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「嫌なら辞めろ」を実践するということあるエンジニア、かく語りき2(4)

会社が嫌い? それなら、辞めればいいじゃないですか。私は止めませんよ。

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あるエンジニア、かく語りき2」は、エンジニア参加型メディア「エンジニアライフ」から、@IT自分戦略研究所編集部が独自の視点で選んだ“良”コラムを転載するものです。

 市井のエンジニアが人生の節目節目で考えたことをつづる本連載。シーズン1は、“一介の職業エンジニア”松坂高嗣さんがエンジニアのキャリアを解説した。シーズン2は、複数のエンジニアたちが、エンジニア生活のリアルをお届けする。


辞める自由とその代償

 以前、ホリエモンこと堀江貴文さんが「嫌だと思ったら辞めれば? 辞めるのは自由よん」とTwitterで発言していた。「嫌な会社で働き続けるぐらいなら、辞めればいいのに」ということだ。この意見にはおおむね賛成だ。

 世の中には勤める価値のない会社なんていくらでもある。また、会社は従業員の人生まで保障してくれない。むしろ、笑顔で搾取するようなところもある。

 だが忘れないでほしい。会社を辞めたら、あなたは失業する。

 辞めるのはいいが、計画的に辞めよう。勤め続けていれば最低限の給料は得られるし、次のステップに進むための時間も稼げる。自分の課題を見つけたり、そこでしか得られない知識や技術はないか見直したりしておこう。逃すともったいない。

 逆に会社にとって、「あなたが辞める」なんて大したことではない。

 従業員が1人辞めたくらいでは、会社は何も変わらない。1人分給料を払わなくてよくなるので、意外と気楽だ。一時的に仕事の調整が大変になるが、誰かが頑張るので何とかなる。

 会社という組織は、人が1人辞めた程度で揺らぐものではない。人が辞めても仕事が回るような仕組みになっているのだ。

その報復には意味がない

 嫌なら辞めてもいいが、変なことはせずに辞めよう。

 「会社の横暴が過ぎる」と労働基準局などに相談することもできる。しかし報復目的で労働基準局へ通報するのは止めよう

 それは、あまり効果がない。会社には社会保険労務士がついている。労働基準局に通報が行くと、会社は社労士に相談して対策を立てる。報告を求められたり業務改善の通告は行ったりするかもしれないが、それが済んでしまえば会社はいつも通りの通常運転に戻る。求人や取引などが不利になることは特にない。

 ちなみに労働基準局には匿名で通報できる。辞める直前に通報するぐらいなら、嫌だと思った時点で匿名で通報する方が良い。労働基準局の仕事は会社にダメージを与えることではない。正常な運営を促すことが仕事なのだ。会社で働いている人に損害が及ぶので、公的機関として制裁を加えるようなことはしない。

 引き継ぎのドキュメントに紛れて怪文書を残しても意味はない。普通に削除されて終わるだけだ。上司や同僚に嫌だった人の悪評を流しても意味がない。あなたの生活に何の変化も及ぼさない。故意で損害を与えるような行為をすれば法的に罰則がある。重要なデータを壊したら器物破損になるし、秘密を漏えいしたら機密保持契約に引っ掛かる。

恨むのは非効率

 「こいつ一生恨んでやる!」と思っていた人でも、転職して3カ月もたつと名前も忘れてしまうものだ。目の前の仕事に視点がシフトして意識が向かなくなるからだ。辞められた会社の側も似たようなものだ。いつまでも辞めた人のことを覚えてはいない。たまに「そういえば、あんな人いたな」と話題に上る程度だ。

 嫌なものと距離を置くとお互いが幸せになる。恨んだり憎んだりという行為は、実は相手との距離を縮めているのだ。人をぶん殴ろうと思えば、手が届く距離に移動する。強く憎んだり恨んだりすればするほど、相手に近づき注意がいく。物理的な距離にせよ、精神的な距離にせよ、近ければ相手から悪い影響を強く受けやすくなる。

 「嫌なら辞める」は人を恨んだり憎んだりしないためのテクニックだ。仕事を辞めても本質的には何も変わらない。人を恨んだり憎んだりすることを止めたときに「変化」が訪れる。恨んだり憎んだりするより、エンジニアなら技術に集中しろということだ。お花畑のような優しさで人を許せるほど、世の中は甘くない。

やるべきは「決断」

 辞めるべきか迷ったときにやるべきことは「決断」だ。

 嫌だと思うなら何かを決断しなくてはいけない。会社に居続けるにしろ、辞めるにしろ、どうするかは自分の意志で決めよう。そうしないと自分で考える力がつかずに成長できなくなる。嫌だと思ったら徹底的に考えよう。たまに改善策が浮かんで逆転できる。

 さっさと決断して辞めた方が、次へ生かせるメリットは多い。何かが嫌になり過ぎると思考が働かなくなってしまう。思考が働くうちに決断して辞める方が、追い詰められてから辞めるよりダメージが少ないし、復習できたり、新しい取り組みを始められたりする。ただし、「客観的には根性なしに見える」というデメリットもあるが。

 「嫌なら辞める」は意外と根性が要る。

 今の日本でどれだけの人が、嫌いなものを嫌いと主張できるだろうか。「嫌なら辞める」を実践する場合、主張に行動が加わる。この先どうなるか分からないという未知のリスクにも挑むことになる。

 これが「嫌なら辞める」を実践するということだ。

 実際にやってみないとこの言葉の意味は分からない。1つの組織に何年もい続けるというのも1つの価値だ。自分で決断して辞めるのも1つの価値だ。「嫌なら辞める」は失うものも大きいが、「スクラップ&ビルド」というヤツで、自分の人生を大きく好転させる転機にもできる。

 辞めるなら淡々と辞めて、新しい境地を目指せ。


どの道を行くにせよ、決めるのは自分だ(画像はイメージです)

コラムニスト

Anubis

Anubis 名もなき火消しエンジニア。サポート、社内SE、構築を渡り歩き今に至る。肩書は一切なし。

このコラムは自分への挑戦だ。自分の書いた文章だけでどこまでいけるか、挑んでいきたい。

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