
アジャイル実践者インタビュー(1)
発注者はアジャイル開発をこうみている
アジャイルプロセス協議会 ケーススタディWG
畑田成広/塩田英二/水越明哉
2005/11/5
「アジャイル開発」という言葉はここ数年でかなり広まり、書籍やWebでも目にする機会が多くなってきた。しかし、アジャイル開発の理論情報に比べ、現場の生の声はまだまだ少ない。実際にアジャイル開発手法を実践するときには、現場で行ったこと、困ったこと、起こった出来事、そしてその対処の仕方を知る方が実用的だ。そこで、アジャイル開発の現場の様子を伝えることを目的に、アジャイル開発を実践した開発者へインタビューを行った。このインタビューはアジャイルプロセス協議会の「ケーススタディ ワーキンググループ」の活動として継続的に行っているものである。今回は、この活動の第1回としてインタビューした内容を紹介する。
◆ メンバー紹介
インタビューは以下の人々に行った。
| NEC情報システムズ 猪狩 | 今回のプロジェクトでは発注者としてかかわる |
| 永和システムマネジメント 角谷 | 2004年7月から本プロジェクトに参加。プロジェクトの中心的な開発者。「アジャイル最高!」と思っているが、世間とのギャップを感じることがある |
| JIC 桑折 | 2004年10月からプロジェクトに参加。アジャイル開発はこれが初めてである。だんだんアジャイルに染まってきているなと感じる |
| 永和システムマネジメント 家永 | プロジェクトに入ったのは2005年2月半ばくらいから。開発経験自体が2004年12月くらいからである。アジャイル開発にはだんだん慣れてきたところ |
| タワーズクエスト 和田 | 角谷と一緒に最初からプロジェクトに入っている。コーチという立場で参加している。アジャイルへの感染者を増やしていくのが目標 |
メンバーの特徴はアジャイル開発に積極的な人物が多いということ、プロジェクトへの途中加入が多いということ、開発者だけではなく、発注者の猪狩氏が含まれていることである。アジャイル開発は開発者側から語られることが多いが、発注者からはどのように見えるのだろうか。今回はその辺りに注目してインタビューを読み進めてもらいたい。
◆ プロジェクト対象
- - PR -
◆ 利用ツール
―― 「開発にはどのようなツールを利用しましたか?」
角谷 「統合開発環境(IDE)はEclipseですね。それとORマッパーの機能もあるので、Jude(永和システムマネジメントが開発したモデリング支援ツール)を拡張して使っていました。ほかに使ったといえばホワイトボードと、後はXPカードですね」
―― 「XPカードとは?」
角谷 「タスクを書き入れるカードです。束にして使っています。それぞれのカードにタスクを書いて、1つ1つつぶしていくように使っていました」
―― 「Judeはモデル作成用?」
角谷 「いえ、モデルは手書きが中心ですね。JudeはORマッパー機能を実現するために使っていました」
アジャイル開発の中でも、XP(eXtreme Programming)が中心である。XPは直感的な要素を大切にする開発プロセスである。このチームでもXPカードや手書きなど、直感的なツールが重視されているようだ。
◆ 契約形態
―― 「契約の形態は?」
猪狩 「期間契約で、3カ月更新。納品物は、発注側と大体合意したところで決めています。いまは大体の機能がそろった段階ですね」
角谷 「最初は要件があいまいで、見積もりもできず、どうなるかと思いました。猪狩さんが信用してくれて、進められたのでありがたかったです」
猪狩 「フレームワークの開発は特殊で、最初から中身が分かる人はいません。自分でも想定できない部分があります。だから、最初は期間契約にして、機能がある程度まとまってきたら再調整という感じでスタートしました」
―― 「最初からアジャイル開発ですか?」
角谷 「最初からでしたね。資料をもらって、まとめて、出してみて、「違う」っていわれて。そうしたやりとりを繰り返してだんだんまとまっていきました。最初の1カ月はそんな感じで、その後は設計・実装を含めてXPで進めました」
猪狩 「こちら側でもきっちりと仕様を書くことができません。あいまいさもあるし、ボリュームも大きい。何より、時間をかけていては、市場投入が遅れてしまう。だから最初からアジャイルで、ってことでやりました」
◆
発注側の猪狩氏は、あいまいな要件をまとめていく手法としてアジャイル開発を選択した。アジャイル開発、特にXPは実装中心の手法ととらえられがちだが、あいまいな要求を持っている発注者には、あいまいさをまとめていく手法としてXPは魅力的であることが分かる。
アジャイル開発を選択したとき、契約形態はよく問題になる。アジャイル開発では開発途中で重要な要求が発見されると、そちらの要求を優先させる。開発を進める中で、要求がより効果的と思われるように変更していくこともある。すると、初期要件と納品される要件が変わってしまうことになる。最初の要求が固定された契約を行うと、アジャイル開発は実行できない。初期要件よりも良い要求機能が実現できても、納品物は要件を満たしていないことになってしまうためだ。こうしたことを考えると、アジャイル開発を行うときには、今回のように期間契約で短期に更新機会を持つという形態が1つの方法となる。
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INDEX |
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| アジャイル実践者インタビュー(1) 発注者はアジャイル開発をこうみている |
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| Page1 ◆ メンバー紹介 |
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| Page2 ◆ 実践したプラクティス |
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| IT Architect 連載記事一覧 |
アジャイル実践者インタビュー バックナンバー
- 第1回 発注者はアジャイル開発をこうみている
- 第2回 アジャイル開発におけるプロセスの洗練
- 第3回 オフショアでアジャイル開発の実際
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