、柔軟な分析も可能になります。マイクロソフトのナレッジベースを活用したSQL Serverのチューニング提案を受けることもできます。特に評価したいのは、スマートフォンで外部からシステムの状況を確認できること。これにより、会議の場は単なる過去の数値の報告から、リアルタイムの数値を見ながらどういった運用を行っていくかという深い議論ができるようになりました。未来志向の運用に変わりましたね」(橋本氏)

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「Operations Management Suite」はリアルタイムでシステムの状況を可視化することができる

 3つのテーマであるイノベーションの事例については、NECソリューションイノベータによるDevOpsの取り組みが紹介された。NECソリューションイノベータでは、ソフトウェアリリースのリードタイムを9カ月から1週間に短縮させたという。そこで活用したのが、マイクロソフトの「Value Streaming Mapping」とDevOpsプラクティスだ。

 マイクロソフトがどのようなDevOpsソリューションを提供しているかについては、コンテンツ配信企業のカラダメディカの事例で紹介。カラダメディカでは、ソースコード管理やリリース管理、デプロイ管理に「Visual Studio Team Services(VSTS)」を採用している。

 カラダメディカの十日市晃子氏によると、VSTSを使うことで、修正ファイルをアップロードすると自動的にビルドパイプラインが動き、テスト後に自動的にサーバにアップロードされるようになるという。十日市氏は、「カンバンボード」機能をよく使うといい、この機能を使うことで、ユーザーに割り振ったタスクの管理などが効率よくできると述べた。

 続いて澤氏は、Windows 10を社内導入した事例として、パナソニックグループを紹介。パナソニックでは、社内導入のノウハウを基に、法人向けの導入支援サービスをビジネス展開する予定だという。また、生体認証技術「Windows Hello」に対応したデバイスも今後、市場に投入するという。

 澤氏は、「Windows 10を活用したイノベーションに取り組む企業はたくさん登場しています」とし、製造販売、サービス、建築/建設/不動産、金融、流通/小売、運輸/空輸、商社、農林水産などにおいて、既に数十の導入実績があることを示した。さらに、Windows 10での新機能を幾つかデモで紹介した。

 日本航空(JAL)は、Windows 10を搭載した「Surface Pro 4」「Office 365」「Surface Hub」を導入して、ワークスタイル変革を推進。Surface Hubをホワイトボードにして、「Skype for Business」で遠隔地ともスムーズにコミュニケーションを行うなど、先進的な環境を実現しているという。

 さらに、Windows 10の新機能をデモで幾つか紹介。「Ink Workspace」では、文字やURLを自動認識したり、メモとして書かれた日時を判断してリマインダを送ったりすることができる。また、「OneNote」では、ペンで手書きしたマーカーや、手書きの図形、数式を自動認識し、Wordでは蛍光ペンを使って手書きで文章の編集ができる。デモを行った高橋忍氏と鈴木敦史氏は「こうした機能は、コンポーネントとして提供されています。自社開発のアプリに容易に組み込めます」と特徴を解説した。

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Windows 10の新機能「Ink Workspace」のデモ

 その上で澤氏は、「こうした3つの悩みを解決していくことは、明日をつくっていくことにつながります。みなさんが“Drive the Future Enterprise”を実現し、IT Heroになっていくことを支援していきます」と、イベントのテーマに触れながら、IT技術者にエールを送った。

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