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AI、Deep Learning、「Mixed Reality」で未来のコンピューティングはどう変わるのかde:code 2017基調講演(後編)(2/3 ページ)

日本マイクロソフトは2017年5月23、24日に「de:code 2017」を開催。基調講演後半では、AI、Deep Learning、「Mixed Reality」といった「未来のコンピューティング」を実現するためのテクノロジーと、それに向けてMicrosoftが提供する製品、サービスが多数紹介された。

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Intelligent Lake

 2つ目のパターンとして挙げられた「Intelligent Lake」は、ペタバイト級のいわゆる「ビッグデータ」に対してAIを適用するための基盤だ。Microsoftでは、こうした用途に向けて「Azure HDInsight」「Azure Data Lake」の2つのサービスを提供している。

 Azure HDInsightはHadoopベースのマネージドクラスタであり、Azure Data Lakeは画像や文章など、さまざまなタイプのデータに対して分析ジョブを実行できる容量無制限のデータレイクサービスである。Azure Data Lakeには、「顔認識」「画像へのタグ付け」「顔画像からの感情分析」「OCR」「テキスト要約」「テキストからの感情分析」という6つの機能が用意されており、これらをデータレイクに対して即座に適用可能だ。

 「現在のAIは、自ら学習を行えることが重要であり、学習のためのデータは多ければ多いほど精度を高められる。ペタバイト級のデータを使った『ビッグコグニション』が、Intelligent Lakeによって可能となる」(Sirosh氏)

Deep Intelligence

 3つ目は「Deep Intelligence」。Deep Learningで、より高度な認識機能をシステムへ持たせるものだ。既にインターネットサービスをはじめ、医学や生物学、エンターテインメントやメディア、セキュリティ、自動運転といったさまざまな産業分野で「Deep Intelligence」が活用されている。

 その一例として、ノルウェーにおける電力設備の点検保守に関する事例を挙げた。この事例では、ビデオカメラを搭載したドローンを使って、上空から電線や電柱の画像を取得。これらの画像に対するDeep Learningによって、従来は目視で発見していた設備の破損や異常を検出するという。

 Microsoftでは、「Azure Data Science Virtual Machine」と呼ばれるサービスにおいて、こうしたDeep Learningの活用を支援するという。これは、Deep Learning向けの拡張機能を組み込んだ「Azure GPU VM」や、SQL Server、R Serverのデベロッパー版、Azure Batchをはじめ、データ分析やDeep Learningに使われるメジャーなツール群を構成済みのイメージとして提供するもの。この環境の中で、ハイパースケール環境におけるAIトレーニングとデプロイを一貫して行えるという。

 ここで壇上には、MicrosoftとDeep Learning分野での協業を発表した(前編参照)Preferred Networksの齋藤俊太氏が招かれた。Azure Data Science Virtual Machineでは、マーケットプレース上にPreferred NetworksのDeep Learningフレームワーク「Chainer」がラインアップされており、1行のコマンドで容易にインストールが可能になっているという。

 齋藤氏は、ChainerによるDeep Learningの適用例として、線画のイラストに対してAIが自動で着色を行うWebサービス「PaintsChainer」を紹介した。

 「Azure Data Science Virtual Machine上でChainerを使うと、極めて簡単にGPUを使ったDeep Learningをスタートし、サービスに適用できる。AzureとChainerを使って、さまざまなアイデアの実装を試してみてほしい」(齋藤氏)

 Sirosh氏は、齋藤氏のデモを受けて「AIは、人間がこれまで行ってきたアートの領域についても学ぶことを始めている。システムの世界では、今まさに、カンブリア爆発と同様のインパクトを持ったインテリジェンスの爆発が起ころうとしている。この変革を起こすのはわれわれだ。共に未来を作っていこう」と述べた。

「Windows 10 Fall Creators Update」にも組み込まれるAI


日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏

 続いて登壇したのは、日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野拓也氏だ。平野氏は「インテリジェントエッジ」を構成する要素の1つである「Windows 10」について、「Build 2017」で発表されたアップデートを紹介した。

 2017年秋リリース予定の「Windows 10 Fall Creators Update」における注目機能の1つとして平野氏が挙げたのは「Microsoft Story Remix」と呼ばれる動画編集ツールだ。このツールでは、動画上で動いている人物や物体にキャプションを描き込むと、その動きに合わせてキャプションが自動的に追従する。また、特定の人物を指定すると、その人物が映っているシーンのみを編集した動画を自動的に作成するといったことも可能になっている。AIを、動画の作成や管理に適用できるわけだ。

 その他にも、Fall Creators Updateでは、記録されたユーザーの操作履歴をさかのぼって作業状況を復元できる「タイムライン」機能、プラットフォームを超えて利用できる「クリップボード共有」機能などが追加される。

 デベロッパー向けには、iOS、Android、Linux向けのアプリケーションをWindows 10上で開発、テストするための環境が大幅に強化される。平野氏は「こうして開発されたアプリケーションは、2次元の世界から、3次元の世界へと進化していく」とし、2017年秋以降、Windows 10ベースで展開していく「Windows Mixed Reality」(以下、MR)プラットフォームについて紹介した。

 「MRは、Microsoftが今、最も注力している新たなコンピューティングの世界。1月には日本でもHoloLensの提供を開始した。日本における開発コミュニティーの盛り上がりには目を見張るものがあり、海外からも注目されている。企業からの関心も高く、既にさまざまなプロジェクトが進んでいる」(平野氏)

 平野氏はここで「HoloLensの生みの親」として、MicrosoftのテクニカルフェローであるAlex Kipman氏を紹介した。HoloLens、Kinectといった先進的なデバイスの開発で中心的な役割を担ってきたKipman氏は、これらのプロダクトに対する日本の開発コミュニティーの盛り上がりに強く関心を持っており、今回の来日が実現したという。

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