全体最適とアーキテクチャオブジェクト指向の世界(5)(1/2 ページ)

» 2004年08月20日 12時00分 公開
[河合昭男((有)オブジェクトデザイン研究所),@IT]

 前回、前々回はUMLで新聞記事を読むというテーマで「ピカソ、113億円で入札」などを題材としてUMLで表現し、入札のパターンを抽出しました。現実のモデルを基にしてビジネスパターンを発見するという作業、流れ去るものと普遍のものを見極めるためのシリーズは機会を見てまた続けたいと考えています。

 ところで筆者は5月末「cool-knowledge」の「ニューヨーク最新ビジネス視察セミナー」に参加し、世界最大の小売店ウォルマートをはじめFortune誌に登場するような大手リテールチェーンの店舗をバスで見て回りました。繁盛している店舗には顧客志向実践のための企業戦略が強く出ています。店内に活気があり、買い物が楽しそうだし、買い物客のみならず店員も生き生きしています。実際に見学し、買い物をしてそこで感じたことはいろいろありますが、今回は「全体最適」あるいは「全体性」というテーマについて考えてみたいと思います。

マンハッタンと東京

 日常生活に必要な「衣・食・住」、日本は「衣・食」は良くなってきましたが「住」はまだまだです。アメリカであらためて感じました。

 第1に家が小さい。部屋が狭い。狭い土地にたくさんの人が住まなければならないならもっと土地の有効活用をすればよいのです。東京の都心は建ぺい率・容積率をもっと緩和すべきです。そうすれば都心の地価ももっと安くなるはずです。ニューヨークに1週間ほどいただけなのですが、東京に戻ってみると繁華街にも2〜3階建ての建物が目立ち、空間の有効利用のできていないことがあらためて気になります。5〜7階建ての小規模のペンシルビルも気になります。マンハッタンという地域は確かに世界でも特殊なのですが、東京もその気になればあそこまでは土地の有効活用が可能だということです。まだまだ余裕があり過ぎる。

 あの狭いマンハッタンにもアパートは多いです。というより1階は店舗で上はオフィスや住居のビルが多いです。東京都心のオフィス街の店舗は休日閉店するところが多いですが、上が住居なら休日もビジネスが成り立ち、家賃の7分の1=14%の経費節減になります。

 日本の都市は部分最適の集合が全体最適になっていない例です。隣のビルや周辺の景観を考慮しないで、法規制の制約条件のみで建築しています。マンハッタンは景観を守るため、ビルの建て直しをする場合外観は保全しなければならないそうです。歴史のない国だから余計に歴史を大切にしています。マンハッタンという都市としての全体最適を目指すという概念が確かにあります。

オブジェクト「風呂場」とは?

 「オブジェクトとは?」については「連載:『ここからはじめるオブジェクト指向』 第1回 オブジェクト指向の考え方」で説明しましたが、対象物をどのように認識するかによってその意味は異なるものです。同じ対象物を人により、あるいは目的・視点により異なるものとして認識します。では「風呂場(バスルーム)とは?」について考えてみましょう。

 今回のcool-knowledge NY視察セミナー主催者の吉田繁治氏から「バスルームは体の洗い場にあらず」というお話を聞き、なるほどと思いました。すなわち、バスルームの機能を「(1)体の洗い場」とするか「(2)心身をリフレッシュするための場」とするかの違いです。

ALT 図1 バスルームは体の洗い場にあらず

 バスルームを構成するもの、バスタブ、水道の蛇口、シャワー……。こういったものを扱っているのが「住」関連チェーンストア最大手のホームデポ(The Home Depot)です。ウォルマートと共に急成長し、いまや米国第2位のチェーンストアです。ホームデポは一般大衆向け低価格路線ですが、その1ランク上をターゲットとしているのがエクスポ「EXPO Design Center」です。

 (1)の機能性を満足するだけなら、個々の部品をホームデポで安く買いそろえれば「体の洗い場」としてのバスルームが一応は完成します。

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