
ITアーキテクトを探して(4)
ITアーキテクトの仕事術:要求の「見える」化
有限会社 トレッフェ
岩崎史絵
2005/9/30
ユーザーから要求をヒアリングし、管理するのはコンサルタントやプロジェクトマネージャーの仕事だと思っていないだろうか。ユーザーからの要求は、システムのアーキテクチャを規定する大切な要素であり、要求の可視化や管理はITアーキテクトが率先して担当すべき分野といえる。現場のITアーキテクトは、あいまいで頻繁な変更が発生する「要求」をどのように可視化し、管理しているのか。
◆ 要求を管理し、統制する仕組みの重要性
IPAのITスキル標準センターのITアーキテクト委員会では、「ITアーキテクトは成果物に対し、以下の3点について責任を持つ」としている。
- アーキテクチャの品質(機能性/信頼性/使用性/効率性/保守性/移植性)
- 経営戦略、戦略的情報企画で要求されている成果・効果
- 当該プロジェクトで要求される成果・効果
上記3点について責任を持つのはITアーキテクトだが、評価を下すのはユーザー側だ。つまりITアーキテクトの仕事の成果は、「どれだけこちらの期待に応えてくれたのか」というユーザーの評価によるところが大きいといえる。そのため「ユーザーがどのような要求を持っているのか」を正しく理解することが、ITアーキテクトの重要な仕事になる。ITアーキテクトの仕事といえばアーキテクチャ設計が主業務だが、その前段階である「要求の的確な把握」が実現できてこそ、初めて設計フェイズへと進むことができる。例えば基幹システムならば信頼性の確保が何より重要だが、Web技術を適用した基幹システムであれば同時にパフォーマンスについても考慮しなくてはならない。「要求がアーキテクチャを規定する」というわけだ。
だが、要求はあいまいで優先度が付けにくく、実装が困難なケースも発生するため、「いかに要求を管理し、アーキテクチャ設計に役立てていくか」が重要なポイントになる。2005年9月8日に秋葉原ダイビルで開催されたセミナー「MDA Technology Forum:アーキテクトの仕事論――要求管理をめぐって」は、まさにこの課題に焦点を当てたものだ。主催であるオブジェクトテクノロジー研究所 代表取締役 鎌田博樹氏は「あいまいな要求をシステム開発に反映し、ユーザーの満足度を向上させるには、要求を『管理・統制』する仕組みが必要になる。そのアプローチとして有効なのが『モデル化』という手段。要求をモデル化し、プロジェクトのステークホルダーで管理、統制していく仕組みを作り上げることもITアーキテクトの大きな役割だ」と語る。
◆ 「要求」と「要件」の違いとは
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なぜ「要求」と「要件」の区別が重要になるのか。鎌田氏は「そもそもビジネスとITには根本的矛盾があるため、まずビジネスとITの2つの側面からユーザーの要望を切り分けることが必要だ」と述べる。その矛盾とは、ビジネスとITで情報のとらえ方が異なるということ。ビジネスで扱う情報とは、あらゆるデバイスやリソース、環境の中に分散しているコンテンツであり、ビジネスプロセスの中で必要になるモノ。
対してIT側で語られる情報とは、基本的に「データ」だ。そのデータが、どういう場面で誰に対し有用な“情報”となり得るかは、そのビジネスプロセスのコンテクストに依存する。そのコンテクストを切り分け、データを“情報”として扱えるようにするのがビジネスシステムの役割だ。「システム開発とは、ビジネス全体の中で必要な情報と、システムで切り出す情報とを分け、さらにシステム要件を詰めて実装に落とし込む作業。漠然とした大きな“要求”の中に、IT実装に必要な“要件”が隠されている」(鎌田氏)というように、実装に必要となる要望を、ユーザーの言葉から見いだしていく作業が必要となる。そこで課題となるのが「要求をいかに引き出すか」「要求をいかに可視化するか」「要求をいかに管理するか」という3点だ。
ちなみにIBMでは要件定義プロセスを4つのアクティビティに分けており、上記3つの課題はこの4フェイズにまたがると考えてよい。
| 1.要求の抽出 | |
| - | ステークホルダー(利害関係者)の明確化 |
| - | 要求の対象識別と明確化(ビジネス目標、ビジネスプロセス、要件と制約) |
| - | システム化対象範囲の明確化 |
| 2.分析 | |
| - | 要件の分類と確認 |
| - | 実現可能性の確認 |
| - | 関係者との合意 |
| 3.仕様化 | |
| - | 合意された要件について文書化(IEEE Std. 830-1998) |
| 4.妥当性確認 | |
| - | 要件の妥当性(一貫性と完全性)の確認 |
| - | 要件定義書レビュー |
| - | プロトタイピング |
| 要求定義プロセスの4つのアクティビティ(日本IBM 山本氏の資料を元に作成) | |
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INDEX |
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ITアーキテクトを探して
ITアーキテクトに求められるスキル要件が固まり始めている。まずは、国内で独自に活動を開始したITSS アーキテクト委員会の活動を報告しよう
- 第1回 ITアーキテクトが備えるべきスキル標準
- 第2回 ITアーキテクトとスーパーSEの違い
- 第3回 情報家電とITアーキテクト、その密接な関係
- 第4回 ITアーキテクトの仕事術:要求の「見える」化
- 第5回 ITアーキテクトはプロジェクトも設計する
- 第6回 わたしはビジネス寄りの技術者です
- 第7回 ITアーキテクトに必要な3つの視点
- 第8回 国のIT基盤を設計するITアーキテクト
- 第9回 ソニー生命保険が考えるITアーキテクト像
- 第10回 ソフトウェア開発の守・破・離
- 第11回 ITアーキテクトの専門分野を3つに整理
- 第12回 アーキテクトはコンポーネントをうまく使う
- 第13回 開発現場を3T(楽しい、定時に帰れる、高い給料)に
- 第14回 デスマーチの構造 Vol.1
- 第15回 デスマーチの構造 Vol.2
- 第16回 見えるビジネスモデリング
- 第17回 経営者はなぜソフトウェア開発環境展に足を運ぶのか
ホワイトペーパー(TechTargetジャパン)
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