パターンを学べばどんな技術にも対応できるマーチン・ファウラー特別ラウンドテーブル 現場レポート [前編](1/2 ページ)

» 2004年06月08日 12時00分 公開
[構成:吉田育代, 谷古宇浩司,アットマーク・アイティ編集局]

 マーチン・ファウラー氏の来日に伴い、マイクロソフトとアットマーク・アイティは4月21日、「マーチン・ファウラー特別ラウンドテーブル」を共同開催した(ラウンドテーブルの参加者は下記を参照)。ファウラー氏は非常な饒舌(じょうぜつ)家である。1つのシンプルな質問に対し、さまざまなエピソードを交えながらたっぷり15分以上は回答し続ける。ラウンドテーブルのテーマとして、「Architectual Pattern」「Analysis Pattern, Enterprise Modeling」「Agile Process, XP」「UML」「Architect Evangelism」といった幅広いジャンルを用意したものの、ファウラー氏の情熱的な饒舌が制限時間を圧迫し、すべてにおいて必ずしも十分な議論をし尽くせなかったことは返す返すも残念だった。とはいえ、今回を含め2回にわたってお送りするラウンドテーブルの抄録をお読みいただければ分かると思うが、なかなかバランスの取れたラウンドテーブルが展開できたのではないかと思う。アーキテクトとして世界の最前線に立つファウラー氏のエッジの効いた発言の一端から、アーキテクトの真髄の一部でも感じ取ってほしい。

基本的なパターンの理解=永続的に使える武器

ALT マーチン・ファウラー氏

萩原 皆さん、おはようございます。本日はアーキテクト・ラウンドテーブルにお集まりいただきありがとうございます。今日のゲストはマーチン・ファウラー氏です。システム開発の世界で話題となっているいくつかのテーマについて、ファウラー氏に技術的な解説をいただきながら、ここにいらっしゃる方々と率直に意見交換ができればと考えています。まずはパターンを取り上げたいと思います。ファウラーさん、お願いいたします。

ファウラー わたしはパターンコミュニティにかなり長く携わっています。パターンを使ったり、その構成を考えたりすることによって、どうすれば効果的にシステムを構築できるかということを模索し続けています。

 パターンスタイルを考えるということは、基本的に情報をどのような固まりにするかを考えるということです。パターンを効果的に使うことで、わたしたちはある考えを効率的に伝達していくことができるのです。

 わたしはこれまでずっとエンタープライズ・アプリケーションの開発に従事してきましたが、この分野でパターンが重要だと考える理由は、主流の技術が何度も何度も移り変わっていく中で、基本的な共通のデザインアーキテクチャの考え方というものには普遍性があるのではないか、ということに気が付いたからです。現在は、.NETやJava(J2EE)をベースにした開発が一般的ですが、わたしはいまでも(わたし自身が)10年前に確立したデザインアーキテクチャを使用して仕事をしています。基本的なデザインアーキテクチャについての考えがきちんとしていれば、書かれたコードをよりよく理解でき、もっと効率よく話すことができます。デザインアーキテクチャをソフトウェア開発の基礎に据えれば、エンジニアの教育も楽になり、新人を容易にプロフェッショナルへと育てることができると考えています。つまり、パターンを学ぶことは、個々の技術を習得するよりはるかに重要なことなのです。

 いい例を1つお教えしましょう。わたしが実際にかかわった案件です。

 その企業は3年前まで、システム開発の大半をJavaで行っていました。しかし、ある時点からマイクロソフトの.NETテクノロジが成熟してきたと判断し、少しずつ.NETでの開発を進めていきました。情報系システムから基幹システムへと適用範囲が広がるにつれ、だんだん開発者が足りなくなってきました。さて、そこでJavaで3年ほどの経験のある弊社(ThoughtWorks)のプログラマをプロジェクトチームに投入しました。準備期間は1週間でした。その間、彼は.NETに関する技術解説書を読み、Visual Studioを2〜3日触っていました。それで何も問題は生じませんでした。それどころか1週間もたたないうちに、.NETプロジェクトに1年ほど携わっている先輩プログラマを凌駕(りょうが)する技術力を持つようになりました。

 基本的なパターン技術を学んだ人間にとって、新しい技術に適応するのは比較的容易なのです。これは特に.NETとJavaの間でいえることです。

[モデレータ]

◆ 長瀬嘉秀(テクノロジックアート 代表取締役社長)

◆ 萩原正義氏 (マイクロソフト デベロッパーマーケティング本部 Software Architect)

[参加者]

◇ マーチン・ファウラー(Martin Fowler)氏 (Chief Scientist,ThoughtWorks)

◇ 斉藤信也氏(NTTデータ 公共システム事業本部 技術統括部 オープン技術推進担当 部長)

◇ 鈴村幸太郎氏(日本総合研究所 事業化技術センター マネジャー)

◇ マイケル・ダイクス(Michael Dykes)氏(マイクロソフト EPGエンタープライズサーバービジネス本部 アプリケーションプラットフォーム推進部 ソリューショングループ ソリューションスペシャリスト)

◇ 巻山展輝氏(電通国際情報サービス 産業ソリューション事業部 コンサルティング1部)

◇ 平澤章氏(ウルシステムズ テクノロジディレクター)

◇ 山田正樹氏(メタボリックス 代表取締役社長)

◇ 羽生田栄一氏(豆蔵 取締役会長)

◇ Gregor Hohpe(Integration Architect,ThoughtWorks)氏



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