
オブジェクト指向の世界
第4回
「ピカソ、113億円で落札」をUMLで表現する
(有)オブジェクトデザイン研究所
河合昭男
2003/6/23
| 今回はオークション・応札の2例を取り上げます |
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◇ 市場原理
物の値段はどのように決まるのでしょう。売り手側の基本原理は「価格=コスト+利潤」です。しかし買い手側はあくまで自分にとっての「価値」が基準です。「価値>価格」ならば購入するわけです。いくら高性能・高品質でも価格に見合う買い手の価値基準をクリアしていなければ取引は成立しません。
前回『モデルは論理の結晶』を引用させていただいた小室直樹氏の著作から、今回は「資本主義原論」[注1]を引用します。
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問 『何なるかこれ経済の第一義』
答 『市場。経済を理解するとは、市場を理解することである。経済学の要諦は市場分析にある。』
次にこの市場を理解する第一歩は『市場には法則がある』ことを知ることです。これは人為を超えたところにあって、製品を製造する企業、あるいはたとえ政府が法律で物の値段を決めようとしても、いったん市場に出たものはこの法則に従って価格形成されます。
自然現象の法則は人間にはどうすることもできず、それを研究して見つけ出すのが自然科学です。市場の法則も同じで、人為的に曲げることはできず、その法則を研究して見つけ出す、それが経済学、社会科学です。
今回取り上げるオークション・応札はこの法則に従った価格形成がなされるシンプルな市場モデルの例です。
[例題1] ピカソ落札
ピカソのオークションに関する写真入りの次の記事を考えて見ましょう(日本経済新聞2004年5月6日 夕刊社会面、記事からの引用を『』で示します)。
| メインタイトル(縦書2行、Font大)『ピカソ、113億円』 サブタイトル(縦書1行、Font小)『市場最高額落札』 |
まずこれらのタイトルと絵画の写真から頭の中で文章を構築しましょう。
「ピカソの絵画が113億円で落札された。それは市場最高額である」
まず「ピカソの絵画が113億円で落札された」ですが、この文には主語がありません。主語を追加して単純な3つの文に分割します。
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(1)ある人または組織(落札者)が絵画を落札した
(2)ピカソがその絵画を制作した
(3)落札金額は113億円である
(1)(2)はSVOパターンでUMLでは二項関連です(第2回「自然言語をUMLで表現してみる」、第3回「UMLで新聞記事を読む」参照)。(3)の金額は絵画というオブジェクトの属性と考えるよりは、落札者と絵画の間の落札するという関連の属性として考えるのが自然です。UMLでは関連クラス「落札」を作ってその属性として「価格」を追加します。関連クラスと関連の間は点線で結びます。図1にオブジェクト図を示します。タイトルが目立つようにしました。
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| 図1 「ピカソ、113億円」タイトル |
次にサブタイトルです。この記事がニュースである理由は「落札価格が市場最高額」だからです。これをUMLで表現するのは難しく、取りあえずUMLのノートでコメントとして逃げます。
次に記事内容に入って行きます。
『ピカソが24歳の時に描いたとされる初期の傑作「パイプを持つ少年」が5日、ニューヨークのサザビーズで競売にかけられ、手数料込み1億416万8000ドル(約113億円)で落札された。』
タイトルに追加される情報として、
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(1)美術作品は「パイプを持つ少年」というタイトルの絵画である
(2)落札日は2004年5月5日、落札金額は1億416万8000ドル
(3)競売はサザビーズで行われた
これらの情報を追加すると図2の上の部分になります。この「:国」は取りあえず無視してください。落札日や落札金額は絵画の属性ではなく、関連クラス「落札」の属性として表すことができます。「サザビーズ」は「:落札」とリンクさせます。
![]() |
| 図2 「ピカソ、113億円」記事内容 |
記事の続き『1990年に手数料込みで8250万ドルで日本人に落札されたゴッホの代表作の一つ「医師ガシェの肖像」を上回り、絵画の価格としては史上最高額。落札者の身元や国籍については関係者は明らかにしなかった。』は同じパターンで図2の下のようになります。下は落札者が日本人ですが、上は不明なので名前のない「:国」オブジェクトとしました。
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INDEX |
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| オブジェクト指向の世界(4) 「ピカソ、113億円で落札」をUMLで表現する |
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| Page1 今回はオークション・応札の2例を取り上げます |
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| Page2 [例題2]「中国高速路線応札」をUMLに置き換える |
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| プロフィール |
| 河合昭男(かわいあきお) 大阪大学理学部数学科卒業、日本ユニシス株式会社にてメインフレームのOS保守、性能評価の後、PCのGUI系基本ソフト開発、クライアント/サーバシステム開発を通してオブジェクト指向分析・設計に携わる。 オブジェクト指向の本質を追究すべく1998年に独立後、有限会社オブジェクトデザイン研究所設立、理論と実践を目指し現在に至る。 ビジネスモデリング、パターン言語の学習と普及を行うコミュニティ活動に参画。著書『まるごと図解 最新オブジェクト指向がわかる』(技術評論社)、『まるごと図解 最新UMLがわかる』(技術評論社)。『UML Press』(技術評論社)、『ソリューションIT』(リックテレコム)ほかの専門誌に多数執筆。ホームページ「オブジェクト指向と哲学」。 |
オブジェクト指向の世界 バックナンバー
- 第1回 流れ去るものと不変なもの
- 第2回 自然言語をUMLで表現してみる
- 第3回 UMLで新聞記事を読む
- 第4回 「ピカソ、113億円で落札」をUMLで表現する
- 第5回 全体最適とアーキテクチャ
- 第6回 名前のない品質とパターン言語
- 第7回 パターンとパターン言語入門
- 第8回 分析から設計へのモデル変換などについて
- 第9回 分析手法のキホン:「分解と分類」
- 第10回 プラトン編−イデア論とクラス/インスタンス
- 第11回 アリストテレス編−“what & why”4つの原因説
- 第12回 “what & why”4原因説をビジネスモデルに応用
- 第13回 モノとコトによるモデリング
- 第14回 分かりやすいモノ・コト方式のモデリング
- 第15回 モノ・コト分析の段階的モデリング
- 第16回 モノ・コト分析をパターン言語で表現
- 第17回 パレートの法則 vs. ロングテール現象
- 第18回 ネットコミュニティのQWAN(無名の質)
- 第19回 RUPをパターン言語として考える
- 第20回 RUP7で開発の「苦」から解放される
- 第21回 オブジェクト指向のソクラテス式対話編
- 第22回 ソフトウェアは知識の結晶
- 第23回 UML2メタモデルを読む−知識とは何か?
- 第24回 UML2メタモデルを読む − 知識とは何か?(2)
- 第25回 オブジェクト指向を考える──普遍の知識
- 第26回 世界はらせん的に進化する
- 第27回 クラウドの潮流を考える――らせん的進化・その2
- 第28回 パターン言語事例 − 慶應SFCの『学習パターン』
- 第29回 フラクタル - 自己相似形とべき乗則
- 第30回 SFC学習パターンを新人研修に適用する
- 第31回 情報を媒体に転写する? 形相と質料
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