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APIをデジタルビジネスプラットフォームの中心にするためにやるべき5つのことGartner Insights Pickup(36)

APIは、多くの企業にとって、もはや「取り組むべきかどうか」という段階にはない。人、企業、モノをつなぎ、あらゆるデジタル戦略の基盤になりつつある。APIを自社のデジタル基盤の中心にする取り組みで、注意すべき5つのポイントを紹介する。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 デジタルプラットフォームが盛んにもてはやされているが、アプリケーションリーダーが見失ってはならないことがある。それは、デジタルビジネスプラットフォームの最も重要な基本的要素はAPIだということだ。APIは人、企業、モノをつなぎ、デジタル社会とデジタルビジネスを動かしている。これらのつながりが新しいデジタル商品やビジネスモデルを実現し、新しいビジネスチャネルを生み出している。

 「APIはエコシステムの形成を伴うプラットフォームビジネスモデルを支えている」と、Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるパオロ・マリンバーノ氏は語る。

 「だが、最初にAPIに取り組むことが、必ずしもプラットフォームやエコシステムを実現する唯一の方法ということではない。一部の企業は、まずプラットフォーム作りを進めてから、APIを徐々に実験として提供し始め、エコシステムのパートナーと共同でプラットフォームをどのように機能させるかを探っていく」(マリンバーノ氏)

 マリンバーノ氏は、APIエコノミーの5つのベストプラクティスを次のように紹介している。

まず開発者ポータルを作り、デジタル市場へと発展させる

 通常、商用のAPI管理製品は開発者ポータルを構築できるようになっている。開発者ポータルは、プラットフォームビジネスを始めるに当たって極めて重要になる。開発者の世界ではAPIプロバイダーの顔となるからだ。開発者ポータルは、デジタル戦略を展開する土台であり、その構築はエコシステム構築の第一歩となる。

 「ポータルの使いやすさ、APIドキュメントの完全性、適切なAPIの探しやすさ、開発者が必要なAPIを迅速に見つけて試せることが、APIプログラムの成功に不可欠だ。企業がビジネスエコシステムの開発に乗り出す際に、開発者ポータルはAPIエコノミーへの入り口を提供してくれる」(マリンバーノ氏)

範囲の計画、プロセスの実施、成功または失敗からの学習を通じてハッカソンを賢く管理する

 ハッカソンは新しいアイデアを社外からも広く、あるいは社内で募ってテストするための優れた手段だ。あらゆるAPIプログラムの非常に重要な要素であり、エコシステムの構築に欠かせない。社内ハッカソンは、既存の従業員に新しいAPIスキルをトレーニングして身に付けてもらう方法でもある。また公開ハッカソンは、組織がこれまで知らなかったエコシステムパートナーと出会い、関係を築くきっかけになる。

 「一般的に、ハッカソンを(1回限りのイベントではなく)ビジネスの継続的な要素と位置付け、正式なイベント開催前にどのような提案に賞を与え、本番環境への導入を検討するかを計画していれば、ハッカソンは成功し大きな見返りをもたらすだろう。すなわち、プラットフォームやエコシステムを活性化させてくれるはずだ」(マリンバーノ氏)

自社のAPIと他業種のAPIを組み合わせ、現在のビジネス領域を越えた価値シナリオを発見する

 多種多様なビジネスモーメント(ビジネスの機会や契機)とそれらがもたらす価値シナリオには、複数の業種が関わる。例えば、ヘルスケア関連のAPIを提供している企業があるとする。そのAPIと保険関連のAPIを組み合わせることで、そのヘルスケア企業と顧客の保険会社が恩恵を受ける新しい保険アプリケーションが開発できるかもしれない。API市場はまだ初期の段階にあるが、企業は自社のAPIとその市場を、他業種に属するAPIや市場と組み合わせる機会(例えば、共同ハッカソンなど)を探らなければならない。

開発者の声に耳を傾け、イノベーションの機会も追求する

 人々がAPI公開で陥る、正反対ながらも同様に致命的な2つの失敗がある。1つは、開発者が何を求めているかに十分耳を傾けず、統合プラットフォームから直接、APIを数多く公開し過ぎてしまうこと。もう1つは、開発者の声に耳を傾け過ぎて、APIを利用する一般的なアプリケーションのニーズを考慮せずに、目先の機会にしか対応しないことだ。

 ここがAPIプロダクトマネジャーの腕の見せどころになる。APIプロダクトマネジャーが成功するための課題の1つは、この両極端の間にある“スイートスポット”を見つけることだ。

最初はプラットフォームや市場をモード2プロダクトのように扱うが、デジタルビジネスの本格的な拡大につなげるために、それらをモード1へと進化させる

 バイモーダルはAPIを必要とし、APIはバイモーダルを必要とする。だが、それは出発点にすぎない。バイモーダルは、ビジネス上の変更を反映したITの開発および実現プロセスに見られる2つのモードを管理するプラクティスだ。この2つのモードは別々でそれぞれ一貫性がある。1つは安定性に重点が置かれており(モード1)、もう1つはアジリティに重点が置かれている(モード2)。APIプラットフォームは、モード1 APIとモード2 APIの両方で構成される。

 「当然のことながら、企業はエコシステムパートナーが自社のAPIレイヤー上に、完全にモード2のテリトリーに属するソリューションを開発していくことを望む(そのソリューションは自社の市場の一部になるかもしれない)。そのためには、APIプラットフォームを拡充していく必要がある。この拡充は時間をかけて小さな実験を積み重ね、プラットフォームのリーチと需要をその都度把握しながら行っていくことになる」とマリンバーノ氏は説明する。

 「いずれは、開発されたソリューションの中には、重要ではなくなって消え去るものも出てくるだろう。だが、その一方で、安定性が増してユーザーの間で定着し、モード1に移行するものもあるだろう。そうなれば、デジタルビジネスが本格的に拡大軌道に乗ったことになる」(マリンバーノ氏)

出典:Put APIs at the Center of Your Digital Business Platform(Smarter with Gartner)

筆者  Christy Pettey

Director, Public Relations


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