@IT情報マネジメント会議室は、2009年4月15日に新システムに移行しました。
新たに書き込みを行う場合には、新しい会議室をご利用ください。
- PR -

頂けない「オブジェクト指向は構造主義」

投稿者投稿内容
こめ
会議室デビュー日: 2004/10/12
投稿数: 4
投稿日時: 2004-10-12 22:25
いつも勉強させて頂いております。

http://www.atmarkit.co.jp/farc/rensai/uml_b_l02/uml_b_l02b.html
「UML BASIC LECTURE(2)クラス図の落とし穴」
があんまりだったので、ちょっと苦言を。
(本来であればメールでひっそり慇懃にお送りしたいところなのですが、そのようなパスがないようなので・・・)

■ 「オブジェクト指向は構造主義」か?
そもそも構造主義とは何かを理解されておられないように思いました。構造主義とは大雑把には「社会や歴史の根柢に普遍的な構造を見て、そこから社会、歴史を理解する」立場とその方法論を意味していると言えるでしょう。思想史的には、資本と労働から社会と歴史を解釈したマルクス主義へのアンチテーゼとなります。
さて「オブジェクト指向は構造主義」これを言い換えてみると、「オブジェクト指向は社会や歴史の根柢に普遍的な構造を見る立場」となります。違いますよね。オブジェクト指向とは現実を振舞いと属性を持つオブジェクトの集合として捉え、解釈するものですから、構造主義とは一切無関係だと思います。

■「クラスの意味は周囲のほかのクラスとの位置関係(位置価)で相対的に決まる」か?
クラスという概念は本来、オブジェクトを抽象化したものと考えられます。クラスが他のクラスとの差異によってのみ定義される、と言えばそりゃまあ結果的にそういうことは言えるかもしれませんけど、そんなことを言い出せば言語一般(日本語英語タガログ語)、全てにこのことが当てはまってしまいます。これを以ってしてオブジェクト指向が構造主義というのは無茶です。

■ 「(前略)ということがフェルディナン・ド・ソシュール氏が言語学で応用した構造主義的な考え方」?
これはちょっと酷いですね。「ソシュールが応用した構造主義的考え方」というと、なにやら構造主義的な考え方というものが存在していて、それをソシュールが使って言語を分析したように聞こえますが、事実はその逆です。ソシュールが言語を分析する際、そこにラングとパロールを見た。大雑把に言うと、ラングは社会に暗黙に存在する無意識的構造、そしてパロールはその発現となります。そのように言語(パロール)という(個人的)表れに対してラングという構造を見出す方法が、後にレヴィ・ストロース等のヒントとなり、構造主義が生まれたわけですね。

■ 「構造主義的な考え方を簡単にご紹介しましょう」以下の例え。
ジャンケンの例え以下はお話にならないです。構造と差異関係を取り違えているという指摘で十分でしょう。

控えめに言ってもトンデモ解釈です。ひも理論のところも怪しいと思います。

ちょっとキツイ言い回しになって申し訳ありませんが、ちょっとこれはあんまりでは、と思いましたので。

[ メッセージ編集済み 編集者: こめ 編集日時 2004-10-12 22:32 ]
こめ
会議室デビュー日: 2004/10/12
投稿数: 4
投稿日時: 2004-11-11 10:32
ええと、これで最後にします。
よく似た主張を見つけました。(ひょっとして元ネタでしょうか?)
http://www.sra.co.jp/people/aoki/IntroductionToOOAOOD/chapter2/Chapter2.htm
ここでも構造主義が出てきています。仏教(密教のようですね)についても言及されていて、もう何でもアリって感じです。

オブジェクト指向を通俗人生論(哲学じゃないね)まで高めようとする無謀な試みですね。どうしてそうなるんですかね。オブジェクト指向は、せいぜいが認識論止まり、それもソフトウェア工学と論理学を混ぜたようなものであって、論理学といってもその概念を利用しているに過ぎないです。(新たな成果があるわけじゃない)
哲学チックなことを言いたいなら、オブジェクト指向とは離れた方が間違いありません。そうですね、ソクラテス、プラトンあたりからやり直したほうがいいと思います。

この程度のことで目くじら立てなくてもいいんじゃないの、という方もいらっしゃるかと思いますが(私も少しはそう思いますが)、あまりにも雑な思考なのでちょっと黙ってはいられないという気持ちになっています。読んでいると胸がどきどき、頭がくらくらしてしまいます。

私より頭の良い人がこの文章を書いていることは良く分かるのですが、この構造主義やら仏教やらの持ち出し方は明らかにデタラメです。勘弁してくれよ、と思っています。
tak3
ベテラン
会議室デビュー日: 2004/04/15
投稿数: 80
お住まい・勤務地: 菜の花・銀杏
投稿日時: 2004-11-11 12:19
「構造主義って何?」な、自分にはとても高度で手が出せない話なのですが、ちょっとだけ

引用:

オブジェクト指向とは現実を振舞いと属性を持つオブジェクトの集合として捉え、解釈するもの


正しいと思いますが、一側面でしかないと思います。
オブジェクト指向でも、分析、設計、プログラミングとあると思いますが
オブジェクト指向の分析、設計においては抽象化、汎化が重要だと思います。
この場合は、オブジェクトが振る舞いと属性をウンヌンよりも、構造などを考えるほうが、
より正しい分析、設計ができるのではないかなと思います。
引用:

構造主義とは大雑把には「社会や歴史の根柢に普遍的な構造を見て、そこから社会、歴史を理解する」
(中略)
「オブジェクト指向は構造主義」これを言い換えてみると、「オブジェクト指向は社会や歴史の根柢に普遍的な構造を見る立場」となります。



「普遍的な構造を見て」と「理解する」が頭にすんなり入りました。
で、私なりに言い換えると・・・
「オブジェクト指向はオブジェクトやオブジェクト同士の関係に普遍的な構造を見て、
そこからオブジェクトやドメインを理解する」
としました。
# 飛躍しすぎですか?

こめさんの投稿を否定してるわけではありません(否定できるほど構造主義を知りませんので)
「オブジェクト指向は構造主義か?」に対する私の答えは、「わからない」ですし、
今の私にとっては「どうでもいい」と思っています。
ただ、こめさんからの投稿で上記もの導かれたので非常に感謝しています。
ぽんす
ぬし
会議室デビュー日: 2003/05/21
投稿数: 1023
投稿日時: 2004-11-11 12:56
レヴィ・ストロースの、交叉イトコ婚についての鮮やかな説明は
とてもおもしろいのですが...

ざっと言ってしまうと、ものごとの要素ではなく関係性に注目するのが
構造主義なんじゃないかしら?
オブジェクト指向は要素に注目するわけで、
構造主義とは全く関係ないような...
taro
ぬし
会議室デビュー日: 2003/10/20
投稿数: 316
投稿日時: 2004-11-11 13:19
ひも理論についての言及も頂けないですね。
なぜ「オブジェクト指向vsひも理論」と対立する関係としているのかは
本文中でも言及されていないようのですが、続編があるのでしょうか?
こめ
会議室デビュー日: 2004/10/12
投稿数: 4
投稿日時: 2004-11-12 21:09
皆さんの投稿を見て少し落ち着いてきました。ありがとうございます。
ようやくtak3と同じく「どうでもええよ」という境地になりかけておりますので、総括という意味で少し冷静になってまとめてみます。

「関係」「本質」といった曖昧な言葉を、無反省に使っているところがそもそもの混乱の元になっている、と私は考えています。

UMLの用語である「関係」はUMLのコンテキストでちゃんと正確な意味を担っているのに(限定子や多重度等の概念によって曖昧さなく定義されている)それを無視し、日常会話的な「関係」概念と差替えてしまっていること。またソシュールのラングにおける差異をやはり安易に「関係」と呼び、極めて単純な類比によって「似てます」と言い切ってしまっている、その辺りが非常に乱暴かと思われます。
「似てるから何?」という問いまで思考を進めていないところも頂けない。

「本質」という言葉については一般に注意が必要です。「〜の本質とは」とか「ほんとうの〜とは」などという主張には確実に何らかの意図が隠れています。こういう主張に会ったらまず「怪しい」と思っていれば間違いがない。何か押し付けようとしているな、と。(そういう意味では最近のUMLの持ち上げられ方はかなり胡散臭いものを感じています。「UMLによってシステムの本質を抽象化して取り出す」などというスローガンには苦笑してしまいます。)

UML1.5の仕様を見ると、システムをモデル化=抽象化することによって、ステークホルダーからみた多様な側面を把握できるのがUMLのメリット、という表現があります(2.15.4.4 モデルの辺りです)。抽象化によって唯一絶対の真理である本質にたどり着くことが目標ではなく、多様な観点からそれぞれ妥当なレベルの抽象化を行うことで、システムの強みを規定するのである云々という表現があり、私はまずまっとうな考えだな、と思います。唯一絶対の本質などないのだ、と。さまざまなパースペクティブから見た、多様な「本質」があり、その妥協点が重要なのだ、そういうことだと私は解釈しています。

オブジェクト指向で世界観やら人生を語りたい人は語って下されば結構なんですけど、せめて語句に気をつけてほしいものです。




[ メッセージ編集済み 編集者: こめ 編集日時 2004-11-12 21:17 ]
unibon
ぬし
会議室デビュー日: 2002/08/22
投稿数: 1532
お住まい・勤務地: 美人谷        良回答(20pt)
投稿日時: 2004-11-12 22:12
unibon です。こんにちわ。

話が広くなりすぎるとちょっと私には大変なので、以下はとりあえず @IT の当該の記事(Page1
〜Page3)についてのみ触れます(青木淳氏の著作については触れないことにします)。
この記事の説明は、私には分かりやすかったです。しっくりきた、という感じでしょうか。こういうことは、一種、あたりまえすぎる(とはかならずしも言えませんが)こともあり、あえて平易に解説したものは今までそんなになかったので、ちゃんとした記事として存在していることにはとても価値があると思います。
もっとも、私にとっては、最初、ソシュールって誰?構造主義ってなに?という感じでした。でも、国語辞典にも載っていることでもあり、そんなに的外れではないし多少の比喩があっても構わないとも思います。
http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%A5%BD%A5%B7%A5%E5%A1%BC%A5%EB&kind=jn&mode=0
http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%B9%BD%C2%A4%BC%E7%B5%C1&kind=jn&mode=0
ぽんす
ぬし
会議室デビュー日: 2003/05/21
投稿数: 1023
投稿日時: 2004-11-13 05:18
引用:

こめさんの書き込み (2004-11-12 21:09) より:
「本質」という言葉については一般に注意が必要です。「〜の本質とは」とか「ほんとうの〜とは」などという主張には確実に何らかの意図が隠れています。こういう主張に会ったらまず「怪しい」と思っていれば間違いがない。何か押し付けようとしているな、と。



# ヨタ話。
現象学で「本質直感」と言いますよね。
本質直感に基づいてクラスを設計する、というのはどうでしょうか

スキルアップ/キャリアアップ(JOB@IT)