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「エンジニアとしての成長を実感できる」「もう戻れない」:

デンソーのアジャイル開発チーム6人が本音で語る――アジャイル・スクラム開発の良いところ、大変なところ、やりがい、向いている人とは

自動車部品のメガサプライヤーとして自動車関連システムの開発・提供も行うデンソーが、2017年5月22日にスクラム開発チームを発足。KDDIの支援サービスを受けながら、既に2カ月ほど開発を進めており、チームメンバーの生産性とモチベーションの向上という成果が出ている。では、実際にスクラム開発に参加しているメンバーは、「スクラム」についてどのように感じているのだろうか。6人のメンバーにざっくばらんに語ってもらった。

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ゼロからのスクラム開発――実際のところはどうだった?

 現在、自動車にかかわる市場環境は大きな変革期を迎えている。若者の自動車離れが危惧される一方、「自動運転」「コネクテッドカー」の進化が著しく新たな市場として注目されている。しかし、その新市場に先鞭(せんべん)をつけたのは、GoogleやTeslaなどの新興企業だ。自動車業界に限らずだが、業界内の既存企業は、こういったディスラプターによる市場変革の波にさらされているといえるだろう。

 このような環境の変化を受け、自動車部品のメガサプライヤーとして自動車関連システムの開発・提供も行うデンソーには、ディスラプターに負けないスピードでITサービスを開発するために、自社の開発体制を変革していく取り組みを行っている。2017年4月には攻めのIT部隊としてデジタルイノベーション室を新設し、2017年5月22日に米国で広まったアジャイル開発のフレームワーク「スクラム」を取り入れた開発チームを発足。導入に際してはKDDIの支援サービスを受けながら、既に2カ月ほど開発を進めており、チームメンバーの生産性とモチベーションが向上するという成果が出ている(関連記事)。

 では、実際にスクラム開発に参加しているメンバーは、「スクラム」についてどのように感じているのだろうか。6人のメンバーに、スクラム開発に参加した経緯、良かった点、苦労している点、やりがい、「どのような人が向いているか」などについて、ざっくばらんに語ってもらった。


開発現場の様子

――現在のスクラム開発チームに入った経緯、または現在のポジションについて教えてください。

坂口さん デンソーのデジタルイノベーション室で主にビジネス開発を、このチームではプロダクトオーナーを担当しています。もともと事業企画に携わっていて、新しい分野を担当することが多かったので、その経験から今回の仕事にも参加したいと思いました。

中山さん デンソーの情報通信系の製品を扱っているICT事業部で、車載器用の組み込みソフトウエアを手掛けていました。2、3年前から、車載器に集めたデータを分析する、ビッグデータ分析を担当し始め、データベース系の仕事に携わるようになりました。そして、2017年4月にデジタルイノベーション室が立ち上がるということで、このプロジェクトに参加したいと手を挙げました。現在は、開発チームのスクラムマスターを担っています。

佐藤さん 2017年5月にデンソーに中途入社しました。もともと大学でソフトウエア研究の博士号を取得し、その後、総合電機メーカーでソフトウエアの研究所に勤めていましたが、ソフトウエア中心の会社で働きたいと考えるようになり、転職を検討するようになりました。そんなとき、成迫さん(関連記事参照)と出会い、ある“思い”を聞きます。

 当時アジャイル開発は1つのキーワードでしかありませんでしたが、それだけではなくオープンソースソフトウエア(OSS)やクラウドなど最先端のソフトウエア技術をうまく生かし、モビリティに関するソフトウエアを素早くデプロイして提供したいというのです。最先端のソフトウエア技術を駆使しながら仕事に取り組めるということで、このチームに参加しました。

 もともと1年ほどアジャイル開発の経験がありました。それ以前にも2011年に出版された『アジャイルサムライ』(オーム社刊)を早い時期から読んでいて、この中の一部の要素を取り入れながら開発を行っていましたね。「途中で仕様変更があっても、こうすれば柔軟に変えられる」という感じでアジャイル開発の要素を活用していましたが、本格的なスクラム開発は今回が初めてです。

吉田さん このチームには、デベロッパーとして参加しています。今まで、アジャイル開発は言葉では知っていましたが、実際にデンソーが開発に取り組むと聞いて、チームに参加しています。

近藤さん 私もデベロッパーとしてチームに参加しています。スクラム開発を行うことに加え、OSSでの開発を行うことに興味があったので、参加することを決めました。また、ゼロから開発をスタートするところも魅力に感じました。

ヴァッサーさん 今回のチームでは、スクラムやクラウドを取り入れて開発するとうかがっていました。プロジェクトがスムーズに進むように、コンサルティングを担当しています。


現場ではメンバーのプロフィールを貼り出している

スクラム開発を経験すると、もう戻れない

――実際にスクラム開発を経験してみて、どのように感じていますか?

ヴァッサーさん ウォーターフォール開発では、プロジェクトマネージャーが要件を定義して、技術を選定して、タスクを切って、それを受けて開発を進めていました。エンジニアは受け身の立場だったのです。これに対して、スクラム開発は、さまざまなことをチームメンバーが決めることができ、開発のオーナーシップを持てることが良いところだと思います。

中山さん スクラム開発では、プロダクトオーナーとスクラムマスター、デベロッパーという役割がしっかりしているのがメリットですね。プロダクトオーナーは1人で、何をどういう順番で作ればよいのかを決める責任を担います。

 従来では何人ものビジネス側の担当者が横並びでいて、それぞれが違った意見を持っているため開発現場が混乱するというケースもありましたが、スクラム開発では、プロダクトオーナーが決めたことにしたがってチームメンバーが開発を進めるので、方向性がブレないというメリットがあります。

近藤さん 2017年5月22日に発足してから、1週間を1スプリントとして、現時点で8スプリントが終わっています。スプリントごとに毎回「振り返り」を行い、そこで課題に挙がったことは必ず改善しています。そのため、デベロッパーは常に課題がない状態になっています。


デンソー 佐藤さん(デベロッパー)

佐藤さん デベロッパーとしては、すぐに開発に入ることができる点がメリットです。従来の開発では、途中で課題が出てきたところを飛ばしながら先の開発を進めていますが、スクラム開発では、そもそも課題がないので、効率良く計画通りのペースで開発を行えます。

 またスクラム開発は、定時で必ず終わらせています。就業時間内に集中して開発を行い、定時で帰るというワークライフバランスの取れた生活ができるようになったことがうれしいですね。

吉田さん 昼休みや会議の時間など、開発チームが働き方のすべてのルールを決められるのはとても良いですね。実際に、このチームでも最初に集まったときに、「ワーキングアグリーメント」として、会議時間や休憩時間などのルールを決めました。

――ルールを自分たちで決めるということですと、スクラム開発でよく聞く「朝会」ではなく、昼に「デイリースクラム」を行うようにしていますね。これは、どういった経緯で昼に行うようにしたのでしょうか?


デンソー 中山さん(スクラムマスター)

中山さん デイリースクラムを朝に行うと、電車遅延などの理由で間に合わない可能性があるからです。スクラムコーチからの助言を得て、デイリースクラムの開始時間を12時15分に決めました。デイリースクラムは重要なプランニングの1つなので、全員が常に揃っている必要があると考え、お昼休み前に実施しています。朝は、5分程度で各メンバーのその日の仕事内容を確認するくらいです。

 またデイリースクラムを朝に行うと、ズルズルと時間が長くなってしまう可能性があります。昼に行うと、早くお昼休みに行きたいので、きっちり15分で終わらせるようになるのもポイントですね。

――他にも、独自ルールとして「打ち合わせの参加者はデベロッパーが決める」というワーキングアグリーメントがありますが、これはどのような意味があるのでしょうか?

佐藤さん 打ち合わせをする際に、必要最小限の人だけではなく、関係者まで含めて、いつの間にか大人数になっていることはよくある話です。打ち合わせに、課長以上の方やステークホルダーが入ってくることもあります。そのような打ち合わせでは、上役の顔色を伺いながら、その意見に左右されてしまうケースも出てきます。スクラムでは、機能開発においては、デベロッパーだけで打ち合わせをして、他の方にかかわらせないようにしています。

吉田さん 基本的には開発者中心の打ち合わせで、必要があれば、プロダクトオーナーなど、疑問に答えられる方をその場で呼んで、参加してもらっています。

中山さん 定例の打ち合わせは、毎週木曜日に行うようにしているだけです。それ以外は、デベロッパーが必要なときに必要な方を集めて行っています。そのため、打ち合わせで1週間のうち何十時間も取られることはありません。


吉田さん(デベロッパー)

吉田さん スクラムは、モノを作るという点において、無駄を極限まで削ぎ落としている開発手法であると感じています。ウォーターフォール開発を行っていた頃は、設計に2週間かけて、10〜20時間の会議を行っても、いざ開発すると設計仕様に起因するバグが出るという結果でした。しかしスクラム開発では、常に課題を解決しながら開発しますので、バグが出ることも少ないです。また、余計なドキュメントも作成しないようにしており、通常業務においてはExcelやPowerPointはほとんど使っていません。すべてホワイトボードと付箋に情報を集約して、開発を進めていきます。この開発だけに集中できる環境を経験すると、以前の環境には戻れません。

開発言語が一晩で変わったこともありました

――スクラム開発に携わってみて、苦労している点はありますか?

佐藤さん デベロッパーとしてはないですね。むしろ、プロダクトオーナーやステークホルダーから開発チームへの要望があるかもしれないので、その点が気になるところです。


デンソー 坂口さん(プロダクトオーナー)

坂口さん プロダクトオーナーは、スクラムチームが自分たちで作った規律で生産性の高い開発ペースを維持するために、「次に何をすべきか」「どの順番で進めるべきか」を毎週タスクレベルまで落とせるようにデザインしていきます。これは、社内だけではなく、社外もかかわってくるので、チームメンバーのタスクについて何かしらアイデアを持つようにしており、タスクがないという手ぶらの状態では出社できません。これは大変な仕事ですが、ここを頑張らないと、せっかくスクラムチームがうまく動いていても、迅速に開発が回せなくなってしまいます。

――スクラム開発の導入に際してKDDIがコーチングしているとのことですが、どのようなサポートやアドバイスをもらいましたか?

中山さん まず「スクラム開発とは何なのか、どこから始めたらいいのか」について、タスクを整理するためのホワイトボードの作り方から手取り足取り教えてもらいました。これは、我々だけではできなかったことです。ある程度スプリントが回り出してからは、改善ポイントだけを的確に指摘してくれるので、とても助かっています。

――スクラム開発について、エンジニアとしては、どのようなことがモチベーションになっていますか?

吉田さん スクラム開発では、実際のビジネスやサービスに直結したリアルな開発、エンドユーザーの顔が見える開発ができる点でやりがいを感じています。

佐藤さん スクラム開発で1週間のタスクを決めることは、ビジネス価値を創造することにとても近いと考えています。たとえば、スクラム開発では、画面のボタン配置や色、エラーメッセージの場所などを1つ1つ確実に決めてから作業に取り掛かりますが、このとき、お客さまの目線や考え方を突き詰めて議論し、画面構成や操作方法などを決めていきます。従来の開発はそこまで考えることはなく、お客さまを意識していなかったと改めて感じています。これは、スクラム開発の持つ大きな価値だと思います。

――UIデザインの専門家がいないことが、モチベーションにつながっているということでしょうか?

吉田さん UIデザインだけではなく、インフラの専門家もいません。そのため、デベロッパーは、アプリケーションだけではなく、インフラからアーキテクチャ、操作手順、画面構成まで考えます。やらないことは、ほぼないのが実情です。


近藤さん(デベロッパー)

近藤さん 与えられた仕事をやるのではなく、スプリントで決まった1つ1つの仕事を、デベロッパーが皆で取り合って進めていくというスタンスは面白いですね。

佐藤さん もし、1人でできないことがあっても、メンバー皆で集まって、解決策を見つけながら作り上げていくことができます。

坂口さん 自分たちで決めて、分からなかったら皆で議論するので、共通の価値が生まれます。全員がゼロからのスタートだった点も、結果的に良い方向につながったと思います。

ヴァッサーさん 開発言語が一晩で変わったこともありました。

吉田さん もともとJavaで作ろうとしていましたが、1スプリントを回してみて、チームで打ち合わせをしたときに、多数決でGo言語に決まりました。誰も触ったことがありませんでしたが、「今一番ホットなプログラミング言語」ということでチャレンジすることになりました。

佐藤さん 1つの言語だけではなく、さまざまな言語や技術を身に付けざるを得ない状況は、エンジニアとしては非常に楽しいと思います。

中山さん Go言語を採用すると決めた際も、スクラムマスターとしては、デベロッパーが自分たちで決めたことは、自分たちの判断で進めていくというプロセスの中で、メンバーが急速に成長したことを感じました。

過去の成功体験に縛られずに、今まで自分の中に持っていた“当たり前”を捨てる覚悟を

――今後のキャリア観と、エンジニアが担うべき役割についてどのようにお考えでしょうか。今後、自身がどのようになっていきたいか、どのようなものを作りたいか含めて、教えてください。

佐藤さん 今回のスクラム開発で、UIデザインからアプリ開発、インフラまで俯瞰で手掛けてきましたが、今後、この全体のレベルを上げていきたいと考えています。そして、次の開発でも全体を見ながら開発を進め、フルスタックエンジニアとして成長していきたいという気持ちが強いですね。その一方で、今まで自分たちが取り組んできたスクラム開発の経験やノウハウをどう社内に展開していくのか、また、コーチングの立場になって社内にどう広げていくかという点も次のステップとして見据えています。

――これからのエンジニアはフルスタックの技術力が必要になるということでしょうか?

佐藤さん 今の技術はOSSでどんどん変わっていくので、一部分だけしか開発できないエンジニアは、次の技術革新についていけなくなり、既存システムの改修だけの仕事になってしまう可能性があります。エンジニアにとっては、新しい価値を生み出したり、これまでにないソフトウエアを作ったりすることが大きなモチベーションになりますので、そのためには、フルスタックで網を張っていないと生き残るのは難しいと感じています。

吉田さん 得意なものではなく、できることをもっと増やしていきたいですね。スクラム開発は、デベロッパーが自ら選択できる環境なので、“境のないエンジニア”を目指したいです。そして、どんなサービスでも作れる開発者やチーム作りに貢献していきたいと考えています。

近藤さん OSSやクラウドなど新しい技術を覚えるチャンスがたくさんあるので、今後もデベロッパーとして、このチームでさまざまな開発プロジェクトにかかわっていきたいです。スクラムマスターにも興味ありますが、いまはデベロッパーとして開発を楽しみたいですね。

ヴァッサーさん 無駄のないソフトウエア開発を、もっと日本に浸透させたいと考えています。長年、日本の開発は無駄が多いと感じていましたが、スクラム開発がその解決策であると確信しています。今回のチームはとても優秀なので、スクラム開発をどんどん広げていってほしいです。

坂口さん プロダクトオーナーとしては、ビジネスやユーザーまで理解するという点については、このチームは共有できていると思っています。単にソフトウエアを作るだけではなく、価値を創造するという意識は、ビジネスにもつながっていくので、デベロッパーの言葉から、そこまで踏み込んで開発に取り組んでいることを感じています。いずれ、プロダクトオーナーを目指してくれることにも期待しています。

――2カ月あまりで表立った成果が出ているということで、デンソーではスクラム開発チームのさらなる拡充を進めるため、エンジニアや開発パートナーの増強に取り組んでいると聞いています。どのような方がスクラム開発に向いていると思いますか? または、どのような方と一緒にチームで働きたいですか?


ヴァッサーさん(コンサルタント)

ヴァッサーさん 過去の成功体験に縛られずに、今まで自分の中に持っていた“当たり前”を捨てる覚悟を持って、スクラム開発に取り組んでほしいと思います。新しい言語や開発手法は自然と身に付いていきますから。

吉田さん 私自身、このチームに参加したときには、今までのスキルをすべて捨てました。今までのエンジニアに多かった「職人気質」の方は、スクラム開発には合わないと感じています。

佐藤さん 技術的に貪欲な方が合っていると思います。「新しい言語を使いたい」「このツールを使ってみよう」など、守りに入るのではなく、最新の技術で、かつ安定しているものを積極的に取り入れていけるモチベーションがある方。また、「今までやったことはないが、何とかなる」という前向きな姿勢の人を求めています。

吉田さん デベロッパーは技術先行になりがちですが、自分の発言を怖がらずに、「あまり知らない技術だけど、使えそうだから使ってみよう」と提案するくらいの方が、前向きに走れると思っています。お互いに積極的にコミュニケーションを交わすことができるエンジニアと働きたいですね。

中山さん スクラム開発には、すぐ行動に移せる方が向いていると思います。たとえば、新しいことをやるときに、本を1冊じっくり読んでからやるのではなく、取りあえずやってみて失敗したら違うやり方を試したり、ほかの方に相談したりするという行動力がある方と一緒に仕事ができればと考えています。スクラムチームには上下関係もないので、後から入ってきた方でも、思ったことを言ったり、反対意見を出したりしても大丈夫です。

近藤さん やはり、コミュニケーション能力が高い方に来てほしいですね。特に、スクラム開発の場合は、チーム全体で共通の認識を合わせることが多いので、心の中にしまっておかずにどんどん出してくれる人が向いていると思います。

坂口さん プロダクトオーナーの視点からは、経験やスキルの有無に関係なく、よく喋る方がスクラム開発には適していると考えています。分かること、分からないことをはっきり言ってほしい。スクラム開発は、後で判断するということがないので、その時点で自分の考えを素直に言葉にできる人に来てほしい。仕事の面でもプライベートの面でも、自身の成長と楽しさ実感できるスクラム開発チームでともに働く仲間が増えていくといいですね。


デンソーでは、一緒にスクラム開発チームで働く方を募集しています

提供:KDDI株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2017年9月30日

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