PHPに関する書籍は多く出版されているが、その多くはデータベースとPHPを利用したWebアプリケーションのみを取り扱っており、それ以外の方法を詳しく解説していない。本書はPHPで本格的なWebアプリケーションを作成する方法や、実際にPHPを利用して開発されているWebアプリケーションのしくみを紹介するなど、広範囲に渡ってPHPプログラミングについて解説している。 最初の章ではPHPのインストールなどについて説明している。内容は簡単ではあるが、UNIX環境上でのインタープリターバージョンおよびApacheモジュールとして、ソースからコンパイルする方法を解説している。また、通常ウィンドウズ版のPHPは最新のものがバイナリーで提供されているが、コンパイルが必要になった場合の方法も説明している（ただし、Microsoft Visual C++ 6.0 Professional Editionといくつかのサポートファイルが必要になる）。
そのほかにMySQL、PHPでGIFを作成するためのGDライブラリ1.3、XMLパーサのExpatなどのインストール方法も説明している。ただし、これらはUNIX環境のみとなる。
本書では主に、以下の項目について解説している。
- 変数、定数、データ型、演算子
- 条件文であるif文やswitch文、ループであるwhileやfor
- PHPファイルに外部ファイルをインクルードするincludeとrequire
- 関数
- 配列
- オブジェクト指向プログラミング
- 文字列操作と正規表現
- ファイル操作とデータの保存
- PHPデータベースとSQLデータベース
- PHPとLDAP
- XML
- 画像の生成と操作
- PHPのネットワーク接続
- 電子メールの送受信
- クッキー
- デバッグとエラー処理
- セキュリティ（ユーザー認証方法、SSLを利用したプログラムなど）
- テンプレート
PHPはデータベースとの連携が注目されがちだが、本書はPHPでファイルシステム（CVSファイルなど）や非リレーショナルデータベースファイルを処理する方法についても説明している。 データベースプログラミングについては、MySQLを利用したサンプルプログラムを紹介しながら、MySQL APIおよびSQLコマンドについて説明している。基本的なSQLコマンドのみでプログラムを開発するなら本書の説明で十分だろう（ただし、本格的なプログラミングにはMySQLの解説書を参考にする必要がある）。
PostgreSQLをデータベースとして利用する場合、本書で説明しているMySQL用のPHPスクリプトをごく一部だけ修正すればそのまま使用できる。本書でもPostgreSQL用のサンプルプログラムを紹介しているが、詳しい情報は他の書籍を参考にした方がいいだろう。
ケーススタディーとして、ショッピングカードアプリケーション、掲示板アプリケーション、データベースを利用した3階層のアプリケーションについて説明している。最後の3階層のアプリケーションは、実際にPHPで作成されているMDB（Metalloprotein-site Database and Browser）を取り上げ、コードについて検証している。巻末にはPHP関数、Webサーバー環境変数、正規表現など、開発中に必要になる情報が簡単にまとめられていて便利だ。
本書は、PHPプログラミングを本格的に扱った良書である。PHPでWebアプリケーションを作成するうえでヒントとなる情報が多く掲載されている。内容は多岐にわたっており、Webコンテンツ開発中級者以上が対象になるだろうが、PHP自体はJSP、JavaServlet、Perlなどに比べて簡単な言語であるため、HTMLとJavaScriptがわかる人なら本書でPHPを理解することはできるだろう。またWebアプリケーション開発で他の言語を探している人は、本書でPHPの可能性を探ることができる。（相馬 聖）
インプレス技術書の新機軸――PROGRAMMER TO PROGRAMMER 力が入ってます。
古くは「パワフルテクニック大全集」などで実践的なプログラミング書を提供していたインプレスですが、近年少し開発系の書籍の点数が減っていました。
しかし、2001年改めて、日本のITユーザーではなく、IT技術を支える開発者の方々のための新シリーズを立ち上げました。その第1弾の1冊がこのPHP本です。 PHPの作者をして、米国O'Reilly社からの書籍執筆のオファーに対して「いや、あの本があるので私が書くことはもうありませんよ」と言わしめたというPHPの名著の邦訳です。 今までの、「大きいものはすばらしい」という国民性に合わせてページ数だけをやたらと増やす米国の「職業ライター」の書いた商業出版のための書籍とはひと味もふた味も違います。現場で実際にPHPを使っているプログラマが、PHPを学ぶのに、PHPを使うのに必要な情報をまとめあげた原稿を、多数のテクニカルエディタが寄ってたかって技術チェックをしたものなのです。もちろん日本でも、その筋では有名な武藤健志さんが力を込めて技術監修し、監注もたくさんいれています。
確かに書籍としては粗削りかもしれませんが、実際に読んでください。実際に使ってください。リファレンスをちょっといじっただけの本とは違う、実際に役に立つ技術解説書というものの味をじっくりとかみしめてください。必ずやあなたの血となり栄養となるでしょう。
内容（「MARC」データベースより）
PHPの設定にはじまり、その柔軟な言語体系をくまなく説明し、データベースとの連携、画像のコントロールなどのごく一般的に用いられる用法に触れる。またCookie テクノロジやセキュリティについても詳細に説明する。
